第39話 レイジパパの増えていく苦労

軽めの昼食を取り。


茶を啜りながら、書類と睨みあいをする。


「父上!」「お父様!」


タイガとセツナの声が聞こえた気がした。


いくら今日、別荘から帰ってくるとは言え。


どれだけ待ち遠しいのだと自分で呆れる。


「アベルの事を言えんな。」


「貴方。窓の外ですよ。」


今度は、ユキナの声の幻聴か。


自分で呆れながら、窓の方に目を向ける。


そして、硬直する。


そこには、色彩豊かな絨毯に乗った、ユキナに、タイガに、セツナ。


そして、アベルが、必死に笑いを堪えながら俺を見ていた。



 * * * *



今現在。ユキナから事の経緯を全て・・聞いたレイジは、頭を抱え込みながら床を見ていた。


「…タ。アナタ! レイジ・フォルスト!」


自分の名をフルネームで呼ばれて。レイジの意識が現実に引き戻される。


「レイジ・フォルスト!しっかりしなさい!現実逃避したくなる気持ちは理解できますが。


逃避するのではなく!これから【どうするのか】を考えるのが、貴方の仕事なのですよ。」


「ユキナ……。すまん。余りにも突飛すぎて……。


もう大丈夫?だ……。」


「仕方がありませんよ。まさかの精霊様に会って。


加護まで授かってるなんて。誰にも想像できませんから。」


「うん。だな…。うん。」


そこで、レイジは大きく深呼吸をする。


「よし!大丈夫だ! アベル!」


「はい?」


「もう他に、隠し事はないな?」


「隠し事ですか? 特に隠していたわけではないですよ?


聞かれなかったので言わなかっただけで。言う期会も無かったので。」


「なあ、ユキナ。 こいつ、殴り飛ばしていいか?」


「ダメです。気持ちは分かりますが。ダメです。


私も、蹴り飛ばしたいのを我慢したんですから。」


似たもの夫婦だった。


「よし。アベル。他に精霊の事を知ってるやつは?」


「ドライアド様に会った時には。ビートに、ベルン。シャノンと、ヒルト。


それとジンと会った時はカナン。


あとは、コーウェル神父くらいかな?」


「トマス。」


「はっ。」


「いま挙がった名前の人を、至急屋敷に連れてきてくれ。


くれぐれも荒事にはするなよ。


客として招け。」


「畏まりました。」


「別荘側の方にも使者を出さないとな。」


「そちらの方は大丈夫ですよ。


私が緘口令かんこうれいを強いて置きましたので。」


ユキナの言葉に、満足そうに頷くレイジ。



 * * * *



さて。なんで、レイジが頭を抱え込む状況なのかと言うと。


勿論。アベルが授かっている精霊の加護が問題の1つ。


精霊とは。


この星を根底から支えている象徴と言っても過言ではない。


一般的には、知れ渡ってはいないが。


北方大陸の魔国は知らないが。


東方大陸。西方大陸。中央大陸。南方大陸。


の4大陸には、精霊の加護を授かった者が1人は居る。


精霊の加護を授かると言う事は、その地域が精霊の庇護下に入り土地が豊かになる。


土地が豊かになると言う事は、自然と人が集まり集落と為り。


集落は村と為り。村は町になって。町から街へと成長していく。


街がさらに成長すると、王都に。もしくは帝都に。


そうして、国が出来て行ったのが、今の状況。


なので、各大陸の特権階級者は、血眼になって精霊の加護持ちを探す。


しかも、精霊の加護1つでも凄い事なのに。


このアベルバカは2つも加護を授かっている。


しかも、まだ増えていく予定ほぼ確定事項


レイジの本音と言えば。


もう国王に会わせて、丸投げしても良いんじゃね?


その方が苦労しなくて済むし。


と。割と本気で思っている。

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