第49話 中級で20年
「改めて自己紹介といくかの。
あたしゃ、フィーノ。西方大陸のルセニアの王都で
まあ、街の便利屋って事さね。」
そう言って、快活に笑うフィーノ。
「自分は、マルコ・フランチェスカと言います。今回は、フィーノ様の護衛も兼ねた御守りと言う立場です。」
「お前さん。もうちょっと、年配者を敬わんかい。」
「苦労させられている身としては。敬いよりも、嫌味の方が先に出るんですっ!」
その様子を見て、ルナ達が小さく笑う。
「初めまして。ルナです。
フィーノさんと同じく、
「私はエリス。東方大陸の
今は、ルナ達と切磋琢磨しながら錬金術の高みを目指している所です。」
「セツナ・フォルストと申します。
ルナさんと、エリスさんの元で、錬金術の修行をさせていただいています。」
「ん?フォルスト? 確か、辺境伯様のファミリーネームもフォルストだったような?」
マルコが問う。
「はい。父の名は、レイジ・フォルスト。
この辺境を納める、辺境伯ですわ。」
「すると、セツナ様は、辺境伯殿の御息女で。」
「はい。そして、こちらが弟の。」
「タイガ・フォルストです。
私も、セツナ姉さんと同じく。
ルナさんと、エリスさんの元で錬金術の修行をさせて貰っています。」
「ほう、そりゃ凄いっ!
錬金の使い手が、4人も居るなんてっ!」
「そんなに凄い事なんですか?」
ルナが訊ねると。
「お前さん。全大陸に、錬金の使い手が何人いると思う?」
「私に、エリス。セツナにタイガ。それにフィーノさん。
後は、エリスの師匠さん?」
「エリスさん。師匠の名は?」
「ヘルミーナ・リリアンデール。だったと思うけど。」
「ほう。ヘルミーナの御弟子さんか。元気にしてるかえ?」
「1年くらい前に。
教える事は教えた。後は自分で錬金術の高みを目指しなさい。
って書置きを残して放浪の旅へ。
以来、会っていません。」
「ふぉ、ふぉ、ふぉ。弟子に追い付かれて逃げおったな。」
楽しそうに笑うフィーノ。
「初級しか教えて貰ってなかったんですよ!」
「そりゃそうだろうて。ヘルミーナも、中級までしか扱えておらんかったからのう。
もうちょいで、上級の域に辿り着けると思うたが。
弟子に追い付かれそうになって慌てて逃げたんじゃうろうて。
つまり、全大陸中に
その内の4人が中央大陸に。
少なくとも、アタシの知ってる記録では、ここまで
もしかすると、アンタたちの世代で、錬金術が革新するかもしれないねえ。
して。お前さんたちは、どこまで扱えるのかな?」
「「中級までは。」」
2人揃って答える。
「ほう。見た所、2人とも、まだ20を超えておるか、おらないかの年頃じゃろうて。
その年で、中級まで辿り着けたのは、才に恵まれたのか。お互いが引き上げたのか。
どちらにしろ、努力は惜しまなかったのだろうて。」
「フィーノさんは、上級まで?」
「ああ。この年に為って、やっとさね。
中級で20年ほど燻っておったよ。」
「失礼とは思いますが。お年をお伺いしても?」
セツナが控えめに尋ねる。
「今年で70歳になるね。実に48の頃から20年、上級に辿り着けずに迷走しておったよ。」
懐かしむように、遠い目をして空を見る。
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