ハッピー・デイ3

 クロと与鷹、二人は回らない寿司屋へやってきた。しかも、クロも一緒に食べるために貸し切りにして。


「おっ、おっ、おっ、す、すごいよー」


 クロは差し出された寿司に興奮を隠せていなかった。


「同人誌の台詞みたいになってますよ」


 ちなみにだか、猫も白米は食べられる。

 ただし、一度にたくさん食べさせてはいけないのでシャリは少なめである。


「さ、さて。君を呼んだのには理由がある」

「寿司屋に誘ったのも俺ですし、お金を払うのも俺ですよ。別にいいですけど」

「ボクたちの能力名を決めたいんだ」

「能力名? 錬金術ですよね?」

「それはそうだけど、ほら考えてもみてよ。今までの戦ってきた人たちの能力を」


 思い出す。

 『魔女ウィッチ右腕ライター』『神敵リバー心臓ハート』『冷淡魔女ザッツ ライト業火ウィッチ』『自傷魔女フライアウェイ絶頂ポロロッカ


「どう思う?」

「奇妙な冒険とかハンター二乗とか読んでそう」

「つ・ま・り・?」

「痺れる憧れる」

「だよなー」


  与鷹は理解した。

 『かっこいいのが欲しい』のだと。


「どんな名前がいいと思うよ?」

「そうですねー。ゴールド・エクス----」

「パクリはダメだろ!」

「けど、大分能力似てますよ」

「似てるけど、似てるけども、それでもだ!」


 二人は深く考え込む。


「これまでに戦ってきた相手の能力には、傾向があるよな?」

「傾向? 確かに、『遺体』の部位の名前が入ってますね」

「それに、鉛は魔女、最上神は神敵、ここら辺でご主人様に対してどう思っているのかわかるな」

「じゃあ、こんなのはどうでしょう? 『ご主人様の猫』、とか」

「同人誌のタイトルみたいで嫌だ」


 議論は難航する。


「そういえば、能力って途中で変わりますよね。変わると言うより、能力を明かすと行った方が近いですね」

「確かに、ザッツライトウィッチとか、フライアウェイポロロッカとか言ってたな」

「……フライアウェイポロロッカって何ですか?」

「直訳すると、ぶっ飛び逆流現象だ」

「ハハハハハハハハハハハハハハハ」

「おいおい笑ってやるなよ。きっと頑張って考えた名前なんだろ」

「それにしたって、ぶっ飛び逆流現象はないですよ」


「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」」


「それを言うなら、ザッツライトウィッチてのも何ですか?」

「直訳すると、魔女の言う通り」

「……」

「……」


  沈黙する二人。

  流石に故人を笑うのはよそうという、倫理観だった。


「もう、お酒飲んじゃいましょっ。ここ、お酒も美味しいんですよ」

「おいおい、猫にお酒は飲ましちゃダメだぜ」

「そうなんですか。さすが。知らなかったです。すごーい。セクハラですよ♡」

「どうした急に⁉︎」

「めんどい上司へのさしすせそ」

「猫パンチ!」

「ひでぶっ!!」


「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」」


 二人で大笑いする。

 

「そうだっ。お酒の飲める動物に変身すれば良いんですよ」

「マジだそれ天才!」

「ハブ!」

「変身!」


マジで変身しやがった。


「っておーい。ハブ酒で連想しただろ!」

「おーっと。バレちまったぜ」


「「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」」



「うぎゃああぁーーーっ!」


 大将だった。


 その後、与鷹は『ハブを連れてくるな』と、こっぴどく怒られた。

 が------


「二軒目行っちゃいましょー!」

「イェーイ!」


 全く反省していなかった。



「あーあ。いっそもう、人間になれたらいいのに」

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