第5話 裏切りと真実

遺跡の中、俺たちはヴォイドリーパーズの追手を退け、ようやく一息ついた。だが、ここで気を緩めるわけにはいかない。俺たちが探していた「ヴォイドコア」は、まだこの遺跡の奥深くに眠っている。そして、それを手に入れるためには、さらに多くの危険が待ち受けているはずだ。


「健吾、行こう。この先にヴォイドコアがあるはずだ。」


レイナが短剣をしまい、俺に声をかける。彼女の顔には緊張の色が浮かんでいた。俺も無言で頷き、彼女の後について遺跡の奥へと進んでいく。


だが、遺跡の中心部にたどり着く直前、突然、遺跡全体が揺れ始めた。まるで地震が起きたかのような揺れに、俺たちは思わず立ち止まる。


「なんだ、これ……?」


「誰かが遺跡の封印を解こうとしている……急ごう!」


レイナが焦ったように声を上げる。彼女の顔には、明らかな恐怖が浮かんでいた。俺たちは再び走り出し、遺跡の中心部へと向かう。


そこには、巨大な扉が待ち構えていた。扉には古代の文字が刻まれ、ヴォイドの力を封じるための結界が張られているようだ。


「ここが……ヴォイドコアが封印されている場所か。」


俺がそう呟いた瞬間、扉が音を立てて開かれた。目の前に現れたのは――


「アルベルト……!」


レイナが驚愕の声を上げる。そこに立っていたのは、リグレア王国の宰相、アルベルトだった。彼は冷たい笑みを浮かべ、俺たちを見下ろしていた。


「やはり、ここに来たか。レイナ、そして……羽瀬川健吾。」


アルベルトの声には、冷徹な響きがあった。まるで、俺たちがここに来ることを最初から計画していたかのようだ。


「お前が……ヴォイドリーパーズと繋がっていたのか!」


レイナが短剣を抜き、アルベルトに向かって突きつける。だが、アルベルトは微動だにしない。


「そうだ。私はリグレア王国を、いや、この世界を新たに統治するためにヴォイドリーパーズを利用した。しかし、彼らも所詮は駒に過ぎん。真に世界を支配するのは、この私だ。」


アルベルトの言葉に、俺の背筋が凍る。彼は自らの野心のためにヴォイドリーパーズを利用し、その上で彼らをも裏切ったのだ。


「お前……本気でそんなことを考えているのか?」


俺は思わず声を上げた。だが、アルベルトの目には揺るぎない決意が宿っている。


「もちろんだ。ヴォイドコアの力を手に入れれば、私はこの世界を新たに作り変えることができる。リグレアは私の手で、真の平和を迎えることになるだろう。」


彼の言葉に、俺は一瞬言葉を失った。だが、次の瞬間、レイナが叫んだ。


「そんなことをさせるわけにはいかない!ヴォイドコアを使えば、この世界は崩壊するんだ!」


レイナはアルベルトに向かって飛びかかろうとしたが、その瞬間、アルベルトの手が動いた。彼の手には、既にヴォイドの力が宿っていた。まるで闇が渦巻くかのようなオーラが、アルベルトの周囲を覆っている。


「愚かな……ヴォイドの力を使いこなせるのは、私だけだ。お前たちにはその力を理解することなどできない。」


アルベルトは手を振り上げ、レイナに向かって攻撃を放った。だが、その瞬間――


「やめろ……!」


俺は叫びながら、アルベルトとレイナの間に割って入った。俺の体が輝き、何かが俺の中で弾けたような感覚がした。


「これは……?」


目の前に広がる光景が歪んでいく。アルベルトの攻撃が俺を通り抜け、何もない空間に消えていった。


「これが……お前の力か……!」


アルベルトが驚愕の声を上げる。だが、俺はその瞬間、頭の中で何かが弾けるような感覚を覚えた。


「俺は……ヴォイドの真実を……」


言葉が途切れ、視界が暗転する。俺はそのまま意識を失い、深い闇の中へと引きずり込まれていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る