第2話:彼女募集に応募した女。

花金の午後のオープンガーデン。


瀬戸田 檸檬せとだ れもん」は学校からの帰り、お気にのカフェで

ホットミルクを飲みながらカフェに置いてあった情報誌を見ていた。


檸檬は現在17歳・現役女子高生。

檸檬のビジュアルはクラスでもトップクラスだった。

だから言い寄って来る男子もけっこういたりした。


一般の女子高生にあるように、友達とダベって美味しいスイーツなんか食べて

ゲームなんかして・・・悲喜こもごもはあっても特に大きな悩みがるわけでも

・・・あ、大きな悩みといえば檸檬には付き合ってた彼氏がいた。

その付き合ってた彼氏と最近別れたばかり。


別れた原因は彼の浮気と檸檬の貸した金を踏み倒して浮気女とトンズラしたこと。


檸檬の性格は困った男を放っておけないタイプだから困ったもの。

だけどさすがに浮気されて金まで踏み倒されたら許せない。

ロクデナシ男でも彼は彼だった訳で檸檬は傷ついてしばらくは悲しみに暮れた。


もう彼氏なんかいらないから誰にも束縛されずに洋服をかったり遊んだり

するお金が当面の間、欲しかった。


情報誌をペラペめくっていた檸檬、最後のページ、そこで目と手が止まった。

そこにはこう書いてあった。


《まともな彼女募集:許容範囲:20歳から30歳まで》


「なにこれ?・・・彼女募集?」

「どこのお間抜けだろ?こんな募集出す人って・・・」

「だいいち・・・こんなのにノってくる女なんていないでしょ」


で、檸檬は《まともな彼女募集》の下の文字を見た。


《お付き合いしてくださる方、高額報酬・・・高額ボーナスあり》


そのさらにその下に、募集者の名前と連絡先が記載されていた。


「菊池 陽介:(きくち ようすけ)連絡先:QRコード」


「高額報酬?・・・彼女になってあげたら高額なの?・・・まじで?」

「本気の彼女じゃなくてもいいのかな?彼女のふりしてあげるだけで?」


檸檬は高額報酬って文字につい魔がさした・・・許容範囲:20歳から30歳まで

って書いてあるのに・・・。

その募集は金銭的ピンチな檸檬を私利私欲に走らせた。


これって早く募集に応募しないと、こんな好条件誰かに取られるとマズいって

思った。

そう思うと、矢も楯もたまらなくなって陽介の携帯に連絡した。


すると眠そうな声で、男が出てきた。


「はい・・・菊池です」


「あの・・・私、「まともな彼女募集」って広告を見た「せとだ れもん」って

言うものですけど・・・」

「あの、この募集に応募したいんですけど・・・まだ間に合いますか?」


「ああ・・・そうなの?・・・あはは広告出したの忘れてました」

「そのくらいだから、あなたが応募者第一号です」

「あ、俺「きくち ようすけ」って言います」

「せとださんって言いましたっけ?」

「失礼ですけど・・・いま歳はいくつなんですか?」


「え?・・・えと、は、ハタチです・・・」


「ハタチ?そう・・・いいんじゃないかな」

「そうですね〜とりあえず、せとださんさえよかったら一度お会いします?」

「俺のマンションに訪ねて来てくださると助かるんですけど・・・」


「分かりました・・・時間あるからこれからすぐお伺いしても?」


「どうぞ・・・偶然にも俺、今日休んでますから・・・」


「・・・えと、きくちさんって?高校生ですか?」


なんでそこで相手が高校生って思ったのか檸檬にも分からなかった。


「な、わけないでしょ・・・社会人ですよ、なにボケかましてるんですか?

せとださん・・・」

「でも、面白いな、君・・・」

「そういう常識はずれなボケかます人、大好きですよ、俺」


檸檬の頭の中は、高額報酬って文字で埋め尽くされていた。

考えが単純でストレートな檸檬は、すぐにでも陽介のマンションを訪ねて

早く彼からいい返事をもらいたいと思った。

恋愛感情はこのさいどうでもよかった。


彼のマンションの名前は「バロン・ド・メゾン」

聞いたことあるような、ないような珍しくもない名前だった。


つづく。

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