第28話 妖精の粉を貰いました

ドライアドと邂逅して3日目の昼。


アベル達は、シグルートの街に戻ってきた。


大陸商業組合プラントにクエスト完了の報告を出し。


報酬を貰い、ビート達と一緒に製作場ファクトリーに戻る。


「ただいま。」


ドアを開けて、家に入ると、ルナがアベルの姿を見つけると同時に、アベルに向かって走って来て胸に飛び込む。


ルナの行動にビックリして、ミコたち妖精3人は、アベルの背中に隠れてしまう。


「お帰り!アベル! ん~!アベル成分補充っ!」


「なんだよ。それ。」


「アベル……。お腹空いた……。 味噌汁とベーコンエッグ食べたい。御飯も。」


「そっちの成分かいっ!」


思わず突っ込んでしまったアベル。


クスクスと笑い声が聞こえる。


「ルナ。紹介するよ。 妖精のミト、コト、リトの3人だ。」


そう言って、背中に隠れている妖精たちを紹介する。


「よろしくねっ! 私はルナ。アベルの奥さんだよ。」


「ミト!」


「コト!」


「リト!」


エリス。アントワネリー。シャリア。コーウェル神父。


は、ミト達を見て驚く。


「俺は昼の用意をするから。皆に飲み物を出してくれない。」


「わかった。」


「あ。ルナ。 コレ。」


そう言って、マジックポーチを手渡すアベル。


「食事の後な。」


「うん!」


「おいで!ミト、コト、リト!」


「「「は~い。」」」


「さて。料理に取り掛かりますか。」



 * * * *



食事しながら、皆に今回のクエストでの出来事を話した。


リトたちと出会った事。


エルダートレントが精霊の庇護下に入って、魔物モンスターではなくなり森の守護者として居る事。


エルダートレントとの交渉で、間伐かんばつする代わりにエルダートレントの枝を分けて貰える事。


精霊と話して、精霊石を手に入れた事。


精霊の加護を貰って、他の精霊たちに逢う事。


コーウェル神父は話を聞いて興奮していたが。


アントワネリーと、シャリアの2人は、開いた口が塞がらなくなっていた。


「だよな。それが普通の反応だよな……。」


ルナとエリスを見ながら言うベルン。


「なんで、ルナとエリスは落ち着いていられるの!?」


シャノンが聞くと。


「だって。」


「ねえ。」


「「素材に載ってるから。」」との事だった。


「まぁ。まさか、加護まで授かってくるとは思ってなかったけど。」


「しかも、錬金の更なる高みって!」


「「ねえ!」」


ルナとエリス。二人とも、驚きよりも、錬金術には、更に奥が在ると知って大喜びの大興奮。


「ちょっと!アベル!例の件!」


シャノンが痺れを切らしてアベルに催促する。


「あ、うん。 ルナ。話したい事が。」


「うん?」


「実は、エルダートレントの枝を使って、シャノンに新しい杖を作ってあげて欲しいんだけど。」


「やるっ!」


「私もっ!」


ルナの言葉に、エリスも被せる。


「んじゃ、残りの枝は4本あるから。


シャノン、シャリア。ヒルト。アンネ。で4本なんだけど。」


「私は、今の錫杖で十分ですので、気にしないでください。」


アベルの視線に気が付いたコーウェル神父が言う。


「錬金術の事は良く知らないけど。 2人の腕の差は?」


「2人とも同じだよ。錬金術式が違うだけで。


火炎剣を作ったのはルナだけど。


流星の弓を作ったのは、実はエリスなんだ。


あの時は、説明がややこしくなるので、ルナが作ったことにしたけど。」


「錬金術式が違うって?」


「それは見た方が早いね。」


「はいっ!私が最初にやるっ!」


エリスが手を上げて言う。


「エリス!ずるいっ!」


「ずるく無いっ! 大体!ルナの後に、私の錬金術式見ると見劣りしちゃうんだからっ! 私の方が先にやるのが普通なのよっ!」


「ひどっ!」


(その通り《だから》です。)


ルナの錬金術式を知ってる、アントワネリーとコーウェル神父の心の声が重なる。


「って事で! 誰のを作る?」


「それじゃ、私のを頼まれてくれるか?」


アントワネリーが申し出る。


「エリスの腕前は知ってるからな。」


「アンネっ!大好きっ!」


アントワネリーに抱き着くエリス。


「代金は?」


「エルダートレントの枝は貰った物なので。」


エリスの方に視線を向けるアベル。


「折角だから、アラクネの糸を使っていい?」


「付与効果が変わるんじゃないか?」


アントワネリーが聞き返す。


「判らない。ってのが正直な感想かな。


少なくても、シルクスパイダーの糸を使ったのよりは、性能が上がるとは思うんだけど。


どうしても、魔力回復速度上昇を付けたいってなら。


シルクスパイダーの糸を使うけど。」


「う~ん……。 良し、アラクネの糸を使ってくれ。」


悩んだ末に、アラクネの糸を使う事にする。


「それじゃ。リト、ミト、コト。 妖精の粉を、お願いできるかな?」


「「「いいよぉ~!」」」


「僕がやるっ!」


「僕がやるのっ!」


「アタシがやるっ!」


妖精たちが言い争いになる。


「はいっ!ストップ! それじゃ、3人で協力してやろうか。」


「「「協力ぅ~?」」」


「そっ。3人で同時に出してくれる?」


「「「わかったぁ! せーのっ!」」」


リト、ミト、コトの3人が、羽をパタパタと動かす。


すると、羽から粉が落ちてくる。


落ちた粉は、テーブルの上に置かれている布の上に集まる。


「「「できたぁ~!」」」


「3人とも、有難うね。」


エリスが3人の頭を人差し指で撫でて行く。

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