夢見る魔法少女じゃいられない
第七話 秘密会議
全世界神仏連合軍対魔女部門特殊部隊本部。
『皆よ、集まっているか』
光のない暗闇の一室で、最上神の声がした。
あいも変わらない、この世ならざる声だった。
「多分います」
女性の声が聞こえる。
『そうか、では出欠を------と思ったが、少しいなくても会議はできる』
適当な司会だった。
『それでは「白魔女会議」を始める』
「はい」「はっ」「うっす」「イェーイ」「やだなー」「ok」「ぐりぃ」「・〒×>|+…+○$1>°¥54:×○8*÷2」「会議♪」「シュワっ」
個性豊かな声が聞こえる。
ただし全てに共通する特徴が、女性のような高い声だった。
『事前に伝わっているだろうが、『魔女の右腕』が見つかった。しかし、ある二人に横取りされてしまった』
「与鷹とクロっていう黒猫ですよね」
『その通りだ』
「あーし、聞いちゃったんだけど。『右腕』を逃したのは隊長なんですよね」
部屋中が凍りつく。
「……あっ、すいま----」
『気にするな。貴様は真実を言っただけだ。そんなことに雷を落とすほど、我の器は小さくない』
「へ、へー」
『ただし忘れるな----』
一拍置いて。
『その気になれば、この場にいる全員をぶち殺すことができるということを。そして次はない』
部屋中に、器がちっせー、という空気が流れた。
『だが、気をつけてはおけ』
「隊長がそこまで言うってことは、相当強いんですか?」
『いいや、貴様たちが3人いれば倒せる程度の相手だ』
「だったら----」
『だが、奴らには何か、強力な幸運がある』
「運?」
誰かがそう聞く。
『我もその運にやられた』
「いや、多分油断でもしてたんじゃ----」
『全員ぶっころ』
「すんません」
そんなんだから陰で『小皿隊長』ってあだ名つけられるんだよ、という空気が漂う。
あれ? 確か『お猪口隊長』に変わったんじゃなかったっけ、という空気も漂う。
そうだったわ、あんがと、という空気で締まる。
「怪我はしませんでしたか?」
『全身に火傷を負ったが、もうひと月は経ったからな、完治したよ』
「そう、ですか」
『どうしたというのだ? 浮かれない顔をして』
「いえ、何というか、その、無茶しないでくださいね」
『!』
白魔女たちが、己を心配していることを理解する最上神。
『全員ぶっころ』
「は?」
『忘れるなよ。誰が最強か。我を心配するなど、貴様らには千年早いわ』
最上神にはカリスマのようなものを持っていた。
カリスマとは違うが、愛され、尊敬され、ついていきたくなる魔性があった。
『では、事前に配られた資料を見ろ』
「すいません。暗くて見えません。光をつける許可をください」
『許可せぬ。暗闇に眼を慣れされろ』
「あっ、詰んだわ」
もしや、魔性とかではなく天然なのではないかと、白魔女たちは囁く。
部屋中にペラペラと、紙をめくる音が聞こえる。
「この与鷹って人。少し凶悪な顔していますけど、中々イケオジですね」
「わかるー。あとこの猫ちゃん可愛い」
会議が女子会みたいになっていく。
『もしこの猫が欲しいなら。自分で成果を上げるが良い。だが、男の方は我に献上しろ』
「えー、ナニをするつもりですか?」
『尻から食事をし、口で排泄する生物に作り変える』
「……」
白魔女たちの間で、様々な情報共有がなされる。
『まあ、会議と言っても、見つけたら捕まえて「右腕」を回収しろというだけだ。これにて「白魔女会議」を終了する』
部屋の緊張感が解け------
『ここからが本題だ。「少女会」を始める』
その瞬間、空気が変わる。
『議題は「魔女の使い魔」。ひいては「魔女についての情報」。つまりは「リヴァースへの転移魔法」の入手だ』
「やっと、ですか」
誰かが語り始める。
「数年前から私たちが企む世界征服が、やっと本腰に入れますね。長かったです」
そうだそうだと、同意の声が聞こえてきた。
「あるとき、『リヴァース』についての記憶を得た子達が現れた」
「私達はそれを上に伝えず、隠した」
「いつかの下剋上のために」
「そして、隊長が『白魔女』に入隊したことにより、計画はより確固たるものになった」
「あのときの隊長の言葉には痺れたよね」
「『我について来い。さすれば貴様らの理想郷を見せてやる』」
「録音しなかったのが惜しいです」
「恐怖で行動できなかった私たちに、勇気を与えてくれた言葉だ」
白魔女たち全員が頷く。
『皆のもの「出欠」をとるぞ』
「「「「「「はい!」」」」」」
白魔女たちは立ち上がる。
『世界に見捨てられた「魔法使い」たちよ』
「「「「「「はい!」」」」」」
『世界に壊された「白魔女」たちよ』
「「「「「「はい!」」」」」」
『世界に消費された「少女」たちよ』
「「「「「「はい!」」」」」」
『夢はあるか』
「「「「「「はい!」」」」」」
『ならば戦え!』
暗闇に光が満ちる。
『夢見る魔法少女たちよ! 世界を壊し、治せ!』
百人の魔法少女たちが、叫ぶ。
夢見る魔法少女は憧れる。
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