第2話  誰かしらの愛

 愛される事には慣れていた。

初めて会う人は、まず私の外見を褒め、次に声を褒める。その後は私がどのような人間なのかを執拗に知りたがる。


 だから、あそこに住んでいる。と城を指差すと、あら完璧じゃない、といったような顔をする。


 国の女王というのは、なんていうか形だけのもので、この国では血は絶えるのが当り前であるから、国中でいちばん美しい人が女王にふさわしいとされる。

 

 私は数年前にそれに選ばれた。


前の女王様はとても綺麗な方だった。街でたまたま見かけたとき、あまりの美しさに全ての感覚が吸い込まれるように彼女だけに集中した。

 「あなた、美しい方ね」

そう言って彼女は私を城へと招待したのだ。



 愛されるのには慣れていた。


黄色い歓声も、私を見つめる幾千もの瞳も、美しい封筒に包まれた達筆な手紙も、そんなものただの日常に過ぎない。


 こちらからはなにもしなくて良い。

愛されるとはそういう、一方的なものだから。


 

周囲からの歓声や喝采を、浴びれば浴びるほどに私は、寂しさを感じた。皆が羨ましい。

 だって、そんなふうに私も、誰かに恋をしたい。

誰かを愛してみたい。



 だから私はこの国を出ようと思う。



 

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