第24話 伯爵令嬢は魔法を対策する
魔法発表会で登場した魔法のうち、王宮魔法士が注目したのは
マリアンヌが率先して
その結果判明したのは、
1.
2.装備破壊効果があり、物理攻撃力、物理防御力の著しい低下を引き起こす。魔法武具にも有効。魔獣への効果は未調査。
3.暗器など服の中に忍ばせた武器は服ごとすべて脱落、破壊する。術者の知識は関係なし。被術者の知識に依存する。例えば、服の繊維が武器として利用できると知っていれば、服がバラバラに破壊される。
4.行動阻害効果があり、武器の所持、あるいは魔法詠唱がともに不可能になる。石など武器になりそうなものも使用不可能になる。拳を握ったり、蹴り、抜き手など徒手空拳も不可能になる。
5.認識阻害効果があり、術者を格上で抵抗は無駄だと誤認させる。抵抗する意思を奪う。逃走する意思を奪う。
6.
7.射程距離が長い。裸眼で見える範囲はすべて攻撃可能。
8.魔力消費量は300~400
多くの魔法研究者が脅威に感じずネタ魔法の一種と認識したのは馬鹿げた魔力消費量のせいだ。一般的な攻撃系魔法の10倍近い。だが、アリシアがもたらした魔力増加法により事実上無制限に使用できると知っていれば、極めて危険な魔法の一つと認識できるだろう。マリアンヌはロイドという人物を知っており、魔力増加法を知っており、術式を見ただけである程度内容が理解できたため脅威と認識した。
ロイドは悪人というわけではないが、怪しい人物を見かければ、とりあえず殺さない程度に魔法の実験をしてみるという迷惑な人物である。過去には “戦闘狂” の異名が付くほど興味の赴くままに戦闘を吹っ掛ける危険人物であったという。
マリアンヌ自身は自覚していないが、盗賊に襲われるというトラウマを抱えている。
◆
マリアンヌ様がそんなことになっているとは思いもよらないアリシア。
ロイドに
ルークも魔法発表会に刺激を受けたのか新しい魔法の開発に夢中だ。わたしのことは放置気味。朝食を一緒に取ることが減り、ルークの口に直接給仕する日々だ。今日のスープは少し熱いかな?ふーふーしてから机に向かっているルークの口に流し込む。
ある程度研究が形になったらわたしの出番も増えるだろう。
「ルーク、口を開けてください。歯磨きしますよ。」
ルークが素直に口を開ける、すかさず浄化。
「完了です。研究頑張ってくださいね。」
研究室を出て自分は離宮の自室に転移し妃教育だ。結構できるようになったと我ながら思うんだけど、いつ終わるんだろう?妃教育が修了しないと結婚できないはずだ。もしかして一生終わらない可能性が…。もたもたしていたらマリアンヌ様のような綺麗で巨乳で腰が細くて肌が白くて手足が柔らかくて綺麗で優秀で有能で
いっそのこと第一王子のイニエスタ殿下みたいに授かり婚(※国家機密)でもしようか。この際、侍女でもいいんじゃないかなぁ。うぅ、いかんいかん集中しないと。
「はい。結構でございます。短い間でしたがお世話になりました。」
「え?ま、まさか…」
「妃教育は終了でございます。お疲れさまでした。」
「そんな!見捨てないでください!お願いします!!せめて侍女としてルーク殿下のおそばにいさせてください!」
あまりの不出来に教師からも見放された!ここまで頑張って来たのにお払い箱?ああ、マリアンヌ様の方が第三王子妃にふさわしいよね。
「そういう意味ではなく、すべての課題を完了なさいました。良い王子妃におなりください。」
「ありがとう存じます。浅学非才な身に骨折り下さり感謝いたします。」
席を立ってカーテシー。早とちりだったか。先生が苦笑している。
「ご自身がどんなに業績を上げてもまだまだと思えるその心。それこそが貴女様の美徳と言えましょう。ご多幸をお祈りいたします。」
「恐れ入ります。先生方の訓示をいつも心に抱いて行きたいと存じます。」
先生方が帰っていった。王宮に報告するそうだ。
よし!これで平日はフルタイムでルークを介護できる。おはようからおやすみまで暮らしを見つめる獅子のごとくいつも侍りましょう。
マリアンヌ様から
『アリシア、今話せる?』
『はい。マリアンヌ様、ちょうど先ほど妃教育が修了しました!ルークのお世話に集中できます。』
『おめでとう。これから結婚式の準備ね。』
『結婚式はシャルロッテ妃殿下とアリア妃殿下が共同で準備してくださるそうで、採寸はすでに終わりました。仮縫いが終われば結婚式までやることがありません。』
『すごいわ、アリシア。両王妃殿下に認められたということだもの。普通はそんなことありえないわ。本当にすごいことなのよ?でも、やることが無いなんてことはないわ。次代のために両妃殿下のなさることを記録しておきなさい。あなたが母親になったときにやることなのですから。』
『それは妃教育の先生方にも教わりました。すべて記録しています。』
『それなら安心ね。』
『マリアンヌ様もルークの妃になっていただけるともっと安心です。』
『それは無理よ。わたくしは聖女の称号を授かったので、第一王子以外に嫁ぐと国が割れます。仮に第一王子に嫁いでも妃の中で序列を乱す存在になるので、暗殺に怯えて過ごすことになるわ。わたくしは王族以外に嫁いだほうが平和ね。』
『無理を言ってすみません。』
『いいのよ。ところで、ロイド様の
『発動方法がわからないので、ロイド様に聞きに行ったんですが多忙そうで…。』
『使い方はわたくしが教えるから対処法を一緒に研究しない?』
『対処法?結界を2層以上張ればいいのでは?
