第19話:檸檬、いきなりの引越し。

ある日の土曜日。

いつものように檸檬が朝早く陽介のマンションにやってきた。

しかも旅行カバンを一個ひっさげて・・・。


「おはよう〜陽介」


そう言って檸檬は陽介をハグしてチューした。


陽介は檸檬が持ってきた旅行カバンを見て首をかしげた。


「あれ、檸檬どこか旅行に行くの?」


「うん、菊池 陽介さんって人のお家に浪漫飛行〜なんちゃって」


「なにそれ?・・・」


「陽介・・・私、今日から陽介のマンションで陽介と一緒に暮らす

ことにしたから」

「だから施設出てきちゃった、施設長さんに許可もらって・・・」


「ん???なんの前触れもなくいきなりとは・・・檸檬ちゃんやるね〜」

「で?それはまた、いかなる理由で?」


「あのね、ロクデナシ和樹が今度は施設に来たの」

「陽介に私につきまとうなって言われたのに、馬の耳に念仏だった

みたいね・・・あのバカ、お金の無心に来たんだよ、ほんとロクデナシ」


「追い返してやったけど、あのぶんだとまたやって来るの間違いないし

施設の人たちにも迷惑かかるし・・・だからこっちから逃げてやることにしたの」


「陽介のマンションならセキュリティーばっちしだし」

「ロクデナシも上まで上がって来れないし陽介がいたらあいつもビビって

やってこないでしょ?」

「もうウザいったら・・・」

「ってことで、それが私が陽介んちに引っ越して来た理由・・・ね、立派な理由

でしょ?」


「うん、まあそのほうがいいかな?」

「いいよ、俺は前から檸檬が俺んちに引っ越して来ればいいのにって

思ってたから・・・大歓迎」

「一緒にいるほうが危なくないし安心だし、なにかと便利だし・・・」


「でも、え?荷物はその旅行カバンだけ?」


「そう、あと部屋にあったモノはディスカウントショップに取りに来て

もらって売っぱらっちゃった」

「あ、それからお好み焼屋さんは辞めてないから・・・だからここから

お好み焼屋さんに通うから・・・もろもろ了解?」

「・・・ダメって言われたら施設に帰るけど・・・」


「了解・・・異議なし!!」

「そうだ、檸檬、車の免許持ってたっけ?」


「持ってるわけないでしょ、学生の身分だよ、そんなお金もないし・・・」


「持ってたら車貸してあげたのに、買い物とか行けるかなって思ったんだけど」


「あのね、もし私が車の免許持ってても乗せないほうがいいと思う

かっこいい車がボコボコになっちゃうから・・・」


「ああ・・・乗らなくても分かるんだ」


「事故って人に迷惑けちゃったら嫌でしょ?・・・私まだ死にたくないし」


つづく、



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