第20話 勘違いされちゃいました

「ガアアア!」


襲い来る、スカルウルフの攻撃を躱して、側面から頭部めがけてメイスを振り下ろす。


「ギャッ!」


メイスが頭部に当たって、スカルウルフの頭部が破壊され動かなくなる。


「他は…。もう、終わってる…。」


2匹目のスカルウルフを倒し終えて、他のメンバーの加勢に行こうとしたのだが。


10匹近くいた、スカルウルフの群れは、すでに殲滅されていた。


★スカルウルフ:魔物モンスター

 狼型の魔物モンスターで、肉は無く骨だけで活動する魔物モンスター



「アベル。怪我はないか?」


アベルに近寄りながら、ビートが声を掛けてくる。


「はい。大丈夫です。」


ビートに返事を返すアベル。


「しっかし、あのアベルがねえ。」


アベルを見て言ったのは、血盟クラン英華の剣の剣士ベルン。


「ほんと。なんで、もっと早く職業ジョブの覚醒してくれなかったのよ。今からでも、戻ってこない?」


同じく血盟クラン英華の剣の魔術師メイジのシャノンが言う。


「そう言ってやるな。アベルの追放を止められなかった時点で、俺たちも他の奴らと同じだ。


戻ってきたとしても、アベルへの風当たりが強くなるだけだろう。」


血盟クラン英華の剣。回復職ヒーラーのヒルトが言う。


いま、アベル達は、シグルートから歩いて2日の所にある。


妖精の森に来ている。


アベルの目的は、ルナとエリスに頼まれた錬金素材集め。


血盟クラン英華の剣のメンバーは、大陸商業組合プラントクエストの素材集めの為に。



大陸商業組合プラントで、アベルが妖精の森に行きたいのだが。


流石に1人では、野営も兼ねた素材集めは難しく。


どうしたものかと思案していたら。


血盟クラン英華の剣のビート達が、妖精の森にクエストで行くことを聞いたので。


ダメ元で、理由を話して、同行させてくれないかと頼んでみた。


そしたら、意外にも、あっさりと同行を許可してくれた。


そして、2日の野営を済まして。本日3日目からクエストの素材集めに入ったのだった。


「あ~~!しかし!本当に勿体ないっ!


自衛も出来て。容量が小さいとはいえマジックポーチ持ち。


そこに加えて、野営時の料理も出来る人材!


よしっ!私専用の雇われに為りなさいっ!」


「こら。シャノン。 無茶を言うな。 アベルが困ってるだろうが。」


「だって、団長~~。マジ有能すぎの物件だよぉ~。」


ビートの言葉に、なおも食らいつくシャノン。


「何等級になったんだ。アベル。」


「5日前に、7等級に昇格しました。ベルンさん。」


「何度も言ってるが。クエスト中は、呼び捨てにしろ。


戦闘中の、いざって時に、呼び捨てに出来ない時間が生死を分ける時が在る。分かったな。」


「はい。注意……。分かったよベルン。」


「それで良い。」


倒したスカルウルフの残骸を、アベルが回収していると。


「しっかし、変わってんな。クエスト報酬は要らないから。


倒した、魔物モンスターの残骸を集めさせて欲しいなんて。」


ベルンが、マジックポーチに回収しているアベルに言うと。


「ルナ達の錬金の素材になるんです。


僕にとっては、クエスト報酬よりも有り難いんですよ。」


「確か、2号2人目の嫁さんも出来たんだったよね?」


シャノンが爆弾を投下する。


「はっ!?2号さん!?何それっ!?」


アベルが驚きながら言うと。


「あれ? 街じゃ、ちょっとした噂になってるよ。


アベルが、新しい嫁さんを取ったって。」


「なんで!そんな噂になってんですかっ!?」


「そりゃ、3人で仲良く暮らしてりゃ。そう思われても不思議じゃないよね?」


そう言って、ベルンとヒルトに視線を向ける。


「俺も、そう思ってた。」


「すまん。俺もだ。」


ベルンとヒルトが言うと。


アベルが、縋るようにビートに視線を向けると。


「悪い。俺もだ。」


最後のスカルウルフの残骸を回収しながら。


「終わりました。時間を取らせてすいませんでした……。」


そう言って歩き出すが。


「俺は、そんな風に見られてたのか……。」


などと、小さな声でブツブツ言っていた。




 * * * *



この大陸では、一夫多妻も、一妻多夫も認められている。


と言うか。教会で式を申請しなくても、夫婦を名乗っていればOKと言う、割とカオスな状態です(笑)


養える財力さえ有れば、後は当人たちの裁量で、仲良く出来るか出来ないかだけの問題なのです。


ただし、作中でも書いていますが。 市民権の無い人たちが多いので。


結婚するのは自由なのですが。


市民権が無いと、家も買えないし、家を借りる事すら難しいと言うのが現実です。


市民権が有れば、街の役所に届を出して登録してもらい。


その街での戸籍を獲得できます。


市民権の無い人は、街の住人ではなく、出稼ぎに来ていると言う扱いだと思ってください。


今のアベル達の状況は。


結婚はしてるけど、市民権は無く。


教会庇護のもと、教会内の敷地の家を借りていると言う状況です。


なお市民権は、お金で買う事が可能です。


1人に付き、大金貨1枚で市民権を購入。


戸籍を登録されることで、街に税金を納める義務が発生。


一般の市民なら、年収は金貨2枚~3枚くらいなので。


税金は、年に銀貨2枚~3枚くらい。 約十分の一 が税金徴収。


商売経営者は、一応は帳簿を付けていますが。


かなりのザル帳簿です。


まぁ、領主側としては。 ちゃんと税金を納めてくれてさえいれば。


街の治安維持(街を囲む防壁。街の中の巡回兵士。防壁と門の衛兵たち。)に回す資金がとどこおってさえしなければ良いと言う(笑)。


もちろん、市民権を持っていれば、何かの犯罪や揉め事に巻き込まれたときは、優先的に保護がされやすくなります。


魔物モンスターが居て、野党とかも徘徊する世界では安全を金で買うと言う事に直結するんです。

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