第27話 精霊と邂逅しました

『そなたが、錬金の秘法を受け継ぎし者のつがいかえ?』


後ろから声が聞こえた。


皆が、一斉に振り返ると。


そこには、全身茶色の女性が佇んでいた。


「精霊ドライアド様で?」


アベルが訊ねる。


『いかにも。精霊ドライアドじゃ。


それで、人の子よ。錬金の秘法を受け継ぎしつがいなる者は、お前さんかえ?」


「はい。アベルと申します。 妻の名前はルナと言います。」


『とうに、潰えておると思っておったが。


まだ、錬金の秘法を受け継ぐものが存在しておるとはのう。』


懐かしむような眼差しで、アベルを見るドライアド。


『して。精霊石が欲しいとな?』


「はい。妻と、その友人の錬金術師が、拡張資材箱なるものを製作するのに必要だと言っておりました。」


『ふむ。懐かしいのう。あ奴も、そう言っておったな。』


そう言って、アベルのすぐ側まで寄ってくるドライアド。


『妖精たちも懐いておる。』


「アベル。良い人ぉ~。」


「優しいぃ~。」


「ご飯くれるぅ~。」


『基本、妖精は悪意に敏感過ぎるほどに敏感じゃ。


その妖精たちが懐くなど珍しいにも程がある。


精霊石じゃったな。』


そう言って、足元の石ころを2つ拾い握りしめる。


『出来たぞ。』


そう言って、アベルに無色の精霊石を手渡すドライアド。


その光景を見ていたアベル達は呆気にとられる。


『どうした? 精霊石を所望なのだろう。ほれ。』


「あ。有り難う御座います。」


『なに。そんな物で良いなら、いくらでも。


そうじゃ。いちいち、ここまで精霊石を取りに来るのも面倒じゃろう。


お主に、精霊の加護をくれてやろう。』


そう言って、アベルの右手の甲に人差し指を当てる。


右手の甲には、紋章が刻み込まれていた。


『これで、私の加護は与えた。


精霊の居る場所に近づくと紋章が反応する。


火。風。地。水。光。闇。 そして、私の木。


全ての属性の精霊に逢って見せよ。


さすれば、そなたのつがいの錬金の秘法を継承する者も更なる高みへと昇るかもしれん。


過去の、あ奴のようにな。』


それだけ言うと、精霊ドライアドは姿を消した。


「はあぁぁぁぁ……。


言いたい事は山ほど在るが……。」


ビートが額に手を当てながら言う。


「そうだな。 取り合えず帰るとするか……。」


疲れ果てた様子で言うベルン。


「あの、アベルくんがねぇ……。もうね、考えが纏まりきらない……。」


とシャノン。


「良いものを見させていただきました……。色んな意味で。」


ヒルトが。


「それじゃ、帰りましょうか。あはははは。」


「「「「はあぁあああ。」」」」


アベルの言葉に、溜め息で返す4人。

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