第3話 2度目の誕生日パーティ
「ユリア王女。お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうございます」
城では私の16歳の誕生日パーティが開かれていた。
会場にはこの国のすべての貴族が勢ぞろいしていた。
小太りで脂ぎった顔に悪趣味な服装をした中年男性と厚化粧と香水臭い中年女性が次々と祝福の声をかけに私の元にやって来た。
同じようなやり取りを何度も繰り返した。
その間私は常に笑みをたたえて感謝の言葉を返し続けるだけのロボットになっていた。
疲れた…。
パーティの開始からおよそ2時間。
いい加減うんざりしてきていた。
「きゃあ!素敵!」
何やら会場が急に騒がしくなった。
しかし挨拶に追われる私にはそんなことは別にどうでも良かった。
いつになったら終わるのだろう。
そんなことしか考えていなかった。
「ユリア王女。お誕生日おめでとうございます」
目の前に新たな貴族がやって来た。
今まで同じように私に祝福の言葉がかけられた。
このやり取りももう何度目になるだろう?
またやらないといけないのか……。
うんざりとしながらも、私は王女として満面の笑みを浮かべて返事を返すことにした。
「ありがとうございま……」
そこまで言ったところで次の言葉が出なかった。
目の前にいる貴族の顔を見た瞬間、心臓が止まりそうになった。
「どうかされましたか?」
私の様子を見て目の前の人物は一瞬怪訝な顔をした。
「あっ…、いえ。何でもありませんわ」
私は出来るだけ平然を装おうとした。
「遠いところをありがとうございます。フィードル伯爵」
挨拶に来たのは私を殺したフィードル伯爵だった。
すっかり忘れていた。
16歳の誕生パーティ。
当時はまったく気にもしていなかったのだが、確かにそこにフィードル伯爵も出席していた。
会場が騒がしかったのは、このイケメン貴族が到着したからだろう。
今まで冴えない中年ばかりを見てきたためか、私と年の近いイケメン男性は何倍にも増して魅力的に見えた。
しかし、今の私には彼は恐怖の対象でしかなかった。
出来るだけ冷静を装わなくては……。
でなければ発狂して気を失ってしまいそうだった。
「いやいや、フィードル伯爵。遠いところよくお越しいただきました」
表面上はにこやかな笑みをたたえ、突然父が間に割って入ってきた。
「いえ、とんでもございません。王女殿下のご生誕祭となれば駆けつけるのはこの国の貴族として当然の勤め。本日はご招待いただき、まことにありがとうございます」
フィードル伯爵はさも当たり前のように答えた。
「ふん、そうだろうとも。君はそうして王族に頭を下げていればいいんだよ。ゆめゆめ王族に楯突こうなんて思わないことだ。君も父上と同じようにはなりたくないだろ?」
そう言った父は私が今まで見た事のないくらい怖い顔をしていた。
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