第9話 錬金しちゃいました

小一時間程かけて、ミドラの花。タリスの花。シノメの花を30個づつ確保してきた。


背中の籠の中は、花でいっぱいだった。


教会の裏の家に戻り、錬金釜の前に籠を降ろす。


「これだけ有れば大丈夫か?」


「はい。有り難うアベル。」


アベルが採取している間に、ルナは蒸留水を作っていた。


「普通の水と、どう違うんだ?」


桶に入った蒸留水を見てアベルが言う。


「不純物が取り除かれた水ですね。」


花を仕分けしている、ルナに代わって、コーウェル神父が答える。


「へえ~。」


「ルナ。買ってきたぞ。」


アントワネリーが、手に籠を下げて入ってくる。


「有り難う。アンネ。」


蒸留水を錬金した時に、錬金が終わると同時に、出来上がった蒸留水が錬金釜の上に出現したかと思うと。


錬金釜を避けるようにして、周囲に飛び散ってしまったのだ。


お陰で、床はびしょ濡れに。


液体を錬金する時には、液体を淹れる容器も、釜の中に入れて置かないといけないと学んだのであった。


アントワネリーが持ってきたのは、陶器の小瓶。


高さ5センチほど。直径は3センチほど。


その小瓶を、40個買ってきたのだ。


「ルナさん。ルナさん。」


期待感いっぱいの表情で、コーウェル神父がルナをかす。


スキルを使う本人よりも、ワクワク感が溢れている。


「分かってますって。 早速、中和剤を作ってみますね。」


苦笑交じりに、小瓶とミドラの花と蒸留水を入れたコップを手に持ち。


錬金釜の前に立ち、小瓶。ミドラの花。コップの中の蒸留水を錬金釜の中に入れる。


そして、錬金釜の横に立てかけてあった木の棒を釜に突っ込み。


魔力を流し込みながら木の棒で掻き回す。


グ~ルグル。グ~ルグル。グールグル。グ~ルグル。


時間にして3分。


すると、錬金釜が少しだけ光る。


と、同時に。錬金釜の上に小瓶が現れる。


その光景を見たアベルは(どういう原理?)。と目を丸くして驚いていた。

錬金釜の上の小瓶をルナが手に取る。


【中和剤赤 品質:低】


出来上がった中和剤赤の品質を言い、手に取り喜ぶルナだが。


「蒸留水の時は、品質が高だったのにな。」


アントワネリーが言う。


「う~ん。恐らく、ルナさんのイメージの差異かと……。」


「イメージ?」


「ええ。私も、アントワネリーさんも。と言うより。


魔法を使う人なら誰でもそうですが。


魔法の効果をイメージします。


回復魔法なら、傷が治るイメージを。


毒を抜くなら、毒を抜くイメージを。


攻撃魔法なら、どんな攻撃種類の魔法を放つのか。


火なら火のイメージ。水なら水のイメージ。


それを、どんな形で放つのか。


火の玉にするのか、広範囲に爆発させるのか。


ですね、アントワネリーさん。」


「ああ。魔法を形にするイメージが明確でないと、同じ魔法を使っても威力に天と地ほどのが出るからな。


こんなふうに。」


左手の指に小さな炎と、右手の指には大きめの炎を出すアントワネリー。


「たぶん、ルナさんが、初めて中和剤と言うのを作ったので、イメージが固まっていなかったのでしょう。


ルナさん。もう一度、中和剤赤を作ってみてください。」


コーウェル神父に言われて、錬金釜の前に立ち、材料を入れて錬金釜の中身を掻き回す。


(中和剤赤。中和剤赤。)


さっき作った。中和剤赤の事を明確にイメージしながら。


錬金釜の上に小瓶が。


手に取り確認する。


【中和剤赤 品質:高】


「できたっ!」


「「「おおおおおっ!」」」

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