第5話 夢見草
「これが
案内された店は空気がこもり、お米を脱穀した瞬間香りを凝縮したような空気が漂っていた。
窓も少なく薄暗い店内。棚には軟膏や丸薬が入った瓶が並び、天井からは様々な薬草が吊るされている。
サグ婆は店の奥、壁に据え付けられている巨大な薬棚から押し花になった夢見草と夢無草を取り出してカウンターに広げた。「こうしておけば誰かに採ってきてもらう時に便利だろう?」と一房ずつ手渡してくれる。
押し花なので全体的に茶色っぽいが、第一印象としては水芭蕉のような綺麗な花をつけている。
「本物は花がわずかに赤みを帯びる。夢無草は赤みがなく、真っ白な花をつける。これが見分けるコツだよ」
「うーん・・・」
注意すればわかるかなぁ。それよりも、これってどこに生えているんだろう。薬草とか取っている時には見たことない花だけど。
「ああ、これは北の森に生えているさね。森に入ってすぐ小さな池がたくさんあってね。その周りに自生しているよ」
「えっ・・・森には行ったことないんですけど」
「あんたも冒険者になって少しは経つんだろう?いつまでも薬草ばかり摂っていないでそろそろ森に行くべきだとわたしゃ思うがね。池は森に入ってすぐで周りは魔物も滅多に出ない。あのあたりは妖精の
それまでの道中が不安なのだが、それをサグ婆に訴えたところで「じゃあ依頼を引き受けないかい?」と言われればそれまでだ。
「いくら新米冒険者だからって、いつまでも薬草集めばかりはしていられないだろう?森に入れば稼ぎ口はたくさんあるよ。──ああ、伐採はお勧めしないけどね。妖精が怒るから」
「怒らせるとどうなるんですか?」
「さぁ?知らないね」
「知らないって・・・」
「妖精を怒らせて生きて帰ってきたやつはいない。だから知らない。あの森で死にたくなかったら、妖精は怒らせないことさ」
妖精という存在がいることに驚くが、イメージと全く違う。日本じゃ妖精といえば大体は人間の味方をしてくれるような存在だったと思うけど。
「バカ言っちゃいけない、妖精は天使の手下だ。人間に試練を与えることはあっても助けることなんてありゃしないよ」
「そ、そうなんですか?」
「あんた、随分と奇妙なことを言うね。──まぁこの町で身の上の詮索は御法度とも言うし、何も聞かないがね」
うーん、聞きたいことは山ほどあるけど変な目で見られるのも嫌なので聞きづらい。
そもそもこの世界に来てまだ一週間なのだ。生活基盤を整えるのに必死で、この世界を知ろうという余裕がなかった。
「そういえば、夢見草はどういう効果があるんですか?」
「──聞きたいかい?」
「そりゃあまぁ。作られる薬も三万円でしたっけ。このお店にある薬を見ても随分と高いようですが」
棚に並んでいる軟膏や丸薬はどれも千円や二千円といった価格帯。中には一万円くらいするのもあるが、そういう薬は大瓶でたくさん入っていたりと見た目からして高いのがわかる。
それでも三万円もの値をつけている薬はない。
「勘違いしているようだがね。三万円は原価みたいなもんさ。売るところに売れば十万円は出してくれるような薬だよ」
「じゅっ、十万円・・・!?」
「効果は単純。夢見草から抽出した香料を焚くと軽い興奮状態になるんさ。──夜の町には欠かせないってところだね」
夜の町。
それを聞いて若干顔を赤らめた私に「あんたにはまだ早いさ」と言ってサグ婆はカラカラと笑う。
「夢見草は五本もあれば十分だよ。ただし、さっきも言った通り夢無草と間違えない事。夢見草も薬草と同じで鮮度が命さ、採ったら急いで帰っておいで」
頷く私。
大丈夫、鮮度が命なのであれば薬草と一緒でヒールを掛けて持ってくればいいのだ。
あとは時間との勝負。陽が沈む前には町に戻っていたい。森は言わずもがな、草原でも暗くなれば危険度は日中より確実に増すのだから。
