第34話 精霊から呼び出されました

夕食時。


メイドに呼ばれて食堂に向かい。


皆で出された食事に舌鼓を打っていた。


アベルの作る料理も美味しいが。


流石は、料理専門の職業ジョブスキル持ち。


加えて、調理レベルも高い人たちが作った品々。


美味しくない訳がない。


メインディッシュも食べ終わり、デザートを出されるタイミングで。


アベルの右手の甲の紋章が光り輝きだす。


「アベルさん。それは?」


手の甲の紋章の輝きにユキナが訊ねる。


「食事の途中ですが。 失礼します。


精霊様が、お呼びの様なので。」


食事中に席を立つなど、マナー違反も良い所だが。


精霊の名を出されては納得するしかない。


アベルは、席を立ち窓の前に立ち目を瞑り集中する。


「ユキナ様。精霊様に会いに行ってきます。」


「分かりました。帰ってきたら、お話を伺っても?」


「もちろんです。それでは。 ルナ行ってくるよ。」


「行ってらっしゃい。」


笑顔で送り出すルナ。


屋敷から出て、精霊に呼ばれた方角を再確認する。


「アベル。」


名前を呼ばれて振り向けばカナンが居た。


「何か在った時の為だ。着いて行くぞ。」


「有り難う。カナン。」


2人して、身体能力上昇を使い。


精霊の居るであろう場所に向かって走り出す。


 * * * *


時間にして1時間くらいだろうか。


少し切り立った崖の様な場所に居る。


「此処なのか?」


「だと、思います。」


アベルが、右手の紋章に目をやると同時に、紋章の輝きが収まった。


『ふ~ん。お前が、ドライアドから加護を貰った奴か。』


頭上から声が聞こえた。


頭上から、全身緑色の男性が、空中に浮かびながらアベル達の前に。


『よう。俺は風の精霊ジン。宜しくな。』


「風の精霊様。お初にお目にかかります。私はアベルと申します。」


深く頭を下げながら、アベルが礼を取る。


「私はカナン。アベルの付き添いで参りました。」


カナンも深く頭を下げて礼を取る。


『固い。固いぞ。 もっと砕いて行こうぜ。


俺、そう言うの嫌いだから。』


「分かった。それで、要件は?」


『そう。それで良い。


でだ。呼び出した事なんだが。


要件は特にない。』


ジンの言葉に、ポカンとなるアベルとカナン。


『はっははは! 冗談だっ!冗談!』


カラカラと笑うジン。


『まあ、要件らしい要件と言うのは本当に無いんだ。


強いて言えば、たまたま紋章の気配を感じたので。


今代の、紋章持ちの顔でも見て置こうかと思っただけだ。』


そう言って、空中で胡坐を掻いて、アベルをじっと見つめるジン。


(なるほどねぇ。確かに邪気が全くない。


いや……。違うな……。有るには有る。


が。邪気と言うより欲望?希望?


いや……。願望か?)


アベルを見ながらジンが思う。


『アベルって言ったな。』


「はい。」


つがいが、錬金術師アルケミストなんだってな。』


「はい。」


『どこまで作れる?』


「中級錬金術式まで解放されてはいます。」


『そっか。じゃ、これをやる。』


そう言って、アベルにの前に10個の精霊石を浮かべる。


7つの無色の精霊石と、3個は緑の色がついている精霊石。


「精霊石だな。有り難く貰うよ。」


『おう。あとつがいに伝言だ。


俺の属性の精霊石から、【飛翔の絨毯】を作れって伝えてくれ。』


「飛翔の絨毯だな。分かった。必ず伝える。」


『おう。 それと、俺の加護も与えて置く。


それじゃ、気が向いたら、また会いに行く。』


そう言って、風の精霊ジンは姿を消した。


「随分と、気さくな精霊だったわね。」


カナンが言うと。


「ですね。精霊にも性格が出てるんですね。」


「ほんと、アベルと居ると。退屈しないわぁ。」


「人をビックリ箱みたいに言わないでください。」


ひとしきり笑った後に、2人は帰路につくのだった。

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