あるわけも無い
御背中カイカイ
あるわけも無いこと
「キキッーーー」
「ドンっ」
「.............」
あの日の出来事からも、僕はいつもと変わらなかった。
8年後
僕は高校3年生、天馬大翔(てんまひろと)。親にはヒロと呼ばれている。顔面も成績も運動神経もフツーで、取り柄という取り柄がない人間だ。
そんな僕には反してかわいい妹がいる。その妹の名前は幸(さち)。いつも甘えてきて、僕に対してとっても優しい。まるで天使の様だ。そんな妹のことは、夢にも出てくるほど好きに思っている。
いつも、高校の帰り道は一緒に帰っている。そこで妹にその日の出来事を話している。僕はその時間が大好きだ。今日は珍しく、妹は僕と一緒に帰っていない。
妹はパフェが大好物で、放課後に食べに行ったりしている。昨日は僕と妹とで一緒に特大いちごパフェを食べに行った。
「ただいま、幸」
「おかえり、お兄ちゃん」
僕は家に帰り、自分の部屋に入ってスマホを見ながらゴロゴロした。
「ヒロー、ご飯できたよー!」
「はーい」
薄暗い階段をおりて、ダイニングに向かう。今日のご飯はハンバーグだ。妹も美味しそうに食べている。その顔を見れるだけで僕は幸せに感じている。
「ヒロ、最近学校はどうなの?友達はできた?」
「うん、楽しいよ」
嘘だ、僕に友達なんて居ない。僕はなぜかみんなに避けられている。でも、無視をされる訳でもなく、何だかみんなは僕と必要最低限の関わりしかしていないみたいな感じだ。
「ご馳走様。風呂入ったら早めに寝るわ」
「分かった、おやすみ」
ご飯を食べ、お風呂に入った僕は自分の部屋に戻った。
「トントントン。」
「ガチャ。」
「お兄ちゃん。来たよ。」
「おぉー幸、どうした?」
「ちょっと今日風の音が強くて、なんだかちょっと怖くて、寂しくなったからお話したくて。」
「いいよ」
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「お母さんに友達できたかきかれてたじゃん?お兄ちゃんはいるって言ってたけど、本当は居ないよね?」
「ば、バレた?」
「そりゃバレるよー、幸の観察力舐めたらダメだよ!」
「幸は本当に俺の事好きだよなー」
「違うって!ちょっとお兄ちゃんのことが心配なだけ。お兄ちゃんのことを好きになる可能性なんていっさいない!」
「そんな悲しいこというなよー笑。ふぁ~あぁ、もう僕疲れたから寝るね」
「うん、お話ありがとう。」
「おやすみ」
「おやすみ。」
「お兄ちゃん、この生き物なぁに?」
「これはクワガタって言うんだよ」
「カブトムシじゃないの?」
「似てるけどちょっと違うんだよ。カブトムシは大きなツノが真ん中にあるけど、クワガタはふたつもあるでしょ」
「そーなんだ!そんなことも知ってるお兄ちゃんは凄いね!私もクワガタ捕まえたいな〜」
「そうだ!あの林にいっぱいクワガタいるから、一緒に取りに行こうよ!」
「うん!ありがとう!お兄ちゃん大好き!」
「おい、そっちは道路だから走るなよ~」
「大丈夫だよ〜お兄ちゃん心配性なんだから〜」
「ちょっと幸!信号見ろ!」
「ヒロ。起きなさいー、もう朝よー。」
僕は寝ぼけながら食卓に妹と並んで座った。
「今日は夢に妹が出てきた気がした。でもあんまり覚えてないや」
「そうなの?あ〜そういえば私も夢に幸が出てきた気がするわ〜」
「お兄ちゃん、一緒に高校行かない?」
「いいよ、勿論」
何だか今日の学校までの道は涼しく、爽やかな気持ちで登校できている。
「お兄ちゃん、高校まで、かけっこしない?」
「おーいいぞ、負けないよ!」
「じゃあ行くよー、よーいドン!」
運動神経が良い妹、流石のスタートダッシュだ。運動神経がフツーな僕はどんどん妹との距離がどんどん離れる。
「お兄ちゃん~遅いよ〜」
「はぁ、はぁ、待てって、ちょっと休憩、」
「もーう、置いてくよ~」
僕はゆっくり走った。
あれ、ここの道真っ直ぐ行くはずなのに、幸、左に曲がったな。まぁいっか。
僕は左も幸に続いて曲がった。そこには僕を待つ妹の姿があった。
「ねぇねぇ、ここの道覚えてる?」
「昔、ここの道でお兄ちゃんとよく遊びに行ったよね」
確か、ここの道、、、
「ほらっ、行くよ、お兄ちゃん。」
「ばかっ、信号赤だぞ!」
「え?」
この瞬間、何だか昔の記憶が蘇って、なんだか寒気がした。
「キキッーーー」
「ドンっ」
ああ、眠たい。何だか体がだるい。動きたくない。
「ちゃん...お兄ちゃん....」
目を覚ますと、妹の姿があった。
「おかえり、お兄ちゃん。これからはずっといっしょだよ」
あるわけも無い 御背中カイカイ @quu1111
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