誇り高き宿命とクズ
第二話 潜入! 魔女巣食う工場!
大手金属工業株式会社『アルケミー』が所有する日本最大の金属加工工場に、与鷹と黒猫はいた。
「黒猫の旦那。本当に『魔女の遺体』がここにがあるんですか? 」
「ああ、間違いない。魔力を少量だが感じる」
そう言う黒猫は、与鷹の携帯ストラップに変身して潜入していた。めちゃ可愛い。
「やっぱり化け猫じゃないですか」
「違う。錬金術だ。そもそも、ボクが金になったりできるのは錬金術の力なんだぞ」
「ってことは、旦那は本来猫なんですね」
「そのとおり。あと、旦那って言い方やめろ」
「では何とお呼びすれば?」
「そうだなあー、『クロ』でいいんじゃないか」
わかりました、そう言って与鷹はまた歩き始める。
なぜ、与鷹がこんなに工場を自由に歩き回れるのかというと、『アルケミー』の株をいくつか所有しているからである。
といっても、父親から相続されただけだが。
ふたり(一人と一匹)はこの工場のどこかにある『魔女の遺体』を探すためにやってきた。
「『アルケミー』は、ここ数年で急激に業績を伸ばし始めた会社だ。この会社は仕入れまで自社でやってるらしいが、その経路が謎なんだ」
「材料を『魔女の遺体』で作っているってわけですか。ずるいなー」
「それだけじゃない。今の技術では不可能とされる構造のものまで造っている。表向きには企業秘密と言っているが----」
「それも『魔女の遺体』ですか。魔女ってすごいんですね」
「当たり前だ。ボクのご主人だぞ」
「はは、魔女さんが大好きなんですね、クロさんは」
「恥ずかしい事いうなよ」
「だったら尚更、そんな人の『遺体』を使うなんて許せないですね」
「ああ、絶対に見つけるぞ」
「はい!」
工場に入ると、クロがそれにしてもと言って、
「株というのはすごいな。以前は猫一匹通さないセキュリティだったのに」
「こういうのは人間にしかできませんからね。任せてください」
「期待しているぞ」
それから数時間後------
「全く見つかんねー」
「期待したボクが間違いだった」
喫煙所で項垂れるふたり。
許可されている限りの全ての場所は探索したが、『遺体』は見つからなかった。
「やっぱり、許可されていない場所に隠されてるんですかね?」
「おそらく」
「『遺体』の細かい場所はわからないんですか?」
「まるっきり」
やはり項垂れるふたり。
「魔力を感じるって言ってましたけど、実際、魔力って何なんですか?」
「い〜い質問ですねえ〜」
「クロさんって、テレビとかよく見てましたか? ニュースとか」
「よく見てたよ。何ならネラーだよ」
「肉球で⁉︎」
「コツがいるんだけどな、まず前足を-----」
クロが突然黙る。
喫煙所の扉が開く。
若い男性で、社員のようだった。
椅子に座り、煙草を取り出すが------
「あのーすみません。火を貸していただけないでしょうか? ライターを置いてきたようで」
「いいですよ」
与鷹はポケットからライターを取り出し、煙草に火をつける。
男性は煙草を深く吸い。
「ふはあぁ〜」
と、気持ち良さそうに煙を吐いた。
「どうもありがとうございます。わたくし、こういうものです」
名刺を渡される。
『工場長
「工場長だったんですか⁉︎」
「ええ、まあ」
「まだ若いのにすごいですね」
「そんなことはありません。まだまだです」
「いやいやいや」
「いやいやいや」
「いやいやいや」
大人の社会のやつをある程度繰り返したあと。
「ここに死体を隠せるような場所ありませんか?」
ド直球で聞いた。
「……」
「……」
なんとも言えない空気が喫煙所を曇らせる。
「なんでもありません! 変な事聞いてすみませんでした!!」
喫煙所から勢いよく出ていく。
虚無的に生きてきた与鷹の、対人スキルが露呈してしまった。
「馬鹿やろう! もっと濁して聞けよ!!」
「まじですみません!」
「次来たら絶対見つけるぞ!!」
「はい!」
工場から出ていくふたり。
その光景を見る男がいた。
「はい。魔力を感じる男を探ってみましたが、やはり『遺体』の事を知っていました」
携帯の向こうにいる人物に話す。
「いえ、問い詰めた訳ではなく、勝手にボロを出しました。恐ろしく速いボロでした。わたくしでなければ見逃していたでしょう」
煙草を取り出す。
「ご安心を、やつはまたここにやってくるでしょう。そのときは、わたくしが始末いたします」
男性は右手の親指と中指をくっつけ、鳴らす。
『ボウッ』
煙草に火がつく。
男性は煙草を深く吸い。
「ふはあぁ〜」
と、気持ち良さそうに煙を吐いた。
『
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