第32話 ナターシャ視点

 私は聖女ナターシャ。現在、馬車で王都に向かっている。


「アベルが来れなかったのは痛いが、俺はお前たちもかなりのもんだと思ってる」


 デニスがそう言った。王都に着いた。


「よくぞ戻った!おや?アベルはおらんのか?アベルはどうした!」


 ジョナサン王がアベルアベルと連呼している。アベルがいなくてもなんとかなるでしょう。


「おいデニス!アベルはどうした!」

「孤児院の防衛に使うらしいです」

「なんと!またセシルか!孤児院などどうでもいいだろうに!」


 ジョナサン王は聞き捨てならないことを言う。セシル様が一番大事だというのに。


「暗黒騎士アモンが総大将を務めさせていただきます」

「うむ、アモンよ!期待しているぞ!」


 アモンはアベル程の強さは無いですが、なんとか総大将をやり遂げるでしょう。


「早速だが、最前線のゼゼムルまで行って欲しい」

「わかりました」

「ところでグラハム宰相がいないようですが…」


 私は気になることを聞いてみた。


「ああ、あやつならベベーロフ帝国へ裏切って逃げたぞ。論功行賞でセシルへの褒美に反対するわけだ」

「ああ、そうですか」


 これでセシル様が褒美を得ることができるかもしれませんね。私たちは馬車でゼゼムルに移動した。

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