第19話 無駄に良いものつくっちゃいました

「フンフン、フフフン……。」


鼻歌を歌いながら料理をするアベル。


朝食は、ベーコンエッグと、玄米。それとチガン菜の御浸しと味噌汁。


普段は、パンにサラダ、スープと1品なのだが。


昨日、東方から来た錬金術師のエリス。


東方国と言えば、白米に味噌汁だろう。と勝手に考えが偏り。


こうして東方食。和食と言うのを作ってみた。


「おはよう。アベル。」


ルナが降りてきて挨拶をする。


「お早う御座います。アベルさん。」


「お早う。ルナ、エリスさん。」


「この匂いは、もしや、味噌汁ですか!?」


スンスン、と匂いを嗅いで言うエリス。


「ええ。朝市で見掛けたので、作ってみようかと思って。」


「こっちの大陸に来て、見掛けなかったので楽しみです。」


嬉しそうな表情で言うエリス。


「それは良かった。米も手に入りましたので。楽しみにしててください。」


「有り難い。」


「コメ?ミソシル?」


不思議そうに尋ねるルナ。


「ルナは、食した事はないのか?」


「うん。無い。美味しいの?」


「東方大陸では、ほとんど毎食出てくる主食が米で。


米と同じくらいに、東方大陸で付いてくるスープが味噌汁だ。


私も、生まれは東方大陸ではないけど。


東方に住み着いてからは大好きになったぞ。」


「エリスって、東方大陸出身じゃなかったんだ?」


「うん。生まれは西方大陸だよ。


母が東方大陸の出身で。10年前に東方大陸に移住したんだ。


私は、母に似たので、髪と瞳は黒色だけどね。」


「西方大陸には行かないの?」


「そうだね。西方大陸の錬金術式にも興味があるから。


期会が在ればかな。」


「はい。お待たせ。」


ご飯と味噌汁を盆に乗せて、テーブルまで持ってくると、ルナとエリスの前に置く。


最後に席に座りながら。


「ご飯の御代わりもあるから、遠慮しないで言ってくれよ。」


「それじゃ。」


「「「命を捧げてくれた食材に感謝を。 いただきますっ!」」」


「うん! 美味しいっ!」


アベルが作ったものだからか、迷いも見せず初めての味噌汁を口にするルナ。


「うん。味噌汁が染みるうぅ~。」


この大陸に来て故郷の味に表情が緩むエリス。


「ご満足、いただけたようで。作った俺としても嬉しいよ。」


「アベル! たまにで良いから! ご飯と味噌汁が食べたい!」


「了解。」


「あとは、醤油も有れば文句ないのだけど。」


塩で味を調えた、ベーコンエッグを食べて言うエリス。


「「ショウユ?」」


「うん……うん? そっか!無かったら作ればいいんだっ!」



 * * * *



と言う訳で。朝食後から、醤油作りに勤しんでいるルナとエリス。


大きな作業台の上には、これでもかっ!っと言わんばかりの、醤油モドキがギッシリと並べられている。


そう、醤油モドキ。


ルナとエリスの2人で、それぞれ、いろんな材料を使い試行錯誤して錬金しているが。


出来上がるのは、醤油モドキ 品質:低


そんな醤油モドキの瓶が40個。


「だめ……。他に、思いつかない……。」


ルナが、並べられた醤油モドキの瓶の群れを見ながら言う。


「私も……。醤油って、こんなに難しかったんだ……。


向こうじゃ、普通に商店に並んでたから。もっと、簡単にできるもんだと思ってたのに……。」


「材料も尽きて来たし。最後に……。」


そう言って、米・中和剤緑・大豆・トウモロコシ・蒸留水と入れて行く。


「あと試してないのは……。アベル?それは?」


「ん?これ?スライムのコアだけど。」


「スライムコア?何に使うの?」


「スライムコアってさ、匂いとかを消臭してくれるんだよね。


だから、玄関先とか、トイレ周りとかに置いておくと。消臭効果で匂いが気に為らなくなるんだよ……。ルナ……?」


ルナの笑顔が不気味に変化して、俺の手に持つスライムコアに注がれる。


「ルナ!まてっ!スライムコアだぞ! 食いもんじゃなんだからなっ!」


「錬金すれば大丈夫?だよぉ~?」


「おいっ!言ってる本人が疑問形になってるぞっ!


エリスっ!何とか言ってくれっ!」


「あはは。錬金したら、別の物に為るから大丈夫っ!?」


「お前もかっ!」


2人とも、失敗し過ぎて、何やらテンションが、変な方向に向かってしまっている。


ガシっ!


「えっ?」


いつの間にか、エリスが背後に回り込んで、アベルを羽交い絞めにする。


「ルナッ!」


「あいよっ! えいっ!」


俺の手から、スライムコアを引ったくり、錬金釜の中にトポーンっと入れる。


「掻っき回せ!あっほら!掻っき回せ!よいさっ!」


変になったテンションのまま、錬金釜を掻き回すルナ。


「どうなっても知らないからな……。」


俺も諦めて、錬金釜を楽しそうに? 掻き回すルナを見守る。


いつもなら光る錬金釜が、ボフンと鈍い音を立てて煙を吹きだす。


「ほらみろ。言わんこっちゃない。」


失敗したと思って俺が言うと。


「エリス……。」


出来上がった物を見てルナが固まる。


【絶品醤油:品質・絶】


なにやら、トンデモないのが出来てしまったらしい……。



 * * * *



2924・9・4 作者熱中症で体調不良のために。


今日の更新は1話だけで <(_ _)>


【ハート良いね】、有難う御座います<(_ _)>


読んでくださっている、読者様の【ほぼ、全員がハート良いね】毎話にくださってるのが励みになります♪

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