第6話天秤ばかりと…豆石

<その6>天秤ばかりと…豆石。


火曜日の朝。やっぱり見えません‼︎

ほんとでした……。


クララと二人で登校すると。一番に。校舎の屋上を見たんですが。

なあ〜んにもっ…ありませんでした。

ただの…空。空気しか…ありません。本当でした。

未確認先生の宇宙船は…影も形も見えなくて。

いつもの。ふだんどおりの。朝の…学校でした。


……お昼休み。


わ・た・し…虹隠ララ。

忍者みたいな(名字)ですが。忍者では……ゴザリマスヌ。

大好きな給食を食べてから。

クラスメートや…先生がたには(ないしょ)で。屋上へ行ってみました。


……イザ。イクデゴザル。


いつもは。カギが…かかってるんだけど。

きょうは。ん?…あいてたっ。

なぜ?

でも。OっKーー‼︎

で…重い金属のドアを。ギギッ…ソロリソロリ。……開けたら?


わああっ。

青空っ。青空っ。いい…天気っ。ヒューッ‼︎

で?で?でっ?

ちっちゃな声で「先生…?」って言ったら。

ちっちゃな声で「…お姉ちゃん?」って声がして。


あららっ?ららっ?クララでした。

んもおお。もおお。もーったら……。

妹も来てました。やっぱ。姉妹ですね?…ふふ。


…と。空の上から?


スローモーションで。なんか。(光のモヤモヤ)が…おりて来て。

ほわわ〜〜ん……トン…♪

屋上の。白い…カタイ…床に着地すると。パッ…と光が消え。

目の前に。なんかの形が…姿が…見えました。


……光速宇宙船タイムシップの小型機。タイムボートでした。


すると……。

宇宙船の。機体の天井の。透明な(ふた)?…が。

スススーッと開くと…二列で。


右が。ベッドで横になっている(おじい様)で……。

目は開いていて。言葉はないけど…元気そうに見えました。

左が。コントローラーがある。コックピットの(先生)でした。

先生が機体から出ると。また。スススッ…と(ふた)が閉まったの。

パイロットもできる先生。わああ。カッコいいですっ。


……でも。先生。(ドジっ子)でした。


先生。「あっ。忘れたあ。豆石っ(まめいし)……」

わたし「えっ?」「まめいしっ?」

クララ「なんか忘れたのお?」「…どこ?」

先生。「二人のお部屋です」「あ。きのう。そのまんま…おいてきちゃった」

わたし「あの石っ?」「そうそう。天秤ばかりに。のっかってた?」

クララ「天秤ばかりっ。小さな石でしょ?」「あれね?テーブルの下っ。かくしたっ」

わたし「アレないと。飛ベないんですか?」

先生。「飛ぶのは問題ないわっ」「でも……」


そうなんです。そうなんです。大事な石…豆石(まめいし)‼︎

ものすごく大事なことなので。

チカラをこめて…説明します。


……(天秤ばかり)と(豆石)について。


(宇宙の扉)と(ジャンプ)については。もう。いーよねっ?

前に言ったとおりです…が?

もうひとつだけ。つけくわえますね?

この。宇宙の扉には。ひとつの(ルール)が…あるんだそうです。


……それは。宇宙の扉を開ける時の…(カギ)です‼︎


この…(カギ)。

(モノ)ではなくて…(儀式)です‼︎


用意するのが…(天秤ばかり)と(豆石)です。

まず。(天秤ばかり)。

しょうじき。うん。なんでも…いいそうです。

値段が…高くても安くても。高性能でもオモチャでも。

なんでも…いいそうです。

大事なのは。左右のバランスが。ちゃあんと…とれるように動いてくれれば?

それで。いいんだそうです。はいっ。


……つぎは。(豆石)です‼︎


まめいし?…って。

ふふ。変な名前ですねええ?

でも。ほんとの呼び方です。

大きさは。だいたい…5ミリくらいで。丸い石です。

石の種類は。(サファイア)(しんじゅ)(オパール)です。

これを。(三種の豆石)と…呼ぶんだそうです。

ちょっと。カッコいいです……。


この豆石。約5ミリと小さいので。なくしちゃうと…いけないから。

いつでも。ハダミハナサズ。(お守り袋)に数十個入れて。

パイロットがね?

首から…ちょこんと下げて。いつでも。持ち歩くんだそうです。


えっ?……そうなの?

でも?……無くしたら?落としたら?どーすんの?

…って。思いませんか?

