第4話 古代の遺跡とヴォイドテクノロジー

「ここが……古代の遺跡?」


俺たちは森を抜け、広大な平原の中央に佇む巨大な遺跡の前に立っていた。苔むした石造りの建物が、異様なほどの静けさを漂わせている。周囲には何もない荒野が広がり、風すらも止まっているかのようだった。


「そうだ、リグレア帝国がかつて栄えていた頃に築かれた遺跡だ。ここには、ヴォイドテクノロジーの一部が隠されていると言われている。」


レイナがそう言って、前に歩み出す。彼女の足取りは確かで、この場所を訪れるのが初めてでないことがすぐに分かった。


「レイナ、もしかしてここに来たことがあるのか?」


俺が尋ねると、彼女は短く頷いた。


「ヴォイドリーパーズにいた頃にな。だが、当時はまだこの遺跡の全貌を解明することはできなかった。今度こそ、ここで何が隠されているのかを確かめる。」


その言葉に、俺は緊張を感じながらも、レイナの後を追うことにした。遺跡の中に一歩足を踏み入れると、薄暗い空間が広がっており、壁には古代の文字が刻まれているのが見える。


「これが……古代の文字か。」


「読めるか?」


「いや、見たこともない文字だ。でも……なんだか、不思議と意味が分かる気がする。」


目を凝らして文字を追っていると、頭の中にイメージが流れ込んでくる。まるで、文字が直接脳に語りかけてくるような感覚だ。


「『ヴォイドコア……すべてを消し去る力……』」


無意識に口に出していた。ヴォイドコア、それがこの遺跡に隠された力の一つなのか?


「ヴォイドコア……そうか、やはりここにあったんだな。」


レイナの声が、どこか遠くから聞こえたように感じる。俺は文字を読み続けた。


「『この力を解放する者は、リグレアの運命を左右する。善か悪か、それは使う者の心に依る』……」


文字を読み終えると同時に、遺跡の中に不気味な音が響き渡った。まるで石が動く音――いや、何か巨大な存在が目覚めるような音だった。


「……健吾、危ない!」


レイナが叫ぶと同時に、俺は目の前で床が崩れ落ちるのを見た。突如現れた巨大な落とし穴に、俺たちは呑み込まれそうになり、咄嗟に後ろへ飛び退いた。


「何だ、これ……?」


目の前には、暗闇が広がる巨大な穴ができていた。そこから感じるのは、異次元のような冷たさと、何か不吉な力だった。


「これが……ヴォイドの力か?」


「間違いない。この遺跡には、ヴォイドリーパーズが求めている力が眠っている。それを手に入れれば、彼らは世界を……」


レイナが言葉を続けようとした瞬間、遺跡の奥から何者かの気配が近づいてくるのを感じた。


「気をつけろ……奴らが来る。」


俺たちは即座に身構えた。遠くから足音が響き、次第にその姿が見えてくる。黒いローブに身を包んだ数人の男たち――ヴォイドリーパーズの一員だ。


「やはり、お前たちもここに来ていたか……レイナ。そして、その人間も。」


男の一人が冷たく言い放つ。その目には、まるで生気が感じられない。彼らの手には、すでにヴォイドの力が宿っているかのような、不気味な光が漂っていた。


「この遺跡は我々が管理する。お前たちはここで死ぬしかない。」


「……やるしかないな、健吾。」


レイナは短剣を抜き、俺に向かって一瞬だけ視線を送った。その目には覚悟が宿っていた。


「逃げ場はない。ここで奴らを倒さなければ、世界が終わる。」


俺も彼女に倣って、戦う覚悟を決めた。ヴォイドリーパーズの狙いを阻止するため、この遺跡での戦いが今、始まろうとしていた。

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