時間を無駄にできないなとお守り代わりの剣を確かめ、すぐに森に向かうことにした。
「夢無草は買い取れないからね」とサグ婆の忠告を背に、私は今まで使ったことのない町の北門へと走り出す。
──あ、念の為保存食は持っていこうかな。
* * *
北の森。
始まりの町の北にあるからそう呼ばれているのだが、ここには冒険者にとって特別な場所でもある。
迷宮かつ魔物の住処、いわゆるダンジョンがあるのだ。
そしてこのダンジョンは百年前、魔王を倒した勇者ルークが幼少のころ初めて潜ったダンジョンでもある。彼はここでドロップした勇者の剣で魔王を討伐したらしい。
それからというもの、町は新米冒険者にとってはおとぎ話に出てくる勇者が挑んだ聖地として人気となり、いつしか「始まりの町」と呼ばれるようになった。この町にいる冒険者のほとんどがこのダンジョンに挑み、初心者から一人前へと目指す者の登竜門となっているほか、ごく稀に産出するレアアイテムで一攫千金を狙う者もいる。
もっとも、ここのダンジョンに現れる魔物のレベルは低く、単純にレアアイテムを求めるのであればもっと高レベルのダンジョンに行った方が稼ぎもよくなるので、ここで肩慣らしした冒険者は別の町へと旅立っていくのだ。
私はそんな森の、入り口に立っていた。
「大きい・・・」
森を目の前にして感じたのは、とにかく巨大という事実。
おそらく冒険者が何人も何十年も通った証なのだろう。それでも踏み固められた道はくねくねと幾重にも曲がり、直線はない。すべての道が大木を避けているのだ。
「伐採すれば妖精が怒る。妖精が怒れば生きては帰れない・・・」
サグ婆の言葉を思い出し身震い一つ。覚悟を決めて森の中に足を踏み入れた。
一歩、また一歩と進んでいけば平原のひらけた空気感から徐々にじめっとした、木々が持つ湿度を伴った薄暗い雰囲気へと変貌する。
どれくらい歩けば池に辿り着けるんだろうと思った矢先、池はすぐにわかった。道の左右が沼地のようになり、少し先には「妖精の池は左」と三叉路に傾げた看板があった。
「・・・すごい」
池には三叉路から歩いて一分も経たずして到着した。
巨木を回り込んだ先でいきなり視界がひらけ、大きな池が眼下に広がっていた。池のほとりで足を止めれば、私は思わず息を呑む。
大きさは学校のグラウンド程度だろうか、池というには少し大きい気もするが、周りが巨木ばかりなのでスケール感が狂う。
池は透明度が高く底までがはっきりと見えるのだが、手首まで入れてみても底にはつかない。あまりにも透き通っていて底までのどれくらいあるのかがわからない。
ザ・ファンタジーという光景を目の当たりにして呆け、少し冷たい池に手を浸していた私は後ろから近づいていくる人影に気づかなかった。
「おい、危ないぞ!」
「にょわっ!?」
体が宙に浮い、池から空へと視界がひらける。
投げ飛ばされたのだとわかったのは投げ飛ばされている最中ではなく、けれど地面に強く体を打ち付けられた時でもない。
「──はいキャッチ〜」
「え?」と声出す暇もなく抱き抱えられるようにすっぽりと誰かの腕に収まった私は、見上げる形で見知らぬ少女と視線が合う。
目まぐるしく変わる場面に、目が点となるとはこのことか。
「大丈夫?うまく受け止めたつもりだったんだけど──ちょっとダン!いっつも言ってるでしょ、女の子には優しくしなさいって!」
「ユイ姉、その言い方だと俺の扱いは優しくなくていいのかよ」
呆けながらも少女から視線を外し、首をぐるりと回す。
先ほどまで立っていた場所には黒い服装に身を包んだ長身の男性が、そして私の隣にはまだ子供ではないかと思うくらいの少年が後ろ手を組んで立っていた。
