第28話:陽介の結婚話。

次の年、桜が舞い散る頃、檸檬は高校を無事卒業した。

檸檬は進学せず、そのままお好み焼き屋さんにバイトから本雇いに出世した。

陽介は檸檬との結婚を考えていた。


それに陽介はとうぜん跡取りと言うこともあってゆくゆくは父親の後を継いで

社長になって行くだろう。

ってことは檸檬の行く末は社長夫人。


陽介が出した求人広告「まともな彼女募集」に高額報酬欲しさに応募した檸檬。

そんないいかげんな出会いだったふたり。

いつしかお互い離れなれない存在になって、このまま順風満帆に行くと檸檬は

順当に玉の輿に乗っかるだけ・・・。


とうぜん陽介もそうなると思っていた。

だからとうぜん陽介は檸檬にプロポーズするつもりでいた。


ところが・・・陽介に結婚の話が持ち上がった。

陽介の両親が勝手に決めてきた相手。


相手は会社の取引先の某大手企業のお嬢さんってことらしい。

陽介の親父の秘書だって女性がそのことを報告に来た。

陽介と檸檬には寝耳に水の話。


もちろん陽介はそんな話は断るつもりでいた。

自分の奥さんになるのは檸檬しかいないと思っていたからだ。


そして陽介は案の定、両親から呼び出された。


きっと親が決めた結婚の話だと陽介には分かっていた。

これはちょうどいい機会だと思った彼は両親が決めた結婚話を断ることと

両親に檸檬を紹介しようと彼女を同伴して実家を訪れた。


実家を尋ねると、母親が出てきて陽介の横にいる檸檬をみていぶかしそうな

顔をした。


「はじめまして、瀬戸田 檸檬せとだ れもんと申します」


「はあ、どうも・・・陽介の母の勝子かつこです」

「どうぞお上りになって・・・」


勝手知ったる我が家の応接室に母親に連れられていくと、小肥りな父親が豪奢

なソファにふ踏ん反り返っていた。


「おお・・・来たか?」


そう言ったが母親と同じで陽介の横にいる檸檬をみて、やはりいぶかしそうな

顔をした。


「陽介・・・その方「女性」は?」


「紹介します」

「瀬戸田 檸檬さん・・・現在お付き合いしてる俺の彼女です」


「はじめまして、瀬戸田 檸檬です」


檸檬は目の前にいる陽介の両親に頭を下げて挨拶をした。


「ああ、どうもはじめまして陽介の父親の菊池 新蔵きくち しんぞうです」

「陽介、彼女がいるなんて初耳だぞ」


「結衣から檸檬のこと聞いてない?」


「あの子は最近家に寄り付かんからな・・・」


「そう、いつかは紹介しようと思ってたんだけど・・・」


「いつからお付き合いしてたんだ?」


「もう、付き合って二年弱になるかな」


「そんな話は聞いてなかったぞ・・・なんでもっと早く広告せんのだ」


「ごめん・・・でも俺たち将来結婚しようと思ってるんだ」


つづく。


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