『そんな方法が。今から会える?王宮の訓練場まで行くから。』
『はい。かまいません。では王宮の訓練場で。』
側仕えにお願いして王宮の訓練所に馬車で移動する。直接転移できれば便利だけど無断で王宮内施設に転移するのは謀反を疑われるため禁止なのだ。
馬車で移動中、おじいちゃんの多層結界を思い出した。おじいちゃんは戦闘中22層の多種多様な結界を張ってたな。
訓練所にはすでにマリアンヌ様と女性ばかりの王宮魔法士たちが待っていた。マリアンヌ様の顔色が悪い。目に隈がある。綺麗な顔が台無しだ。
「マリアンヌ様!どうしたのですか?」
「
「ご安心ください!きっちり対策して御覧に入れましょう!」
早速実演してみる。服の中に鞘付きのナイフを忍ばせて、結界を二層張る。内側は魔法遮断、外側は特に効果の無い結界だ。
万が一のために服を用意してもらった。
「いきますよ、アリシア。」
「いつでもどうぞ。」
「
外側の結界は消滅したが、内側の結界に阻まれて効果は無かった。証明終了だ。
再度外側の結界を展開する。外側の結界にも魔法遮断の効果を付加した。
発動する瞬間を見ないよう後ろ向きに立つ。
「もう一度お願いします。今度は結界を破壊されないよう抵抗してみます。」
「
結界が破れそうになるのを魔力を注入して破壊を防いだ。ふむ。
外側の結界を消す。
「一枚でも大丈夫そうですね。もう一度お願いします。」
「
ふっ、たわいもない。完全勝利だ。
ロイドは結界を分析した結果、この魔法は神官と戦うには有効でないと判断して放棄したのだろう。
マリアンヌ様は糸が切れたように倒れた。
「マリアンヌ様!魔力切れじゃないのになんで?あ、…」
抱き起こすと彼女は安らかに眠っていた。眠れないとか言ってたね。
結局
◆
王宮の医務室にて。
3時間ほど経っただろうか、マリアンヌ様がガバリと飛び起きた。
「天啓がきましたわ!」
「うわっ!マリアンヌ様大丈夫ですか?」
良かった。顔色もだいぶ良くなっている。
マリアンヌ様はメモ帳を取り出し術式を鬼気迫る勢いで書き込み始めた。
「できましたわ!」
二層構造の
「これですと、魔力が大きい方が勝つのでは?」
「
「30倍…、集団で同時に撃ち込まれたらどうなるでしょう。」
「う。」
一個小隊の規模で戦うのは普通だ。30人一斉攻撃はあり得る。しかも全員が馬鹿正直に
「1層あたりの障壁を弱めて10層構造にしてはどうでしょう。1層あたりの魔力消費を1にするのです。」
「それだと発動が遅いわ。常時展開している結界が破壊される前に発動しないといけないのよ。そもそもほかの攻撃系魔法は貫通するわね。」
「うーん。」
「…反射できないかしら。」
「できるのですか?」
「
共鳴属性…魔法学校の適性検査のあれか。
「自爆するって危ないじゃないですか。」
「失敗に何かヒントがあると思わない?」
「失敗したときは共鳴じゃなくて反射になっていると?」
「そう!」
「マリアンヌ様でも失敗したことがあるんですか?」
「わたくしは無いわね。だから…」
「わたしですか。」
「お願い!やり方教えるから!」
マリアンヌ様の安眠のためにやりましょう!
「自爆しても安全そうな魔法は水属性しかないのでお風呂でやりましょう。離宮へおいでください。よく眠れるようにマッサージもいたしますよ?ルーク様も大変満足しておいででした。」
「不埒な行為は禁止です。」
「こ、子供ができるような行為はしていません。もう。マリアンヌ様のえっち。」
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