第9話 彼の正体
あきらの目は真っ直ぐに私を見つめていて、格好つけているようにも、嘘をついているようにも見えなかった。
「あなたも知ってる人だと思う。覚えてなかったから知らない人だけど」
彼は試すように私を見つめている。
「その人には今から会いに行けるの?」
「まあ、この時間帯なら会えると思う。疲れてないなら連れてくけど」
一瞬迷った末、連れて行ってもらおうと決めた。
「案内をお願い」
あきらは気だるそうに欠伸を噛み殺し、私たちが入ってきた方へ歩みを進めると足を止めた。
そして振り返り、
「出口分かんないから、案内して」
—————
外に出るとたった少し洞窟に居ただけなのに、空気が新鮮に感じた。開放的な緑の匂いにほっと一息つく。
先程とは打って変わり、あきらを先頭に森の中を進んでいく。迷いなくどんどん歩いて行く彼の背中を見ながら、守護者とは何者なのか頭の中でまとめていった。
それにしても私が知っている人物とは一体誰なのか。マリアさんは知らないようだったから、あまみや家の人ではないのか。
「りさ様、足元お気をつけて」
「うわっ、ありがとうマリアさん」
歩きながら考えるのはやはり私には向いていない。足元に気を配りつつ、あきらに話しかけた。
「ねえ、なんであきらはそんなにこの世界のことに詳しいの」
「あんたが知らなすぎるだけじゃない」
ぐうの音も出ない。
これ以降は話すだけ体力が消費されると思い、話しかけなかった。あきらは冷たい言葉とは裏腹に、歩く速さを少しだけ落として私たちに合わせてくれた。
「ここが、その守護者のいるところ」
着いた先は私が通っていた本屋だった。木々に囲まれて年季の入ったその外観は、数日経ったくらいでは変わらない。
「本屋に住んでいるのですか。本がお好きなのでしょうか」
「それはどうかな。とにかく早く入ろう」
あきらは少し急かすように、私たちを中に入れた。
二人と一緒に中へ入ると、いつもいるはずの店主がいない。今は不在なのか待機していると、すぐに奥から店主がやってきた。
「ようこそ……。おや」
私たちを見るなり、ひどく驚いた様子を見せる。店主はあきらと視線を合わせ、眉を下げた。
「あきら、こんなに早いとは思わなかったよ。もっと時間がかかると思ってた」
「あなたが思ってるのとは違う。俺が言い出した。やっぱりうだうだ辿り着くのを待ってるより、さっさと話したほうが早いし」
あきらと店主は知り合いだったのか。店主は想定していたものとは違うが、いつか私たちがここに来ることを知っていたかのようだ。
「私、あきらに守護者の元に案内してもらうってことでここに来たんです。まさか……」
彼は緩く微笑みながら、
「そのとおり。私がこの新緑の国の守護者、アルマだ」
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