「立てる?」との言葉に頷くと少女は優しく下ろしてくれる。
「すまん咄嗟に、な。助かったよユイ」
「ダン、謝る相手が違うでしょ!」
「あ、ああそうだな。いきなり投げ飛ばして悪かったな嬢ちゃん」
「あ、いえ・・・?」
「どうしてって顔しているな。もしかしてこの池に来るのは初めてか?」
コクンと頷けば「知らなくて仕方ないか」と頷き一つ、ダンと呼ばれた男性は池の中にズボっと腕を沈めた。
「何を?」と思った次の瞬間、彼は池から二の腕ほどの太さがある大きなヒルを引っ張り出したのだ。
激しく体を
ダンはヒルの尻尾を持ち直し「ビタンッ」と地面に打ちつけ、おとなしくさせる。牙とも言える鋭利な歯が生えた大きな口から「ぶちっ」っと何か飛び出たのだが、気持ち悪くてとても目を向けられない。
「ひっ!?」
「あー・・・、まぁつまりだ嬢ちゃん。知らなかったんなら無理はないが、この池にはこんなやつがうじゃうじゃいてな。冒険者になりたての若い連中が毎年結構な数、世話になっているんだ。死ぬことはないが、それでも二匹三匹と血を吸われたら危ないことは確かだから、あんまり池には近寄らない方がいいぞ」
「あ、ありがとうございます」
「気にするな」というと、ダンは手に持つヒルを池中腹にまで投げ返す。
「あーっ!・・・もったいない。売れば金になるじゃん」
「モグ、二束三文でこいつを売ったところで体液でべちょべちょになった麻袋を買い替える金にしかならん。それにいつも言っているだろう?『つい』とか『もうちょっと』とか、そういう考えがダンジョンでは命取りなんだ。日頃からそういう癖は直すことを意識しろ」
「へいへい。ところでそっちの可愛いねーちゃんはどうしてここに?──ぶへっ!」
「名乗る時はまず自分から。それと相手にいきなり目的なんか聞かないの」
「いってぇ・・・ユイ姉は馬鹿力なんだから加減してくれよ加減を、それにすぐ手が出るのをどうにかした方がいいと思うけど──っと、俺はモグ。E+の冒険者だ」
叩かれた頭を痛そうにさするモグと名乗った少年。どこかの海賊か山賊が纏っているようなダボっとした服に、これまた似合うバンダナ。そこからちらっと覗かせている赤い髪が特徴だった。オーバーサイズのグローブ越しに握手する。
「あたしはユイ。D-ランクよ。──で、さっきあなたを投げ飛ばしたのがダン」
ユイと名乗る少女は面倒見の良いお姉さんという印象だ。童顔で幼く見えるけど、思えば私の方が今では年下だったと気づく。
彼女はホットパンツのような動きやすい服装だが膝下からはロングブーツのような防具を身につけ、背負う長剣が似合っている。
池から戻ってきたダンは黒装束だが、よくよく見れば体のあちこちにナイフや短剣を身につけている。そして明らかにユイやモグとは纏う雰囲気が違う。
「彼はC+なの。まぁなんでこんなところにいるかと聞かれたら長くなるんだけど、簡単に言えばあたしの護衛、かな?」
「ここなら護衛するほどでもないけどな。──で、嬢ちゃんはどこの誰なんだ?」
どこの誰なのかと聞かれても、答えていいものなのかどうか。
けれど見るからに悪い人ではなさそうだし、ふと思い出せば女神様の加護で悪意ある人は気づけるはず。
嫌な気配もしないので正直に答えよう。
「サナエです。先週冒険者になったばかりです。今日はこの池の周りにある夢見草を探しに」
「夢見草だと?まさかサグ婆からの依頼か?」
「あれ、ご存知なんですか?」
「知っているもなにも。あたしたち始まりの町にいる冒険者の中ではもう有名中の有名だよ。サグ婆と言えば夢見草。夢見草といえばサグ婆ってくらいにね・・・」
有名と言いつつため息をこぼすユイ。何が何だかわからない私に「まだ懲りずにやっているのか」とダンが嘆息しつつ教えてくれた。
「簡単に言えばだ、夢見草の採取依頼はサグ婆の
