第12話 家が建っちゃいました

約2週間。


2日ほど遅れたが、アントワネリーが教会に姿を見せた。


そして、教会の裏の製作場ファクトリーを見て微動だにせずに固まっていた。


それも其の筈。


目の前には、古びれた家ではなく。


超立派な家が在ったのだから、驚くなと言う方が無理である。


恐々と、ドアをノックするアントワネリー。


「はーい。」


中からは、ルナの声が聞こえた。


ドアが開き、ルナの視線が、アントワネリーを捉える。


「アンネ!お帰りっ!」


嬉しそうな笑顔で迎えるルナ。


「中に入って。」


そう言って、アントワネリーの手を取り、製作場ファクトリーの中に入っていく。


中には、アベルにコーウェル神父。


それと、ドワーフ達が5人。


ソファーに腰かけて寛いでいた。


「そこに座ってて。飲み物を持ってくるね。」


そう言って、キッチンに向かうルナ。


「コーウェル神父……。」


ソファーに腰かけて、コーウェル神父に話そうとするが。


何から聞いて良いのか、思考が纏まりきらない。


「ははは。 混乱しますよね。」


苦笑交じりに言うコーウェル神父。


「するなと言う方が無理だと思うが……。


まあ、ドワーフ達らを見たら、納得すると言うか、出来たというか。しなざるを経ない。」


ドワーフ。亜人種。


物作りが大好きな種族で、鍛冶鉄鋼、細工に建築。


とにかく、物を作ると言う事柄に関しては。右に出る者が居ないと言っても過言ではない。


基本頑固だが、それは職人気質が前に出ているだけで。


自分が認めた者には、とことん甘くなる。


なぜ、製作場ファクトリーが新築になっているのか。


話は、アントワネリーが出て行った翌日に為る。



 * * * *



アントワネリーが出て行った後に、ルナの錬金スキルが新たに解放。


鉱石を採取できれば、新たにインゴットを製作可能に。


もちろん、ルナの御願いで、アベルの家事手伝いが発動。


つるはしを持って、近くの岩場に鉱石採取に向かう。


普通なら、素人が鉱石採掘など出来るはずがない。


出来ない筈なのだが、ここでもアベルの職業ジョブスキル家事手伝いが新たなスキルを開放。


【採掘】スキル。


これが解放された事で、アベルは岩場のどこを掘れば鉱石採取できるのが分かる様になる。


既に解放されているスキル。身体強化と物質硬貨を使って岩場を掘り。


30キロ以上の原石を持ち帰る。


それを繰り返す事20回。


時間にして、5時間30分。


終わった頃には、夜の19時を回っていた。


その間に、ルナは延々と、インゴットの制作を行っていた。


一番最初のインゴットの品質は粗悪だった。


数をこなす内に、高品質の鉄のインゴット4個(1個3キロ)。


中品質のインゴットが3個。低品質が2個。粗悪が1個。


アベルが合計600キロ近い原石から取れた鉄のインゴット30キロ。


少ないと思うなかれ。


これだけ取れれば上等な方だ。


原石の中に含まれている、鉄の含有量が少なくなるのは必然。


そして、翌日。


出来たインゴットを持って、コーウェル神父紹介の鍛冶屋に出向く。


ドワーフの職人が経営している店で、アベルの剣を作って貰おうと思ったからだ。


そして、2人がドワーフ達に、鉄のインゴットを渡した事で大騒ぎになる。


「なんじゃぁ、こりゃあああ!」


「こんなインゴット初めて見たぞいっ!」


「混じりっけなし鉄のインゴットだとっ!」


「どこで手に入れたんだっ!」


「はあっ! お前さんが作っただとっ!」


結果。製作場ファクトリーに招待して、アベルに頼んで、鉱石を採掘してきてもらい。


ドワーフ達の前で錬金術師アルケミストで鉄のインゴットを製作。


言わずがもな。 ドワーフ達5人が、空いた口が塞がらない状態で固まったのは仕方がない。


もう、そこからは大騒ぎ。


鉱山経営者を紹介するから、錬金で作ったインゴットを優先的にドワーフ達(アイザック。ジョシュア。マンゼル。ガイゼル。ランゼル。)に降ろす事で、家を建て替えてもいいと言い出した。


これには、コーウェル神父が飛びついた。


家の建て替えと引き換えに、高品質の鉄のインゴット50個。


と言う条件で引き受けてもらった。


「勝手に話を進めてしまって申し訳ない。」


とコーウェル神父に謝られてしまったので。


「気にしないでください。元々は、教会の物なので。」


と言っておいた。


その間の宿代は、アイザックさん達が出してくれる。


なんでも、「こんな貴重なインゴットを用意してくれるなら安い位だっ!」と言う事らしい。


もう、そこからは正に電光石火と言う速さで。


その日の内に、道具と資材を取りに戻ったかと思えば。


馬車3台に資材を満載して。


錬金釜を仮置きする小屋(ちょっとした家ですよコレ)を建ててしまい。


翌日には1日で家を解体して更地にしてしまった。


更に2日目で家の土台を完成させて。


そこから7日かけて家を完成。


更に2日かけて内装を整えて。


昨日、錬金釜を家の中に設置して、必要なものを並び終えた。


もうね、7日で家が1軒建つって。どうなの?って思ったけど。


ドワーフの技術と魔術を使えば、これくらいは【普通】なのだそうだ。


出来上がった家は。 1階にキッチンとリビングを共有する形で。


錬金釜の置いて在る部屋はリビングの隣で。その奥に素材部屋。


2階に上がる、階段奥の通路にトイレと風呂場。


2階には。私たち夫婦の寝室と書斎。客部屋が5つ。


ちょっとした豪邸なんですけど……。


アイザックさん達いわく。「先行投資だっ!珍しいインゴットが出来たら真っ先に持ってこいっ!」との事だ。


確かに、未開放のインゴット欄が在るのだけど。

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