第7話 再開しちゃいました

「ルナさん! 早速、錬金釜を作ってみませんか!」


「えっ!?」


唐突な、コーウェル神父の提案に驚くアベルとルナ。


「作るって。錬金釜をですか?」


「そうです! 祝辞の水は、私が用意できます!」


「ちょっ!ちょっと待ってくださいっ!」


「?」


どうかしたのか?と言わんばかりの表情のコーウェル神父。


「錬金釜って、多分ですが、相当大きいものですよ?」


「はぁ。」


「作ってしまうと、そう簡単に、ホイホイと移動できないくらい大きい釜だと思います。」


「ええ。」


「で、私たちは宿暮らしで、拠点が在りません。


家を借りようにも、市民権が無いので、家も借りれませんし。買う事も出来ません。」


「ああっ!」


納得したと言うように、手の平をポンっと叩く。


「でしたら、こうしましょう! 少し古くて痛みが在りますが。


教会の裏にある、2階建て(2DK)の空き屋を提供します。


家賃は、月に小銀貨2枚(約2万円)でいかがですか?」


「「借りますっ!!」」


余りの安さに飛びついてしまった。



 * * * *



目の前には、子供がスッポリ入りそうな大きな釜。


中には、桶10杯分の祝辞された水。


あとは、魔力を込めるんだけど。


「魔力が足りない……。」


そう、錬金釜にする為の魔力が足りないのだ。


「参りましたねぇ~……。」


顎に手を当てて言うコーウェル神父。


「だな……。」


腕を組んで言うアベル。


自分だけの魔力じゃ足りないので、コーウェル神父と、アベルの魔力も借りたのだが。 それでも足りない。


「あと、どれくらい足りなさそうですか?」


コーウェル神父が聞く。


「多分。コーウェル神父さんと、同じくらいの魔力量が在ればと……。」


「と、為ると。私と同じ5級か。6級くらいのライセンス持ちの魔法使いか、聖職者ですか。」


意外にライセンスの等級が高かったコーウェル神父。


「コーウェル神父! 居ないのかっ!?」


その時、礼拝堂の方から声が聞こえた。


礼拝堂を抜けて、裏の家に女性が入ってきた。


「おっ!居るんなら……。ルナ?」


アントワネリーだった。


「アンネ!?」


「ルナ!? なんで此処に?」


「おおっ!アントワネリーさん! ちょうど良い所にっ! 是非とも手伝ってくださいっ!」


「まてっ!? どういう状況なんだ?」


興奮して、説明も無しに、アントワネリーに助力を乞うコーウェル神父。


「……。という訳でして。」


ここまでの経緯を、掻い摘んでルナが説明する。


「良かったなルナ。本当に良かった……。」


ルナを抱きしめながら、ボロボロ涙を流しながら言うアントワネリー。


「アンネ……。」


ルナも、アントワネリーを抱きしめ返す。


姉御肌で、面倒見の良いアントワネリー。


本当は、ルナを追放などしたくはなかった。


だけど、血盟クランの他のメンバーと、ルナとを天秤に掛けると。


ルナの方に、天秤を傾ける事は出来なかった。


「アベルって言ったな。」


「はい。」


「ルナの事を大事にしてやってくれ。」


「もちろんです。苦労は掛けるかも知れないですけど。


裏切って悲しませるような事だけはしないつもりです。」


「お前……。そこは、苦労は掛けないって言えよ。」


「すいません。 俺も、結婚するまでは、無能職業ジョブスキルだったんで。ハハハ……。」


「まあ、良い。 で、結局アタシは、何をすればいいんだ?」


「私たちと一緒に、この釜に魔力を注いで欲しいのです。」


釜を指さし言うコーウェル神父。


「任せとけっ! 全力で注いでやるさっ!」


「あはは……。お手柔らかにね。アンネ。」


乾いた笑い声を挙げるルナ。


「ルナ。アントワネリーさんて確か……。」


「うん。3等級だよ。」


((釜。大丈夫か?))

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