第11話 貰っちゃいました

教会の裏の家。


アベルとルナが住む家なのだが。


製作場ファクトリー】と呼ぶ事になった。


食事も終えて、製作場ファクトリーで、まったり茶を飲んでいると。


「っとと! コーウェル神父。 アタシに要件が在ったんだろう?」


アントワネリーが言う。


「おっと。 完全に忘れていました。


アナタに依頼するんでした。」


どうやら、アントワネリーに依頼をするはずだったのだが。


ルナの錬金術師アルケミストの方に意識を持って行かれて、自分の依頼を出すのを忘れていたようだ。


「取って来て欲しい物は。 トレントの枝。


錫杖に為りそうな大きさを2つ。」


「2つ? 杖を作るのなら、1つでも良いんじゃ?」


「【ついで】、ですから。」


含みを持たせて言うコーウェル神父。


「ついでねえ~。」


そう言って、ニヤっと笑みで返すアントワネリー。


「任せて置いて。良いのを取って来てやるから。


そう言や、参考までに、今まで使てた錫杖を見せて貰っても?」


「ああ、それなら、そこに。」


そう言って、コーウェル神父が指さした方に目を向けると。


錬金釜の横に立てかけてある棒だった。


「ちょっとっ! アンタ!錫杖を何て事に使ってんだいっ!」


「いや、どうせ、古くなって使ってなかったし。新しいのを作ればいいかと思いましてね。」


「あははは。 それでは、お願いできますか?」


「了解。引き受けた。」


「期間はどれくらいかかりそうで?」


「行きで4日。探索と討伐で4日。帰りで4日の。12日って所かな。」


「分かりました。」


「ん。それじゃ、アタシはこれで。」


壊れたドアの前で立ち止まり、アベルの方を見る。


「アベル。また、食べさせてくれよ。」


「え?」


「アベルの料理。 納品する時に来るからな。 頼むぞ。」


「はいっ! 腕を磨いておきますっ!」


「じゃ、行ってくる。」


「行ってらっしゃい。アンネ。」


アントワネリーが後ろ手に、手を振りながら去っていく。


「あの、コーウェル神父。」


ルナが、錬金釜の横に立てかけてあった、錫杖を手にコーウェル神父に話しかける。


「知らずとは言え。大事な祭具を使ってしまい。 申し訳ありませんでした。」


深々と頭を下げながら、両手で錫杖をコーウェル神父の方に差し出す。


「顔を上げてください。


先ほども言いましたが、15年以上も使っていたので、祭具としての効果はほとんど残っていませんから。


形だけで使っていただけに過ぎませんので。


そんな物でも良いなら、ルナさんに使ってもらって欲しいのですが。


ダメでしょうか?」


「そんなっ! 本当に貰ってもいいんですか!?」


「はい。構いませんよ。 どうせ、新しいのが出来たら、処分するしかないので。」


「有難う御座いますっ! 大事に使わせていただきますっ!」

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