第4話 我儘王女の糾弾
「お疲れ様でした」
自室へ戻った私をメイドのアリエルはいつも通りのぶっきらぼうな態度で出迎えた。
結局何事もなく私の2度目となる16歳の誕生日パーティは終わった。
その後、フィードル伯爵が私に近づくことはなく、専ら自らに近寄ってきた貴族令嬢の相手をしていた。
それどころか取り立てて不審な動きすら見せることはなかった。
あれは一体なんだったのだろうか?
悪い夢でも見たのだろうか?
しかし夢にしてはあまりにもリアリティが有りすぎた。
ますますわけがわからなくなった。
「ねぇ、アリエル。あなた私を殺したいと思ったことある?」
「はぁ?何ですか、藪から棒に」
アリエルは一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに呆れたような顔をして私を見た。
「私のこと、モノを知らない馬鹿王女とか思ってたりする?」
処刑される前、彼女は随分と私に罵声を吐いていた。
きっと今も心の中でそんなことを思っているのだろう。
あまり聞きたい話ではないが確認せずにはいられなかった。
「とうとうご自身でも気付かれましたか。でしたら、これからは気をつけてください」
私が脱いだパーティドレスを回収しながら、アリエルはさも当たり前のように言った。
やっぱりそうだ。
彼女は私のことを嫌っている。
処刑されたときと状況は同じだ。
ということはきっと今回も裏切るに違いない。
確信をもってアリエルに真実を訪ねた。
「あなたもしかしてフィードル伯爵と手を組んで、私達王族を殺そうとか企んでない?」
「はい?今なんて言いました?」
さすがのアリエルもその言葉を聞くと手を止めた。
「だからあなた、フィードル伯爵と組んでクーデターを起こそうとしているでしょ!私、知ってるんだから!」
観念しなさい。
鼻息を荒くしてアリエルの悪事を糾弾した。
「さっきから何を言っているんですか?私がそんなことするわけないじゃないですか。そもそも私は今のフィードル伯爵にお会いしたこともありません。話したこともない相手とどうやって手を組むって言うんですか?」
声色からして少し怒っているように感じた。
「それは……」
そう言い返されてしまうと言い返す言葉はなかった。
だってこれは単なる思い付きとその場の勢いだったのだからしょうがない。
しかし、彼女は確かにフィードル伯爵の関係者と通じていた。
燃え盛る城を背後に見た光景を私ははっきりと覚えていた。
「でも私は知ってるんだから!あなたは直接フィードル伯爵と会ったことはないのかもしれない。でも彼の部下だったり関係者とならあったことがあるに違いないわ。あなたがしらを切るというのなら、お父様にこのことを言いつけてやるんだから!覚悟しなさい!」
そう言って私は彼女を糾弾した。
「本当に…、何を言っているんですか…?」
私の糾弾にアリエルはひどく戸惑っているように見えた。
◇◇◇
その後、私はこの真実を父に伝えた。
父はひどく驚いたような顔をした。
すぐに関係者の取り調べが行われることとなった。
そしてアリエルは私の前から姿を消した。
風の噂によると、どうやら彼女は徹底的な取調べという名の酷い拷問を受けたらしい。
「私は何も知りません!本当なんです!信じてください!」
それでも最後まで王族に反旗を翻したことは一度もないと無実を主張を続けた。
しかし私は彼女の主張を信じなかった。
これと言った証拠もないのだが司法も私の主張を全面的に支持した。
結果、国家転覆を画策したとしてアリエルは処刑された。
結局あれは悪い夢だったんだ。
もし違ったとしても、裏切り者のアリエルを処分したことにより私たちの情報が反国王派に伝わることはなくなったに違いない。
運命は変わった。
私はそう信じ、これまで通りの自堕落な生活を謳歌することにした。
しかし最後の時は急にやって来た。
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