第40話 教会の真実

現在、議題室に集まっているのは。


レイジ。ユキナ。アベル。


血盟クラン英華の剣所属の。


ビート。ベルン。ヒルト。シャリア。


血盟クラン剣美所属の。


アントワネリー。シャノン。カナン。


そして、教会のコーウェル神父。


「急な呼び出しに応じてくれて感謝する。


さて。ここに居る皆は。アベルが精霊の加護を授かっていると言う認識で来て貰っているのだが。


精霊とは何なのか聞かれて、答えられる人は教会所属のコーウェル神父以外には居ないと思う。」


コーウェル神父に全員の視線が向けられる。


「そうですね。教会に所属する者と。高位の爵位持ちの当主にのみ。

口伝で伝えられてきた話ですからね。」


一息つくコーウェル神父。


「まず最初に。皆さんは、教会とは、どう言った存在なのかは御存じで?」


「神を信仰するための組織では?」


ビートが言う。


「神の教えを説いて。広めていく組織だと認識している。」


これは、ヒルト。


「あながち、間違いと言う訳では在りませんね。


確かに、表向きの組織としての行動指針としては、その通りです。」


「表向きねえ……。」


これは、ベルン。


「どんな組織でも。表が在れば、裏も在る。


表裏一体。これは世の摂理。」


「教会の裏と言うのは?」


アントワネリーが訊ねる。


「精霊信仰による、精霊の加護の所持者の保護と監視。


っと言った所でしょうか。」


そう言って、アベルを見るコーウェル神父。


そして、語りだす。



【精霊信仰】



精霊を神に見立てて信仰する派閥。


居るのかどうかも怪しい、神を信仰する派閥とは違い。


精霊は実在する。


しかも、精霊の力は絶大。


その精霊の機嫌一つで、人の世界は大きく揺れてしまう。


土地が豊かにも為れば、土地が枯れて植物が育たなくなる事も。


だからこそ、時の権力者たちは、精霊の加護を持つ者を探す。


そして、管理しようとする。


その結果、精霊の機嫌を損ねてしまう方が多いと知っていても。


精霊とは、純粋な存在であり。


人の欲望、願望などに敏感な存在。


欲望と願望が高い程に、精霊は接触を拒み。


逆に、低い者に加護を与える事が多い。


無欲なのかと言われれば。 そうではない。


欲の方向性が違うだけ。


「アベルくん。君の欲望とは何ですか?」


「欲望ですか?」


コーウェル神父に問われて、考え込むアベル。


「そうですね。欲望じゃなくても良いですよ。


例えるなら願望とか、それこそ希望とかでも。」


「希望……。願望……。ん~。希望?夢なら。」


「どんな夢ですか?」


「ルナとの子供を産んで。


 一緒に年老いていって。出来れば、孫の顔を見て。


ルナの最期を看取る事かな?」


「素晴らしいですね!これです! これこそが精霊の加護を受けれる人材たるかの資質なのです。」


興奮気味に言うコーウェル神父。


「コホン。失礼。」


ワザとらしく咳払いをして場を取り繕うコーウェル神父。


「欲望は在るけど。その欲望の方向性が違うので、精霊たちは加護を与えるのです。」


「コーウェル神父は。教会に、この事を伝えてはいないのですか?」


レイジが聞くと。


「今の腐った教会に伝えようものなら。精霊の機嫌を損ねて、町の1つや2つ。即座に消えかねませんって。」


どうやら、年を重ねて腐っていくのは、どこの組織でも同じらしい。

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