第2話 解雇されちゃいました

「ルナ。貴方、今日で血盟クランから抜けて貰うから。」


「えっ?」


「えっ?じゃなくて。 今日で血盟クランをクビって事ね。」


血盟クラン剣美ケンビ


女性が9割で構成された女性主体の血盟クラン


1割の男性は、全員既婚者で子持ち。それが男性血盟クランメンバーの最低条件。しかも、全男性共通なのはフツメンかブサメン。


色恋で、女性血盟クランメンバーが揉めにくいように徹底している。


昼過ぎに、血盟クラン主のアントワネリーに、議題室に呼び出されたので来てみると。


私の入室を確認するなりの第一声がコレだった。


「クビ……。」


俯いていう私に、アントワネリーが追い打ちをかける。


「そうクビ。 解雇。 理由は分かるでしょ。


皆、血盟クランに対して何かしらに貢献しているの。


ルナ。貴方だけなの。貢献がゼロなのは。


流石に、もう面倒見切れないわ。 だからクビ。」


私の職業ジョブスキルは【錬金術師アルケミスト】。


素材と素材を融合させる事で、全く別の物にする事が出来る。


らしい……。


何故、疑問形なのかと言えば。


何と何を融合させれば良いのか判らないし。


そもそも、どうやって融合させれば良いのかも判らない。


何せ、図書館に通い詰めて、遥か西方の大陸に錬金術師が居て。


物と物とを融合させると言う記録しかないんだから。


お情けで入れてもらった血盟クラン剣美で、雑用と荷物持ちポーターとして置いて貰っていたけど。


3年働いていたけど、派生スキルすら生えてこなかった。


「うん……。 お世話に為りました。」


いつかは、来るだろうとは思ってはいた。


いたけど。実際に言われると、やっぱり来るものが在る。


「ウチも、慈善事業じゃないからね。


悪いとは思わない。 アンタに合って無かったと思ってね。」


良い方はキツイけど。アントワネリーの言ってる事は正しい。


小さい頃からの憧れの大陸商業組合プラントライセンスを取り。


私の人生これからだって夢をみてた。


現実は、甘くはなかった。


これが現実。


「退職金よ。 貰えるだけ有難いと思ってよね。」


そう言って、革袋をテーブルの上に置く。


「アンネ。 有難うね。」


そう言って、笑顔で言う。


頭を下げて、革袋を手に取り。 部屋を出て行く。



「ああああっ! もうっ! もうちょっと! 恨みなさいよっ!


せっかく!悪役ムード出してあげてんのにっ!」


少しだけ声量を上げて言うアントワネリー。


あの子ルナが、努力してたのは知っている。


誰も知らない、未知の職業ジョブスキルを手に入れて、誰にも教えを乞う事もできずに苦悩してたのも知っている。


自分に出来る範囲で庇ってきた。


だけども、それも限界だった。


かばえは、かばうほどに、贔屓ひいきだと他の血盟クランメンバーに言われ。


このままかばい建てすると、血盟クランの崩壊にも繋がりかねない。


ならば、せめて最後に自分が悪役に為れば、怒りでルナの矛先が私に向けば、人生放棄する事も無いだろうと思って演じたのだが。


「慣れない事はするもんじゃないね。 頑張りな。ルナ。」

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