第10話 料理しちゃいました

それからも、中和剤黄。中和剤緑。とドンドン作っていくと。


新たに、ポーションのスキルが解放された。


ポーションの材料は、薬草だったので、コーウェル神父が教会の在庫で持っていた薬草を使い制作。


【回復ポーション 品質:極上】


回復ポーションに関しては、血盟クランに居た頃から目にしていたので、極上品質の回復ポーションが出来た。


どのくらいの効果が出るのか判らないので、とりあえずアントワネリーに試供として5本渡した。


お金を払おうとしたが。効果のほどが不明なので、効果情報を教えると言う事で無料で押し付けた。


錬金に夢中になってしまったせいで。気が付くと、すでに昼を過ぎていた。


ルナに、頼んで貰う事で、アベルの職業ジョブスキルが発動して、買い物を済ませて戻ってきて、教会の台所を借りて、早速調理に取り掛かる。


もうね。自分でも驚くくらいの手際の良さで調理できる。


野菜たっぷりゴロゴロスープと、鶏肉の香草焼き。


それと黒パン。


「命を捧げてくれた食材に感謝を。」


「「「命を捧げてくれた食材に感謝を。」」」


「「「「いただきます。」」」」


食事を取れる、感謝の言葉を述べて食事を口に入れる。


「「「!!!」」」


「どうだ? 結構うまく出来たと思うんだが?」


「うまいっ! うちの血盟クランの調理職業ジョブ持ちと同じくらいには美味いぞっ!」


アントワネリーが言う。


「はい。本当に美味しいですよ。」


ルナも褒め称える。


「私も、美味しいと思います。 前に居た調理職業ジョブのシスターと同じくらいの腕前だと。」


コーウェル神父。


みんなの言葉に、頬が緩みまくるアベル。


今日まで、全くと言って自分の職業ジョブスキル【家事手伝い】が発揮されていなかった。


その状態でも、必死に諦めずに努力してきた。


それでも、出された結果は。【普通】。


良くも悪くもなく普通。


しかし、ルナと出会って結婚した事で、職業ジョブスキルが発動して作った料理。


調理職業ジョブスキル持ちと遜色ないと言われて、嬉しくないはずがないっ!


「っつ!」


気が付けば、アベルの瞳から、涙がこぼれていた。


「アベル……。」


何と声を掛ければいいのだろう。


アベルを気遣うも、ルナの口からは言葉が続かない。


同じく似た境遇だったルナだからこそ、アベルの気持ちの奥底まで理解できるのだ。


言葉じゃない。


じゃあ、何なのかと言われれば。哀れみでも、同情でもなく。


認める事だけ。


それだけ。


ましてや、職業ジョブの恩恵を受けて居たアントワネリーや、コーウェル神父なら、なおさらかける言葉が出てこない。


何を言った所で、職業ジョブスキルの恩恵を受けて来た自分たちでは、アベルとルナの気持ちは分かった気には為っても。


完全に理解する事は出来ないのだから。


「くっ!ち、ちがうんだっ! 嬉しくてっ! 嬉しくてさっ!」


服の袖で、涙をぬぐうアベル。


「アベルさん。 是非とも、また作ってくれませんか?アベルさんの料理。」


コーウェル神父が言う。


流石は年の功と言うべきなのか。最年長のコーウェル神父。


たぶん、アベルが一番欲しいと思う言葉を言ってくれた。


「は、はいっ! 有り難う御座いますっ!」


「お礼を言うのは、私の方なんですが!?」


「ぷっ。あはは。」


笑うアベル。


それを見て安心する、ルナとアントワネリー。

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