第13話 錫杖を作ちゃいました

「そうだった。毎回驚きが先立って、依頼を忘れるとこだった。


コーウェル神父。依頼のトレントの枝だ。」


そう言って、腰のマジックポーチから、トレントの枝を出して手渡す。


トレントの枝は、長さ1メートルちょっと。太さは直径8センチ。


「長さ的には、それ位だと思うんだが。不満なら他に在るけど。」


「いえ。これで十分です。 それでは、報酬の金貨4枚(約400万)を。」


「確かに受け取った。」


(錫杖。錫杖。)


ルナが、そのトレントの枝を見て錫杖の事を考えていた時だった。


スキル解放の、いつもの感覚が流れ込んできた。


急いで、スキルボードを確認。


「コーウェル神父! 私に作らせてくださいっ!」


「え?」


「トレントの枝を見てたら、スキルが解放されたんです!


今なら、錫杖を作る事が出来ます!」


「おおっ! 是非ともっ!」


「ちょっと待ってくださいね。材料の確認をっと……。」


【聖樹の錫杖】


材料 トレントの枝。中和剤:赤、黄、緑。 鉄のインゴット。シルク・スパイダーの糸。


「あうぅぅぅ。」


「どうかしましたか?」


「素材のシルク・スパイダーの糸と言うのが足りなくて。」


「なら、俺が。」


取ってくる。とアベルが言いかけた所で。


「待てっ! シルク・スパイダーの糸なら持ってるぞ。


ちょうど、トレント討伐の時に、シルク・スパイダーも討伐できたからな。」


そう言って、シルク・スパイダーの糸を、マジックポーチから取り出す。


「別料金で売っていただけますか?」


「良いぞ。」


「銀貨5枚で?」


「それで良い。」


そう言って、コーウェル神父にシルク・スパイダーの糸を渡し銀貨を貰う。


コーウェル神父から、シルク・スパイダーの糸を受け取り。錬金釜に向かって材料を入れて掻き回す。


掻き回す。


掻き回す。


いつもなら、出来上がっているはずの時間なのだが……。


無心に掻き回す。


時間にして5分ほどだろうか。


ようやく、錬金釜が光る。


宙に浮かぶ錫杖を手に取る。


【聖樹の錫杖】品質:高 

       特殊効果:魔力回復速度上昇(大)


ルナが、情報を伝えると。


「ルナさん! 凄すぎますよっ!」


興奮するコーウェル神父。


「ちょ!何だよっ! その付属効果ってのはっ!」


驚愕の表情で言うアイザック。


「ルナっ! アタシのも作ってくれっ!」


アントワネリー。



  ★マジックポーチ★

ダンジョン探索で、宝箱の中から入手できる魔法のポーチ。

 非常に珍しいレアアイテムで。

許容量の範囲でなら、どんなに大きな物でも収納できる。

 ポーチの中に入った物の重さとかは感じなくなり。

また、時間経過が多少遅くなるのか、生モノの日持ちも良くなる。


  ★トレント★

木の姿をした魔物で、その身体は貴重な木材となる。

 トレントの枝は、樫の木のように固く燃えにくく。

魔力伝達効果も高い。


  ★シルク・スパイダーの糸★

シルク・スパイダーと言う魔物から採取できる糸。

 シルク・スパイダーは、全長1メートル前後の蜘蛛で、主に巣にかかった獲物を捕食する。

 基本、攻撃的ではないが、巣を壊されると怒って好戦的になる。

シルク・スパイダーから取れる糸は高級品で、裁縫などで服飾に用いると魔力的効果を高めてくれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る