第35話 錬金術師が増えました
明けて翌日。
朝食の時に、昨日の夜に起こった事を皆に伝える。
「……で。全てです。」
俺が言い終わる前から、ルナとエリスの意識は既に【飛翔の絨毯】の制作思考に入ってしまっている。
「アベルさんは、精霊様の加護を2つも持っているのですね。」
ユキナが言う。
「はい。樹の精霊ドライアド様と、風の精霊ジン様の加護を。」
「で、精霊様からは、全ての加護を授かれと?」
「はい。火の精霊様。水の精霊様。土の精霊様。光の精霊様。闇の精霊様。
機会が在れば、5人の精霊様とも、是非とも御会いしたいものです。」
そして、朝食後。
エリスの部屋で、セツナとタイガが錬金陣を前に錬金をしている。
なんで、こんな状況に為ったのか。
事の始まりは。飛翔の絨毯の材料を、作ろうと言い出したのが原因だった。
アベルから、風の精霊ジンの加護の付いた、精霊石をルナとエリスが手に取った瞬間。
2人、同時にスキルボードと、スキルブックが解放されてしまい。
素材は、あれだコレだと言い出して。
錬金陣を取り出して作り始めてしまった。
ん?ルナは錬金釜が無いだろうって?
甘い、甘い……。
何と。ルナも、エリスも。釜だろうが、陣だろうが、使いこなせるようになっていた。
ただ、使い慣れた物は、陣にしろ釜にしろ。
微妙に、しっくり、こないらしい。
それが、品質に問題が出るほどの事でもないので、お互いに気にしては居ないのだが。
まぁ、そんな状況で、目の前で錬金術を見せつけられて。
ユキナ様も、セツナもタイガも。
見ていたメイドたちも。興味が出ない訳がない。
真っ先に飛びついたのが、セツナとタイガだった。
ルナとエリスに、錬金術を教えてくれと。
それじゃ試しにと。無理なら諦めて貰えるだろうと、軽い気持ちでやらせてみたら。
2人とも、1発で蒸留水を錬金してしまった。
そして、見事にハマった……。
セツナとタイガ。
セツナは錬金陣での錬金が合っていたようだが。
タイガの方は少しムラがあった。
ここで、ルナが余計な一言を。
「タイガくんは、錬金釜の方が向いてるのかな?」
この言葉を聞いたユキナ様。
「釜って、釜ですの?」
「ええ。私の錬金術式は。本来は、錬金釜を使用しての、錬金術なんです。」
「セーバス!すぐに釜を用意して!」
「畏まりまし。奥様。」
「ちょっと!まったぁ~!」
部屋から出ていこうとする、セーバスを慌てて引き留める。
思わず、敬語を使うのを忘れてしまうほどには慌てた。
「ユキナ様! 錬金釜を作る気ですか!?」
「ええ。何か問題でも?」
「大ありですっ!
錬金釜って、かなりの大きさです。
1度、設置したら、数人がかりで持ち運ばないといけないんですよ!?」
「あら。それでは、この部屋では手狭ですね。
セーバス。談話室に釜を持ってこさせてください。」
「畏まりました。」
(意味が違うっての!これだから貴族様ってのわっ!
ってか!これヤバいだろう!セツナは来年15だぞ!
絶対に
タイガも同じじゃ!
辺境伯の子供が揃って
アベルは、心の中で叫んだ。
勿論、誰にも心の声は届いていなかった。
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