第11話:木之下君。

その日の夜、陽介が体調を崩してが会社を休んだもんだから、陽介の様子を見に

同僚がマンションにやってきた。

その男は木之下君と言って同僚の中でも一番親しい友人。


金のために陽介に近ずくようなことのない、信頼できるであろう友人のひとり。

というのも木之下の家も、かなりな金持ち。

だから陽介の腰巾着には、なり下がらないのだ。


「こんばんは、陽介・・・俺・・・木之下だけど」

「セキュリティー解除してくんない?」


で、木之下君が陽介の部屋までやってきた。


「おう、木之下・・・なにか用?」


「陽介、おまえが会社休むの珍しいだろ?だから受付に聞いたら体調崩してる

って言うからさ・・・雨も止んだし暇だったから様子見に来てやったぞ・・・」

「風邪でもひいて寝込んでるのかと思ったら、なんだよ元気そうじゃん・・・」


木之下君はまるで自分んちの家でもあるかのように、ずけずけ部屋のなかに

上がり込んできた。

で、キッチンにいた女子高生を見つけて、ちょっと固まった。

檸檬は体調を崩した陽介の様子を見に学校の帰りにマンションに寄ったのだった。


檸檬は木之下君にちょこんとお辞儀した。


「あれま・・・そういうことか・・・陽介君」


「なにがそういうことだよ」


「きみ〜いつの間にこんな可愛いJK引っ張り込んでたのかな?」

「そりゃ〜会社なんて来る訳ないわな・・・」


「引っ張り込んでたってなんだよ、人聞きの悪い」

「彼女は瀬戸田 檸檬って言って・・・俺のれっきとした彼女だよ」


「え?おまえら、いつから付き合ってんの?」


「ピテカントロプズが地上に出現したころからだよ」


「へ〜ずいぶん昔からなんだな・・・」

「ねえ、女子高生さん・・・檸檬ちゃんだっけ・・・檸檬ちゃんも陽介の

金が目当て?」


「なに、バカなこと言ってんだよ・・・失礼だろうが・・・檸檬はそんな

女じゃないわ」

「余計なことはいいから用事がないならとっとと帰れ」

「だって、おまえに寄って来る女って金目当てのやつばっかだろ・・・」


「人のこと言えるか・・・お前だってそうじゃないかよ」


台所にいた檸檬は思った。


(男なんてみんな目くそ鼻くそじゃん)

(って私も高額報酬につられて彼女募集に応募したんだよね)


檸檬は懐かしそうにそう思った、言葉には出さないけどね。


「いいから・・・木之下、今日はおまえと話してる暇なんかないんだよ、だから

帰ってくれないか?」


「ふ〜ん・・・まあ、お前がダウンしてなくてよかったわ」

「じゃあ、また会いに来るから・・・おまえじゃなく檸檬ちゃんに会いに・・・」

「俺もエッチい女子高生大好きだから・・・」


「檸檬を見てエッチいって言うな!!」


「じゃ〜ね檸檬ちゃん、またね・・・陽介にハマってないで勉強頑張ってね」

「言っといてあげるけど陽介は飽きっぽいやつだから、もし捨てられたら僕が

彼氏に立候補するから・・・予定入れといてね」

「ああ、逆か・・・陽介が檸檬ちゃんに捨てられるってパターンだな」


「バカなこと言ってないで帰れ!!」


木之下君は檸檬を品定めするような眼差しをくれて、ニタニタ笑いながら

へこへこ帰って行った。

たぶん明日、会社に檸檬のことが知れ渡ってるに違いと陽介は思った。


「ごめんな・・・がさつなやつで・・・」


「うん、気にしないから、それなりに楽しかったよ」


「そう言えば、今更だけど、檸檬に高額報酬払ってなかったよな」


「そんなこと今更いいよ、もっと高額な愛情もらってるからね」


「逆だよ・・・愛情もらってるのは俺のほうだと思うけど・・・」

「まあ高額報酬目当てだったんだよな、最初は・・・」


そう言って陽介は檸檬の顔を覗き込んだ


「もう、からかうなバカ」


そう言ってはにかむ制服の女子高生はいつになく眩しかった。


つづく。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る