5千年も科学が進んでる(宇宙人?)なのに。

ふふ……。

たんじゅんデスネ?…でも。おもしろそうです。


……この。豆石を使う(儀式)。

……どうやって使うかというと。けっこう。かんたんです。


目的にピッタリの…光速宇宙船に乗ったら。

コックピットにある。(天秤ばかり)の…左右の(お皿)にね?

それぞれ3個づつ。(三種の豆石)をのせて。

そっと。左右のバランスをとります。


……すると?


ゆらゆら。ゆらゆら……します。

ギッタンバッコン。ギッタンバッコン…しながらね?

ゆっくりゆっくり。静かに静かに。ゆれゆれ。ゆれゆれ…してると。

そのうちに。

ピタッ…っと。ピッタリっ。左右のバランスが(ひとしく)なって。

左右の…豆石の(お皿)が。(平行)になります。


……すると?


あら不思議っ。6個の豆石から。キィーーン♪…っと。

あの。(耳なり)のような。小さな。(キーン音)が…聞こえてきます。

と…すぐに。


ピカッ…ピカピカッ……ピカピカピカピカァーーーーーッ‼︎


……って。光がっ‼︎


花火のような。夜の工業地帯のような。夏フェスの…ハデな照明のような。

そんな。まぶしくて…とんがった。でも。あたたかい感じもする。

8秒間の。光の(てんめつ)が…始まります。


……光るのは。豆石ですっ。


約…5ミリの大きさです。小さいです。

ですから。そんな。そばにいる人に…ケガをさせるような?

大爆発でもするように。痛い光を(まき散らす)わけでは…ありません。


約5ミリの豆石が…左右で3個づつ。

合わせて6個の小さな石が…光るんです。危険は。ありません。

なにかなあ?……。

いちばんイメージに近いのは。やっぱり。

夏休みの夜。家の前でする。家族みんなでする……。

楽しい楽しい…花火かな?

夏の。(思い出花火)のような。あったかな…光かなあ?


……その光。私とクララは。二度…見ました。

……一度めは。火曜日の午後です。


昼休みの屋上で。先生。豆石。部屋に…忘れたって言ったでしょ?

だから先生っ。私たちの。(部屋から)飛んで帰るって。

私たち。学校おわって。家っ…帰ったあとに。

先生と…おじい様。二人乗りのタイムボートで。

ステルスシフト…ONにして。

(町の人達)には…見えないようにして。

私たちの部屋まで。空気も(ふるわさず)…飛んで来たんです。


そして。二階の部屋の窓の外に。その宇宙船を。ピッタリ…くっつけるようにしながら?

ふわっと…浮かせて。止めたんですよ?

浮かせてだよ?……浮いてだよっ?

なんで浮くんだろう?

空気の上に浮いてるし……。


ヘリコプターの羽根だって無いし。

ジェット機のエンジンだって無いし。

ほんとっ。先生たちって。未来の未来の地球人。

(超人類)……なんですねええ。


私とクララ。部屋の窓から顔だして。

宇宙船の中を(のぞく)とね?……いました。


私たちの小学校を…2日間。

(ないしょ)で。ないしょのないしょで見学した…おじい様が。

コックピット席にいる…先生の(となり)で。

ベッドに横になりながら。……いました。


……おじい様ね?


おだやかで。小さく笑って。満足そうな顔…してたんだけど。

でも……。ちょっと……。つかれてる感じも…してましたね。

コホンコホン…。ゴホン…って。ちょっと。

せき…かな?…してたの。


(よかった。よかった……)

(学校は。子供たち。げんきげんき。それがいちばん……)

( ああ。ああ。もお……帰ろう……)

(わしは。うれしい。ああ……かえるぞ?……)

(……いこう…………)


そう言うと。ほんとうに。

とってもとっても。満足そうな。小さな笑顔の…おじい様でした。


そして。

未確認先生だけ…ひとり。コックピットを…おりると。

宇宙船の中。ベッドで横になってる…おじい様が。

宇宙船の。天井の。透明な(ふた)を閉める前に…ね?

