第59話 レイジパパの胃痛の元が増えました
眼前に、キロロの村が見えてくる。
王都での、罪人たちの手続きが終わり王都を出たのが3日前。
キロロの村で、補給してから東西の迂回路のどっちを通っても、シグルートの街までは同じ距離。
キャラバンの総数は150人と多い。
なにせ、罪人貴族の家族ごとに加えて、その監視の護衛騎士も当然いるのだから。
当然、人数が増えると、移動の速度も自然と遅くなる。
キロロ村からなら、普通はシグルートの街まで10日も在れば着けるのだが。
恐らく15日以上はかかると予測している。
そんな事を考えながらキロロ村の方に視線を戻すと見知った顔が。
「アベル?」
「あ、レイジさん。待ってました。」
「待ってた?」
「はい。とにかく宿の手配は済ませていますので。」
そう言って、レイジ達を案内する。
* * * *
「それで、どういった状況なんだ?」
宿の部屋にて、レイジがアベルに問う。
トンネル工事を頓挫させた硬い岩盤地帯が、実はアダマンタイトとオリハルコンの鉱石地帯だった事。
勝手にトンネル工事をして掘り進めている事。
あと3日ほどで、山脈超えのトンネルが開通する事。
アベルの話を聞いたレイジの顔は、血の気が引いて真っ青になっている。
そりゃそうだろう。
国営規模の公共事業を、アベル達がやっているのだから。
しかも、アダマンタイトとオリハルコンと言った希少金属を無断で持ち出しているのだ。
「くくくっ!あはははははははははっ!」
コーウェル神父の笑い声が部屋中に響き渡る。
「コーウェル神父……。」
レイジが小声でコーウェル神父に声を掛ける。
「いや~。失礼。余りにも可笑しくて。」
涙を拭きながら言うコーウェル神父。
「笑い事じゃないぞ。コレ、なんて報告すればいいんだ?」
「別に、馬鹿正直に報告しなくても良いんじゃないですか?
このまま、先にトンネルを開通させてしまって。
アダマンタイトとオリハルコンの件は報告せずにしておけば良いじゃないですか。」
「まずいだろう……。」
「どのみち、普通の方法じゃ、トンネル工事の再開なんて出来なかったんですし。
既成事実を先に作って、事後報告で国に丸投げすればいいんです。
まあ、その時に問題が起きないように、アダマンタイトとオリハルコンの岩盤地帯は奇麗に隠しておく事を進めます。」
コーウェル神父。見かけによらず、相当に腹黒い人物だった。
確かに、アダマンタイトとオリハルコンの岩盤地帯とか知れた日には。
国の経済が傾くレベルで問題が起こるのは目に見えて容易い。
(俺の胃。もう少し持ってくれよ……。)
胃の辺りを摩りながら思うレイジだった。
* * * *
使用硬貨の単位
鉄貨 :5枚で半銅貨1枚に (100円くらい)
半銅貨:2枚で小銅貨1枚に (500円くらい)
小銅貨:10枚で銅貨1枚に (1000円くらい)
銅貨 :10枚で小銀貨1枚に (1万円くらい)
小銀貨:10枚で銀貨1枚に (10万円くらい)
銀貨 :10枚で金貨1枚に (100万円くらい)
金貨 :10枚で大金貨1枚に (1000万くらい)
大金貨:今の通貨事情での最高額。1枚で1億円くらい
アダマンタイトが、1キロで大金貨2枚~3枚。
オリハルコンが、1キロで大金貨5枚~8枚。
それをトン単位で採掘したのだから……。
レイジの胃がキリキリするのも納得だろう。
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