第7話『俺の後輩は遊びに行きたい』
起床の瞬間、それは特別な時間。
1日の始まりにして今日1日を占う重要な瞬間。
人によっては憂鬱に感じるらしいが、俺は比較的朝は好きだ。
今日のような休日に夢の余韻もなく、自然と起きれた日は格別だ。
その日1日を満喫できるような予感が───
「あ、先輩やっと起きましたか」
───前言撤回、今日クソな日だわ。
「何でお前がここに居るんだよ!」
目覚めた直後、俺の前には何故か狼華が居た。
家を教えたことはないし、上がる許可など出した覚えはない。
返答次第では即通報してやる…!
「先輩のお母さんにお願いしたら入れてもらえましたよ」
「チクショウ!また身内の犯行かよ!」
「伝言も預かりました。『今日は誰も家に居ないから、後は若い子達で楽しんでね』だそうです」
「絶対勘違いしてるだろそれ!!」
親からのそのセリフはどう考えても付き合ってる奴らに言うセリフだろ。
あのババア狼華の事を俺の彼女か何かだと勘違いしてるな…
「どうします?とりあえず1回やっときます?」
「やらねぇわ!朝から何を言ってんだお前は!?」
「据え膳食わぬは何とやらですよ」
「お前は据えられた飯じゃなくてケダモノだろ」
「はぁ…先輩ってば本当に奥手なんですから…」
「気付け、異常なのは自分なんだと気付いてくれ」
この流れで俺が奥手扱いされるの納得いかねぇ…
普通にやり取りしていたが、冷静に考えればここは俺の家。
コイツがいる事自体が異常なんだ。
「で、何でお前がここにいるんだよ?」
「今日は遊びに行こうと思いまして。迎えに来ました」
「俺が行かないって選択肢は無いわけ?」
「あるわけ無いじゃ無いですか」
「だと思ったよクソが…」
ここで折れるような奴なら家には来ないよなぁ…
観念した俺は今日1日の予定を全て諦めた。今日なんてなかったって思おう。
「それで?どこ行くんだよ」
「もうすぐ迎えがくるはずです」
「迎え?」
その時、インターホンが鳴った。
何やら嫌な予感が猛烈にしつつ、俺はドアを開けた。
「はーい…」
「おはよう仁也君!さぁ!楽しい楽しい休日を共に過ごそうじゃないか!」
「んなこったろうなと思ったよクソッタレ!」
玄関で俺を待ち構えていたのは衣緒だった。
妙にテンション高いのがもう怖い。絶対ロクなこと考えてないよ…
「もう来ちゃいましたか」
「思ったより道が空いていてね。あ、それとも取り込み中だったかな?」
「えぇ、これからおっ始めるところでした」
「テキトーこいてんじゃねぇ!」
「あぅ」
ふざけた事を言う狼華の額にチョップ。
やるわけねぇだろ…今何時だと思ってんだよ…
「まぁいい、とにかく早く行こうじゃないか!」
「そうですよ先輩、時間は有限ですよ」
「…とりあえず着替えていいか?俺まだ寝巻きなんだよ…」
「良いですよ、遠慮なくどうぞ」
「好きにしたまえよ。そのくらいは待ってあげるさ」
「何テメェら覗こうとしてんだよ!出てけや!」
視線を一切逸らそうとしない2人を追い出し、俺はそそくさと着替えた。
着替え中に何度もため息を吐いたが、玄関から聞こえてくる2人の声が離れる気配は一向になかった…
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