第33話 別荘に着きました


約5時間ほど馬車に揺られながら別荘に辿り着いた。


ルナとエリスは、馬車に相乗りさせてもらい。


ユキナ様。セツナ様。タイガ様たち3人と仲良くなっていた。


ついでに言えば、リト、ミト、コトの妖精3人組も、いつの間にか紛れ込んでおり。


5時間の旅路は、相当賑やかだったと言って置こう。


距離にすれば、30キロちょっとくらいだと思うが。


街中の喧騒から逃れるには丁度いいともいえる。


屋敷自体も、そこまで大きくはない物の、それなりにはデカイ。


玄関を開けて、中に入ると10人ほどのメイドたちと、他にも使用人たちが出迎えてくれた。


俺とルナは、一緒の部屋だが。エリスやアンネたちは別々の部屋をあてがわれた。


「夕食時は、お迎えに参りますので。 どうぞゆっくりと、お寛ぎください。」


いつの間にか、テーブルの上には、お茶とクッキーが出されており。


ドアを閉めて、メイドさんは出て行った。


「なんか、落ち着かないね。」


いつもは自分たちでやる事なのだが。


それをやってくれるので、何となく落ち着かないと言うか手持無沙汰になってしまう。


ソファーに腰かけ、2人で寛いでいると。


ドアをノックされる。


「どうぞ。」


ドアを開けて部屋に入ってきたのは、セツナとタイガだった。


と同時に。


「「「アベル!」」」


リト、ミト、コトの3人の妖精が、アベルめがけて飛びついてくる。


「ちょ!リト!」


リトはアベルの頭の頭頂部の髪を引っ張り上げる。


ミトとコトも、アベルの耳を引っ張る。


「痛いっ! 痛いからっ!」


乱暴に為らない様に、3人を引き離す。


「お見苦しい所を……。」


「いえ、好かれていますのですね。」


クスクスと笑いながらセツナが言う。


「僕、触らせてもくれないのに……。」


ションボリした雰囲気で言うタイガ。


「乱暴!」


「痛い!」


「嫌い!」


どうやら、タイガの妖精たちへの接し方がお気に召さないようだ。


「タイガ様。妖精たちは物ではありません。


赤子に接するように、優しく接してあげてください。


そうすれば、タイガ様にも心許すようになるでしょう。」


タイガの前に行き、目線を合わせると。


右肩の上に乗っているミトを前に出す。


ミトは警戒したままタイガを見る。


タイガは、ミトを掴もうと右手を出す。


そのタイガの手を、アベルが掴んで止める。


「タイガ様。掴むのでありません。 触れるのです。


この様に。」


そう言って、人差し指で、ミトの顔を撫でる。


気持ち良さそうな表情になるミト。


タイガも真似をして、掴むのではなく。指でミトの顔に触れる。


「雑。」


まだ、お気に召さないらしい。


「うっ……。」


「許容範囲。」


そう言って、タイガの右肩に乗り移るミト。


「精進します。」


「許す。」


「有り難う。ミト。」


その様子を見て、アベル、ルナ、セツナの3人が笑みをこぼす。

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