第29話:陽介の決心と檸檬の思惑。

「結婚だと・・・話にならん・・・いいか?遊ぶのも女を作るのもいいが、

結婚は許さん」

「どうせ、おまえに寄って来る女など金目当てだろうが」


「なに言ってるんだよ・・・ひどいじゃないか、そんな言い方」


父親にそんなふうに見られて檸檬はいたたまれなくなった・・・だから自分は

場違いなところにいるって思った。


「檸檬はそんないい加減な女性じゃないよ」

「彼女のこと、なにも知らないくせいに、そういう無神経なことで彼女を

傷つけるのはやめてくれ」

「親父がなんて言おうと反対しようと俺の檸檬に対する気持ちは変わらない」

「だから、どこかの会社のお嬢さんとの結婚って話はお断りします」


「なにを言っとるんだ・・・いい話なんだぞ」

「わしの申し出を断るつもりか?」


「とにかく話し合う余地はないから、俺はもう決めてるからね、檸檬と一緒になる」

「それが許されないって言うなら、俺はこの家をでていく」


それを聞いた檸檬。


「なに言ってるの陽介・・・そんなのダメだよ」


「俺がそう決めたんだ・・・檸檬を失うくらいなら会社も辞めるし家も出る」

「俺だっていつまでも子供じゃないんだ、自分の将来は自分で決める」


「勝手は許さんぞ」

「おまえ、親に逆らって喧嘩を売るつもりか?」


「そんなつもりはないよ、ただ親父と俺とでは物事に対する価値観が違うだけだよ」

「俺は親の強制や金では動かない」

「世の中金だけじゃないってことを檸檬が教えてくれた」


「今日は、親父が持ってきた話を断ることと、檸檬といっしょになることを報告するために帰ってきた」

「認めてもられないことは分かってた・・・だから俺からの報告以外なにも言うことないから」

「とにかくそういうことだから・・・」

「帰るぞ、檸檬」


「お父様、お母様・・・失礼します」


そう言って檸檬は陽介に手をひっぱられながら、両親に頭を下げた。

陽介は母親が止めるのも無視して実家を後にした。


今日の出来事で、檸檬はただただ不安しかなかった。

今日まで陽介と積み重ねてきた日々が崩れ去る音がした。

陽介の両親に認められないまま、彼と結婚したら・・・。

できればご両親と和解して自分を認めてもらいたい、檸檬はそう思った。


それに陽介の将来を考えると彼と別れるという選択も残されていたが

檸檬は陽介を自分の手で幸せにしてあげたいと思っていた。


さあ、大変なことになった。

このまま、すんなり陽介の両親が檸檬を認めるのか・・・。

だが陽介の心は一点の曇りもなかった、檸檬と暮らす、いっしょになる・・・

その思いになんの迷いもなく檸檬との将来に希望を抱いていた。


つづく。



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