私とクララに。

青い地球の。小学生の私たちに。

弱くて(かすれた)声で。ちょっとだけ。言ってくれたんです。


しずかに。弱い声で。

(ありがとうなあ。ありがとうなあ……)って。

(ばいばい。ばいばい……)って。


そして。また。おじい様ね。

コホンコホン…。ゴホン…ゴホン……と。

なんか……。

昼休み見た時より。急に体力っ。なんか…おちたみたいで。

ゴホンゴホンって。せきっ……出てました。


……でも。おじい様っ。


ベッドに横になってても。ふんばって。ふんばって。うん…って。

重そうに。やっと。細い細いウデで。手を。バイバイ…ふってくれたの。

やっとで。やっとで。ふってくれた。

ほんと。私たち。なんにも…してないけど。

おじい様……。

やっぱり。学校やめてもね。子供たちのことが。好きなんだなあ?…って。

ゴホンゴホン。せきっ…でてたけど。

なんども…なんども。手を…ふってくれたんです。


おじい様ね?

しょぼしょぼの。しわしわの。でも。(最後の先生)らしい。

どっしり。でも…気持ちいっぱいの。うん。

笑顔の…おじい様でしたっ‼︎


……お別れの時。


ああ。ああ。

かたむいた。春の陽射しが機体にあたる。

静かに。天井の。透明な(ふた)が閉まってゆく。

コックピットの(天秤ばかり)には。

オートマチックで(豆石)が6個のる。

ゆれが。ゆれが止まると。

キィーーンと(耳なり音)がして。

花火のような光の(てんめつ)が。8秒間つづく。


(てんめつ)が終わる。

すると。

(千枚の絵)を(一秒で見る)ように。

一瞬。一瞬。一瞬の(まばたき)の間に。

光速。光速。光速の(光る線)になって。


……宇宙船は。飛んでいきました。


その時ですっ‼︎

三種の豆石の…光る(てんめつ)が。

(あいず)となって。ドアを(たたく)…ノックのように。

いま。今っ。(宇宙の扉)を開ける。(カギ)と…なりました‼︎


そして。

別の宇宙へ…天体へ…ジャンプするための。

宇宙の扉は…開きましたっ‼︎


……三角虹ですっ‼︎


オレンジ色の。

西の空の太陽とは逆の…東の空に。

晴れてるのに。とつぜんですっ。

みんなにも。見えてるのかなあ?

わかんないけど……。

ぽっかりと浮かんだ。七色の(もよう)。

それが?

生き物のように…ちょっと…ゆれて?

三角の虹が…出ました。


……きれいな。きれいな。三角虹ですっ‼︎


その。七色の。三角虹の下を。

ほんとにほんとに。キラキラ…キラキラ。

もう。ほんとうに。キラキラキラッ…っと。

(光の線)が。こんどは。スローモーションみたいに?


すうぅぅぅ……っと。

七色の…三角虹の下を。くぐって。消えました。


……ぽっ。


私も。クララも。

なんか。とっても。いま。ステキなことを体験しちゃって。

窓の外を。もう。消えてしまった虹の。オレンジ色の空をね?

ぽ〜〜っと。ぽ〜〜っと。ぽ〜〜っと。見てたんです。


見てたから……。

ママがっ。(おやつ)を(おぼん)にのせて。

後ろでねっ。ツン。……と立ってるのに。

ぜんぜん。まったくのまったく。ほお〜〜んとにっ。

気づかなくって。ぅ…。


ママ。「あんたたち?」「なにしてんの?」

わたし「うん。なんでもないっ。へへっ」

ママ。「へへって。窓っ?」「なんか見えるのっ?」

クララ「なんも。見えん見えん?」「食べよお?…お姉ちゃん?」

わたし「うん。食べる食べる……」

ママ。「そっ。はい。どーぞ?」「ねえ?…天秤ばかり。あったでしょ。学校?」

わたし「ああ。あれね?…友だちのっ」「返したよっ。使わないし……」

ママ。「そっ……」「ならいーけど……」


その時……。

せまい部屋の(すみっこ)にいた…先生は。

はい。消えてます。ママには…見えてませんでした。


ママが。部屋を。ドドドドッと…出ていったあと。

未確認先生ね?

二階の窓から外の地面へ。スッとおりて…帰っていきました。


学校の。屋上の。タイムシップで寝るために…帰ったんです。

あと一日。いるそうです……。

この。私とクララの地球が。とってもとっても…気にいったそうです。

だから…あと一日いて。町の中とか。いろいろ…見るんだそうです。


先生。あの感じじゃ…目立っちゃうよお‼︎

(赤い瞳で金髪で七色のドレスでちっちゃくて)…って。目立ちすぎです‼︎

あ…そっか。

消えればいっか。そうそう。自分の姿っ…消せるんだもん‼︎

ねっ。いいなああ……。


……この。


この。プラスの一日が。

私の(お話)の。大きな事件になりました。

せんせっ。未確認先生。大変なことに…なってしまった‼︎

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