第44話 辺境伯からの檄
ドアがノックされて、ドア前の兵士2人がドアを開ける。
「クラウス公爵様の迎えの馬車が参りました。」
兵士に案内されて、兵士の詰所を出ようと言うタイミングだった。
突然、レイジは足を止めて、兵士たちが多くいる休憩所の入り口前で言う。
「兵士諸君! 私はレイジ・フォルスト辺境伯。
私から、君たちに言葉を贈る。
君たちの任務。門の守りと言う仕事。
確かに地味で、毎日同じ事を繰り返す、代わり映えの無い仕事だろう。
だから!私は敢えて言おう!
花の無い仕事だと思うだろう! 同じ事の繰り返しで面白くないだろう!
だが! 私は知っている!
君たち兵士が、毎日、王都の門を守っている事を!
君たち門番が居るからこそ!王都に不埒な者たちが入って来るのが難しいと言う事を!
私は知っている!
君たちが居るからこそ! 騎士たちは安心して
君たちが居るからこそ!王都の人たちも!安心して暮らせる事を!
腐る事なかれっ! 誇りを持てっ!
だから!私は君たちに敬意を送る!」
そう言って、両の手の拳を握り。右手を左肩に、左手は右肩に交差させて首を軽く下げる。
この姿勢は、立場が上の者が、下位の者に感謝を示す礼である。
もちろん、上位者が、下位者にこの礼を取る事など無いに等しい。
レイジの礼を見て、兵士たちは敬礼で返す。
中には、感激の余りに涙を流している者も。
「私の言葉を、外で仕事中の兵士達にも伝えて欲しい。
レイジ・フォルスト辺境伯は、君たちを見ていると。
そして、感謝もしていると。
それでは失礼する。」
(この人の格好良い所は、こういう所なんだよなあ。)
レイジの背中を見ながらアベルは思う。
シグルートの街でも、街中に出た時に、兵士たちに声を掛けて檄を送る。
毎日が、同じ事の繰り返しの退屈な仕事でも。
ちゃんと評価してくれている人が居ると分かるだけでも、仕事に対するモチベーションが上がる。
まあ、シグルートの街では、ここまで大仰にはしないけど。
滅多に来ない王都だからこそなんだろう。
* * * *
迎えの馬車に乗り揺られる事15分。
公爵家の屋敷に着いた。
「「デカっ!」」
アベルとビート。初めて屋敷を見た、最初の言葉がコレだった。
「これでも、公爵家領の本宅に比べると半分くらいだぞ。」
レイジが言う。
「そうですね。上位貴族の邸宅は、襲撃などを考慮して、出来るだけ迷わすように、複雑に作ってますからね。」
コーウェル神父に言われて、レイジの屋敷も最初の頃は良く迷ったと思い出すアベル。
「レイジ・フォルスト辺境伯様の到着です。」
案内役の執事がドアの前で声を上げる。
すると、少し大きめのドアが開き、玄関ホールにはメイドたちが頭を下げて並んで迎える。
4人が歩を進めていると、1人の女性が脇から出てくる。
女性は
「ようこそ。レイジ・フォルスト辺境伯様。」
「マリー。今回も世話に為る。」
「はい。」
そう言って顔を上げるとアベル達を見る。
「メイド長の、アリアンベールと申します。
皆様の滞在中の、お世話するメイドたちの纏め役です。
皆さま、御用の際はメイド達に遠慮なく要件を御伝えください。」
「俺の横に居るのがアベル。
その後ろがビート。
俺の後ろに居るのが、教会所属のコーウェル神父だ。」
「それでは、こちらに。」
そう言って、歩き出すマリー。
その後ろをレイジ達が着いて行く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます