第3話 初めての戦い
森の奥深く、木々が生い茂る中で、俺たちは静かに歩みを進めていた。昼間とは異なり、森の中は薄暗く、風の音すら聞こえない。まるでこの場所自体が、何か大きな力で封じられているかのようだった。
「レイナ、ここは何だか変だ。気味が悪い……」
俺がそう言うと、レイナは微かに頷いた。
「そうだな、ここは異次元と現実が重なり合っている場所だ。ヴォイドリーパーズの影響で、現実が歪み始めている。」
彼女の言葉に、俺は無意識に足を止めた。この森のどこかに、ヴォイドリーパーズが潜んでいるのかと思うと、自然と緊張が高まっていく。
「気をつけろ、健吾。彼らは我々を待ち伏せている可能性が高い。」
レイナの声に、俺は緊張を和らげようと深呼吸をした。だが、その瞬間――
「――来たか。」
レイナの目が鋭く光った。次の瞬間、周囲の空気が変わり、何かが急速に迫ってくる気配がした。
「健吾、下がれ!」
彼女が叫ぶと同時に、黒い影が俺たちを襲った。瞬間的に、俺は地面に飛び込んで避けたが、影はまるで生き物のように動き、再びこちらに向かってくる。
「なんだこいつら……」
影の正体は、ヴォイドリーパーズの暗殺者――「アサシンズ」だ。その動きは人間とは思えないほど速く、暗黒の力をまとっているように見える。
「ヴォイドリーパーズのアサシンズか……厄介な相手だ。」
レイナは冷静に構え、短剣を抜いた。その刃先は闇に紛れるように光り、彼女の技量を示している。
「健吾、お前は自分の力を使え。奴らの動きを見極めろ。」
「俺の……力?」
混乱する俺に、レイナは鋭い声で続けた。
「そうだ。『隠されたものを見抜く力』だ。目を凝らせば、アサシンズの動きの裏に隠されたパターンが見えるはずだ。」
俺は言われるままに目を閉じ、周囲の気配に集中した。次の瞬間、俺の頭の中に閃光が走ったように、影の動きがゆっくりと見え始める。彼らはまるで一つの意志を持っているかのように、一定のリズムで動いているのが分かった。
「見えた……!」
その瞬間、俺は一気に目を開き、レイナに指示を送る。
「右の影、次に跳ぶタイミングは今だ!」
レイナは俺の言葉を聞き、素早く動いた。彼女の短剣が閃き、影の一つが消え去った。だが、それでもまだ三つの影が残っている。
「やるじゃないか、健吾。だが、これで終わりじゃないぞ。」
レイナが短剣を構え直し、次の影を狙った瞬間、背後から新たな気配が近づいてくるのを感じた。まるで背中に冷たい風が吹き抜けたかのような感覚――それが俺に危機を知らせた。
「レイナ、後ろだ!」
だが、声を上げた時にはすでに遅かった。影がレイナに襲いかかり、彼女の体を闇に包み込もうとしていた。
「クソッ……!」
俺はとっさに地面に落ちていた石を手に取り、全力で投げつけた。影の動きが一瞬止まり、その隙にレイナが飛び退いた。
「……助かった。」
レイナは俺に短く礼を言い、再び戦闘態勢に入った。
「健吾、あと少しだ。気を抜くな!」
俺も石をもう一つ手に取り、レイナと共に残りの影に立ち向かう覚悟を決めた。彼女の動きに合わせ、俺は影の動きを見抜き、レイナが攻撃できる隙を作る。これが俺の戦い方なのだ。
そしてついに、最後の影がレイナの一撃で消え去った。
「やったか……?」
俺は息を切らしながら、倒れ込むように座り込んだ。レイナも同様に息を整え、短剣をしまい込む。
「初めてにしては上出来だ、健吾。だが、これからはもっと激しい戦いが待っている。その覚悟はできているか?」
俺は彼女の問いかけに力強く頷いた。まだ不安は残っているが、戦うしかない。俺にはその力がある。そして、この異世界で何が起ころうとも、俺は立ち向かっていく――その決意だけが、今の俺を支えていた。
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