第29話 張り切りました

「それじゃ。」


そう言って、錬金術式の描かれた布をテーブルの上に広げる。


「使用するのは、エルダートレントの枝。アラクネの糸。祝辞の水。中和剤緑。そして、妖精の粉。」


「シャリア。手伝って貰って良いか?」


「良いわよ。私の時にも、お願いね。」


「もちろんだ。」


そう言って、エリスの背中に手を当てるアントワネリー。


そのアントワネリーの背中に手を当てるシャリア。


「始めるよ。」


錬金陣の上に、エルダートレントの枝を乗せ。アラクネの糸を乗せて手をかざす。


エルダートレントの枝が粘土のように柔らかくなり、アラクネの糸を吸収していく。


すかさず、中和剤緑と祝辞の水を加えて行き。妖精の粉を入れる。


後はひたすら、手で撫でるような感覚で、魔力を注ぎ込みながら混ざり合った物を撫でる、撫でる。手を回しながら撫でる。


セリアの背中からは、アンネとシャリアの魔力が送られてくる。


優しく大きく、雑にならないように。魔力を練り込みながら。


やがて、錬金陣が光り輝くと。


1本の杖が出来上がっていた。


エリスの錬金術式を初めて見た、英華の剣のメンバー達は、驚きを隠しきれずに興奮していた。


「アンネ。」


杖を手に取り、アントワネリーに渡す。


「これは……。凄いな。」


手にしただけでも分かる。


【真樹の杖】

〈付与効果〉

詠唱速度短縮  47%。

魔力消費減   53%。

魔法威力上昇  42%。

魔力上昇    58%。

保護魔力壁


「ふあっ!」


付与効果を聞いた瞬間に、アントワネリーが卒倒しそうになる。


「アンネ!」


シャリアが、アンネを支える。


付いた付与効果は5つ。


もはや、国宝級と呼ばれる武器防具と比べても、見劣りはしないレベルの付与効果。


エリスを見れば、フンスッ!と息巻いてる。


「次行くわよ!次っ!」


テンションが上がって興奮が収まらないらしい。


「た、頼む……。」


シャリアと言えば、期待半分、怖さ半分と言った心境だ。


これ以上が、出来て欲しいような。欲しくないような。複雑な心境だ。


今度は、エリスの背中にシャリアが手をあて。シャリアの背中にアンネが手を添える。


2本目の杖が完成。


【真樹の杖】

〈付与効果〉

詠唱速度上昇 42%

魔力消費減  38%

魔法範囲増大 60%

魔法威力増大 72%

保護障壁


これまた、最初に作ったのと比べても、見劣りのしない出来栄えだった。


「しゃあぁぁっ!」


エリスが右腕を掲げてガッツポーズを取る。


「次っ!私の番だからねっ!」


エリスの作った物に触発されてか。


ルナも気合が入りまくる。


中級錬金釜の前に立ち、エルダートレントの枝。アラクネの糸。中和剤緑。祝辞の水。妖精の粉と入れていき。


「シャノンさん!ヒルトさん! お願いしますっ!」


ルナの声に、シャノンがルナの背中に手をあてて、ヒルトがシャノンの背中に手をあてる。


「行きますっ!」


魔力を込めて、錬金釜を掻き回す。掻き回す。掻き回す。


気合を入れて、魔力を込めて掻き回す。


錬金釜が光り輝く。


錬金釜の上には、杖が浮かんでいた。


セリアの錬金術式でも驚いていた、英華の剣のメンバーだが。


ルナの錬金術式を見て更に驚愕。


顎が外れたのでは? と、思える程に口が大きく開いて閉じる気配がなかった。


(そうなるよね。)


英華の剣のメンバー以外の者たちが、苦笑を浮かべて見ている中。


「シャノンさん。」


ルナの声で、我を取り戻すシャノン。


「どうぞ。」


杖を受け取るシャノン。


【真樹の杖】

〈付与効果〉

詠唱速度上昇 32%

魔力消費増加 24%

魔法威力増加 78%

魔力増加   66%

保護障壁



ルナの錬金術式に、いまだ心此処に在らずと言った状態だが。


手渡された杖の付与効果に、更に意識を失いそうになる。



最後にヒルトの錫杖。


【真樹の錫杖】

〈付与効果〉

詠唱速度上昇   23%

魔法効果増大   77%

魔法効果範囲増大 46%

魔力回復速度上昇 54%

保護障壁


と言う結果で終わった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る