第6話 スキルが解放しちゃいました

ルナとの結婚をした直後。


何かが、身体の中に流れ込んでくる感覚が。


(これは?)


この感覚は、15歳の時に、職業ジョブスキルを授かった時の感覚に似ている?


何気に、スキルボードを出して見ると。


【結婚した事により。スキル解放条件が満たされました。】


と書かれていて。


今まで、見る事が出来なかった、スキルが解放されて見る事が出来るようになっていた。


「アベル?」


スキルボードを見て、固まっている俺に、ルナが声を掛ける。


「スキルボードが解放された……。」


「え?」


「スキルボード?」


驚き声のルナ。


不思議そうに言うコーウェル神父。


「結婚した事で、俺のスキルボードが解放されたんだっ!」


「ええええっ!」


「?」


驚愕のルナ。


訳の判らないコーウェル神父。


「結婚が! 俺のスキルボードの解放条件だったんだっ!」


ルナを思いっきり抱きしめるアベル。


「アっ!アベルっ!ちょっと!」



 * * *



「成る程。そう言った理由でしたか。」


礼拝堂から、奥の小部屋に通されて。


俺たちは、今までの経緯をコーウェル神父に話した。


聞いた事も無い職業ジョブスキル。


家事手伝い。と、錬金術師アルケミスト


俺の職業ジョブスキル家事手伝いは、ルナと結婚する事で、ルナと家族と為った事で、本当の意味で家族と為り。


家事手伝いが解放された。


錬金術師アルケミスト……。錬金術師アルケミスト……。」


何かを思い出すように、コーウェル神父がブツブツと呟く。


「あっ! あああああっ! 思い出したっ!」


手の平を、ポンッと叩きながら言う。


「何か知ってるんですかっ!」


ルナが前のめりに為りながら聞く。


「知っていると言えば知っていますが。ルナさんの求めている情報かどうかは保証できませんが。」


「お願いしますっ! 何でも良いんですっ! 手掛かりすら無いんですっ!」


「本当に期待はしないでくださいよ。


そうですねえ。 確か、10年ほど昔。


このシグルートに立ち寄った、遥か西方の大陸の、吟遊詩人が語った歌の中に。


錬金術師アルケミストの語りが。」



その語りでは、錬金術師アルケミストは、自分用の錬金釜と言うのを持っているらしい。


その錬金釜の中に、必要な素材を入れて、魔力を込めて掻き回すと。


あら不思議。 入れた素材とは、全く関係のない、別の物の出来上がり。


と言う語りだったらしい。


語りを聞く限りでは、ルナの職業ジョブスキルと似ていると思う。


が。肝心の錬金釜ってのがわからない。


「錬金釜……。錬金釜……。」


ルナが、ブツブツ呟きながら連呼する。


「えっ?」


ルナが、慌ててスキルボードを開く。


「う……そ……。」


「ルナ?」


「スキルボードが解放されてる……。」


「「ええっ!?」」


俺と、コーウェル神父が驚く。


「錬金構想が纏まった為に、解放条件を満たしましたって。」


「ほうほう。」


何やら、珍しい者でも見るように言うコーウェル神父。


実際に、かなり珍しいと思う。


俺も、ルナのケースも。


解放条件が特殊すぎる。


「ルナさん。お聞きしても?」


「はい。」


「解放されたと言う事は。 何かしらの錬金が可能になっていると?」


「はい。 解放されたスキルは、錬金釜の制作と表示されています。」


「必要スキルポイントは?」


「ゼロです。」


「解放していただいても?」


「してみます。」


そう言って、スキルボードの錬金釜の制作に触れる。


「鉄の大釜。 祝辞された水。 魔力。と表示されました。」


「質問ですがルナさん。


スキル解放の時に、ルナさんは、何を考えておりましたかな?」


「えっと。 錬金釜って聞いたので。


大きな鍋みたいな釜と。 釜に入れるなら水? 最後に魔力を込めるって言ってたので。」


「いやいや。 私も、この年で新しい職業ジョブスキルの開化の瞬間に立ち会えるとは。


何と言う幸運っ! 何と言う巡り合わせっ!」


そう言って、祈りのポーズを取るコーウェル神父。


「お、大袈裟ですよ。コーウェル神父。」


「何を言うんですかっ!誰も持っていない職業ジョブスキルなんですよっ!


どう言った成長をするのか! 物凄く興味深いじゃありませんかっ!」

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