第3話 朝チュンしちゃいました

自分と同じような発言に、思わず声のした方に顔を向ける。


セミロングのオレンジの髪。 金色の瞳。


フチ無し眼鏡をかけ。体系はスレンダー。


相手も同じように、俺を見ていた。


お互いに、顔を合わせたまま苦笑いを。


「どうかしたの?」


声を掛けてきたのは、相手の女性からだった。


「まあね。ちょっと。働いていた血盟クランをクビになってね。


これからどうしようかと。」


「奇遇だね。私もなんだよ。」


「「ははは……。」」


2人で乾いた笑いを。


ぐう~~。


タイミング良くと言うか何というか。


俺の腹の虫が鳴った。


「2人して、こんな場所で出会って失業中。


どう。失業した者同士で。失業記念食事会でも。」


「良いね。割り勘で良いなら。」


「そこはカッコ良く、俺が奢るから。じゃないの!?」


「失業して、明日からどうするか迷ってる俺に?」


「あははは。冗談よ。で、どうする?」


「割り勘で良いなら。これは譲れない。」


「あははっ! 決まり! 行こう。行こう!」


時刻は夕方。逢魔が時。


近くの飯処に入って2人で注文を頼む。


「出会いと!失業に!乾杯!」


「ぷっ。なんだよ。それ。」


店の隅のテーブル席で、エールが入ったジョッキを掲げて乾杯する。


「私はルナ。貴方は?」


「俺は、アベル。」


追加のエールを頼んで、飲み食いしながら、お互いの事を話す。


ルナも孤児で、俺とは違う地区の孤児院出身。


年は、俺と同じで18歳。


職業ジョブスキルは錬金術師アルケミスト


「錬金術師?聞いたことないな。


錬金術って、どんな職業ジョブスキルなんだ?」


「素材と、素材を融合させて。 全く別の物にできるスキルだと思う?」


「何で、疑問形なんだよ。」


「だって、戦闘で役に立たないから。パーティー組んで貰えないんだよっ!

パーティー組んで討伐も採取も出来ないから!


スキルビルドが育たないってのっ!


しかも!錬金術師って! 私が初めてらしのよっ!」


「ああぁ~~。うん。納得……。」


俺も、そうなんだが、スキルを鍛える為には、スキルに関連する行動をしないといけない。


剣術とかなら、剣を使って魔物を倒すとか。


鍛冶師なら、武器防具を作るとか。


調理なら、料理を作るとか。


そうする事で、スキルポイントと言うのが貯まっていく。


貯まったスキルポイントを、自分にしか見る事が出来ない、スキルボードと言う不思議な半透明な板に触れてスキルを開放していく。


そして、俺も色々やってみた。


家事手伝いなんだから、洗濯に掃除。料理に裁縫。


帳簿付けに、血盟クラン仲間の子供の世話。


しかし。スキルポイントは増えなかった。


「ほ~んと。なんで、こんな職業ジョブスキルなんだろう……。」


「俺だって。そうさ。可もなく不可もなくって何だよってかんじだよ……。」


「「はああああ……。」」


2人揃って、大きく溜め息をつく。


「やめっ!やめっ! 気持ちを切り替えて!飲もうっ!」


ルナが声をあげて言う。


「だなっ! 飲もうっ!」



 * * * *



「ん……。」


朝日に照らされて目が覚める。


「つっ……。」


頭が痛い。 二日酔いか。


昨日、だいぶ飲んだしな。


体を起こして、ボーっとしながら部屋を見る。


「えっ!?」


隣には、ルナが寝ている。 裸で。


慌てて、布団をルナに掛ける。


そして、自分を確認する。


俺も裸だ。


「う……。ん……。」


ルナも目を覚ます。


「ん……? アベル?」


「えっと。おはよう?ルナ。」


「あ……れ……?」


事態が呑み込めていないらしい。


が。布団の中で、自分が何も身に着けてない事を自覚すると。


みるみる、顔が真っ赤になっていく。

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