* * *
「持って帰れない?」
どういうことだろう。それだけ貴重な花なのかな、見つけるのが難しいとか?夢無草っていう偽物も生えているくらいだし。
そんな私の反応にユイは首を振る。
「夢見草自体は簡単に見つかるよ。──ほらあそこ。あれがそう」
ユイが指差す先。
池から十メートルほど離れた森との境に、一輪の花が咲いていた。一見水芭蕉かと思ってしまう花は、わずかに赤みを帯びていて緑が支配する世界では一際目立っていた。
それを駆け出したモグが摘み取る。
「──あっ」
モグが夢見草をこちらに持ってきた時だ。それまで綺麗に咲いていた夢見草はまるでソフトクリームが溶けるかのように花全体が崩れてしまったのだ。
溶けたあとに残るのは緑の茎のみ。
「夢見草はね、摘み取って十秒もしないうちにその花を全部溶かしてしまうことで有名なの」
「じゃ、じゃあどうしてサグアさんは夢見草の依頼を?」
「サグ婆の本名ってサグアだったわね」と思い出したユイはモグが持っている残り滓を摘むと、それを池に投げる。
風の抵抗を受けてあまり遠くまで飛ばないそれは、水面に落下すると小さな波を立てて浮かぶ。
──突如として池から先ほどみた大きなヒルが何匹も、その残り滓目掛けて池から飛び出してきたのだ。
まるで飢えた狼が肉に群がるかのように、小さな茎を奪い合うヒルの群れ。
「あのヒルは夢見草が好物なの。そしてサグ婆はお店で色々な治療薬を売っている。──さて、ここから考えられることはなんでしょうか?」
「夢見草を採りに来た冒険者が怪我をして、サグアさんのお店で治療薬を買うと?」
「そゆこと。ま、それだけじゃないんだろうけどね。本人曰く『森の厳しさを少しはわかっただろう』とか偉そうに言ってくれるわけ」
それにしてもそのやり方はどうなの?夢見草は持って帰れず、ヒルには襲われ、治療薬を買わされる。
そもそもお金がなく『儲かるから』依頼なのだ。治療薬を買わされる羽目になったら逆に赤字だ。
「あー、姉ちゃんの考えてることもわかるけどよ、ギルドに言っても無駄だぜ?サグ婆の依頼はあくまでサグ婆と冒険者の個人間契約。ギルドを通していない依頼はギルドも口出しできねーってこと。ちなみにサグ婆に騙されたって喚いてギルドに駆け込むところまでが『始まりの町』で冒険者になったやつの洗礼さ。それに夢見草は確かに薬としての効果があるんだ。だから採取の仕方を調べていかなかった冒険者側にも落ち度はあるってこと」
「うっわ、最悪な洗礼・・・」
「そゆこと。もう一つ言えば面倒なことに、ここでサグ婆の機嫌を損ねるとサグ婆のお店で治療薬を売ってもらえなくなるのよ。町で売っている代わりのポーションは効き目も薄くて高いしね。だからみんなサグ婆の迷惑に嫌々付き合っている感じかな」
「ユイの言った通りだ。ちょっと面倒な儀式だと思って付き合ったほうが結果的にプラスになる。まぁ理不尽に慣れるって意味じゃ優しい方だがな」
別にサグ婆のところで治療薬を買えなくても困らないけど、と思いかけてふと気づく。どうしてサグ婆は治癒士と知った上でこの悪戯を仕込んだのだろうか。
「なんだお嬢ちゃん、治癒士だったのか。そりゃまた随分と目の敵にされたんじゃないか?」
「・・・まぁヒールをふっかけられる程度には」
「はっはっは。治癒士はちょっとの傷なら自分で治しちまうから、サグ婆にとっては商売敵だ、諦めろ。──で、だ。じゃあ治癒士はサグ婆のところで薬を買わないかと聞かれれば、そうではない」
ダンはポケットからいくつかの小瓶を取り出した。試験管に似たそれは透き通る赤色や毒々しい紫の濁った液体が入っていたりなど、一目で何かの薬とわかる。
