第43話 王都に着きました

「これは、これは。壮観ですね。」


歓喜の声を上げているのはコーウェル神父。


「神父殿は、意外に豪胆だな。


普通は、こう為るぞ。」


横を見れば、ビートが縮こまって顔面蒼白になっている。


かく言うレイジも、多少ビビっている。


「滅多に出来ない経験ですよ。空を移動するなんて。」


滅多にどころか、普通は飛ぶ経験なんぞしない。


身体を乗り出して、地上を見るコーウェル神父。


自殺願望でも有るのかと勘違いしそうだ。


4人が飛翔の絨毯に乗って目指しているのは、目の前にそびえ立つ山脈。


サングルト山脈。


王都と辺境シグルートを隔てるように東西に100キロ。


平均標高は1800メートル。最高峰が2300メートル。


辺境から王都を目指すなら。普通は、この山脈を大きく迂回して移動する。


その為。直線なら5日も在れば行ける距離なのだが。


普通に迂回路を行くと、片道15日もかかってしまう。


現在、山を貫通させるトンネルを掘ってはいるものの。


途中の固すぎる岩盤に邪魔をされて、トンネル工事は頓挫してる。


速めの昼食を済ませて、昼前に出立したのだが。


空中を直進で移動しているので、障害物も無く、魔物に襲われる事も無く

、夕方前には山脈を超えた村に到着してしまった。


騒ぎに為らないように、村から離れた所で絨毯から降りて、20分ほど歩いて村に入る。


全員が商業大陸組合プラントライセンス持ちのなので、村にも問題なく入る事が出来た。


宿も取り、夕食も済ませて、旅の疲れ(主に高度慣れしていないせいで)全員割と早くに寝付いてしまう。



朝日の差し込みで目が覚める。


下の食堂に向かうと、すでにアベル以外は食事に入っていた。


朝食を済ませて、村の外に出て適当に離れた所で飛翔の絨毯をとりだして乗り込む。


ドンドン高度が上がっていき。


「それじゃ、移動します。」


アベルの声と共に、絨毯が空を移動する。



昼食は、絨毯で移動しながら食べれるように、おにぎりで済ませる。


空での食事と言うのも、なかなか経験できない事の1つだろう。


そして、昼過ぎには、目的地の王都が視界に入る。


村の時と同じように、離れた場所で降りようと高度を下げた時だった。


「アベル。 今回は、門の前まで絨毯で行け。」


「え?良いんですか? かなり目立ちますよ?」


「それが目的だ。」


「了解です。」


レイジに言われて、門で並ぶ人だかりの前で絨毯の高度を下げていく。


当然門に並んでいた人たちも、門を警護している衛兵たちも大慌てだ。


詰所の中から、兵士たちがワラワラと出てくる。


地面に着地すると。すぐさま兵士たちが周囲を取り囲み槍を構える。


槍兵の後ろには、弓兵と魔術師メイジが攻撃態勢のまま待機している。


一言も喋らずに、槍と弓を構えて行動に移せるようにしている辺りは、さすがは王都を守護する衛兵と言ったところだ。


レイジが、ゆっくりと絨毯から降りて。


「辺境伯のレイジ・フォルストだ。


王都のクラウス公爵殿には通達を出している。


確認を頼めるか。」


レイジの前に、1人の衛兵が出て敬礼をする。


「自分は、北門守衛担当主任のエドガーと言います!


今、確認の使者を出しましたので。


失礼とは思いますが。詰所の方で、お待ち願いますか!?」


「構わん。門の守衛、ご苦労である。 案内してくれ。」


「はっ!」


エドガーに連れられ、貴族用の詰所に案内される。


「なんか悪いですね。順番をすっ飛ばして。」


アベルが市民的な常識を漏らす。


「貴族様何て、そんなものだ。気にしたら負けだぞ。」


その貴族のレイジを前にして、言う発言ではない、言葉をビートが言う。


「お前ら。気を抜きすぎだ。 どこで誰が聞いてるか分らんからな。


迂闊な発言は控えろ。」


「「はい。」」


出された茶を口にしながら、詰所で待つ事20分。

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