「こっちは火傷に効く治療薬、こっちの禍々しい色の薬は解毒薬だ。治癒士といえど大きな怪我を治すキュアを使えるものは初心者だらけの町にはいないし、解毒には治癒士の最高難易度スキルであるピュリフィケーションが必要になるわけだ」
「それらの薬を買うとしたら、サグアさんのお店で買うしかない?」
「別に売っていないこともないが、安くて効き目が確かなのはサグ婆のところだな」
うへぇ。つまりこの先も冒険者として安全に活動していきたいならばこの徒労に付き合わないといけないのか。
うん、割り切ろう。
「ま、こんな割に合わない依頼は適当に片付けたほうがいいよ。あたしからのアドバイスとしてはとにかく池の近くに行かないこと。夢見草はなるべく森側で採取すること。たまに池からヒルが飛び出してきてくることもあるんだから」
「そういえば、サグアさんはここには魔物は滅多にいないって言ってましたけど?あれは違うんです?」
「あー・・・。えっと、あれは一応魔物じゃないんだよね。ただただ大きくなったヒルなんだよね実は」
「えぇ・・・」
「妖精のせいで大きくなったからだとか、天敵がいないからだとか言われてるけど、噛まれたら相当に痛いのは保証するよ?」
「そんな嫌な保証はいらないですよ」
「ユイ、あんまり怖がらせるな。──まぁそんなわけで気をつけて採取するんだぞ。池と森の入り口までは魔物もいないからそこは安心するといい」
そんな会話の中、視界の端でモグがヒルに注意しながら池の水を汲み、皮袋や水筒に移し替えていた。たまにヒルが噛み付いてきても分厚いグローブで難なく弾き返している。
「ヒルがいることを除けば、ここの水は飲めるくらいにきれいなんだよ」とユイが教えてくれた。
「町で会ったら今度は一緒にダンジョンにでも・・・って無理か。貴重な治癒士なのになぁ」
ユイは明日にはD+ランクに昇格するために別の町にいくのだという。今日はここのダンジョンの最後のアタックだったそうだ。これから町に戻ったら明日の馬車一番で出立する準備をしなければいけないらしい。
あまり時間もないようで、もともと水を少し補充するためだけにこの池に寄っただけだという。
「もしどこかでまた会えたら、その時はご飯でも食べましょ。じゃ、またね」
「またどこかでな」
「じゃーな、ねーちゃん」
「あ!ちょっとモグ君は待った!」
足早に帰ろうとする三人を引き留める。
「ん?」と振り向いた少年に駆け寄り、私より少し背が低い彼の頭を優しく撫でた。暖かな光が漏れ、何をしているかはわかったことだろう。
「色々教えてくれてありがとうございました。お礼には程遠いですけど、これで痛みが引くはずです」
「すっげぇ・・・ユイ姉にぶたれた痛みが全部なくなったよ。治癒士ってすげえんだな!」
「そもそもモグが調子に乗るからいけないのよ」
「ありがとうなねーちゃん!まったく、ユイ姉にも見習ってほしいくらいだぜ」
再び手が出そうになったユイの隣をさっと離れたモグ。ダンは「ふざけていないで帰るぞ」と二人の間に入る。
見送る三人の姿はすぐに巨木の影に隠れ、見えなくなる。
喧騒から一変、三人がいなくなると池は静寂に包まれ遠く巨木の葉が風にそよぐ音だけが聞こえてくる。
「──さて、じゃあその洗礼とやらを乗り越えてみますか」
向かうはあちこちに咲く夢見草。
意地悪なサグ婆に付き合ってあげる気もなければお金もない。先ほどの三人に会えたのは幸運だった。それに夢見草そのものもしっかりと薬効があるとモグが言っていたので、採取していってもお金にならないということはないはずだ。
あとは、いつも通り採取して、ヒールを掛けていけばいい。
私は気を引き締め、池に近づきすぎない夢見草の採取を始めるのだった。
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