第4話 幼馴染彼女と過ごすある日の朝①

(日の射す部屋。目覚まし時計が鳴り響く)

「うう……アラーム止めて……」

「うん。おはよう」

(外から聞こえる鳥の鳴き声)

「目覚まし音ってどうしてこんなに人を嫌な気持ちにさせるんだろうね。優しくしてほしい」

「例えば? 耳元で女の子が優しく囁いて起こしてくれるやつがいい」

(耳元に顔を近づける)

「『起きて。朝ごはんもう出来てるよ? まったくもうお寝坊さんなんだからっ……。早く起きないとキスしちゃうよ』とか。あはは、どう? どきどきした?」

「たしかにちょっと古典的か。でもこういうテンプレなの好きじゃないの?」

「それかやっぱり強引に起こされる方がいい? 寝てるとき急に布団を思いっきり引っぺがしてカーテンも全開にするやつ」

「そうそう! 高校生の時はそうやって毎朝起こしてたよね」

「だってそうしないとなかなか起きなかったし」

「そういえば私が起こされることってなかったよね。そうだ。今度私のことを起こしてみてよ」

「あーあ、愛しの彼氏君の『おはよう。よく眠れた? 君の寝顔はいつ見ても可愛いね』みたいな甘い朝の始まりが良いな~」

「そうそう朝食の匂いで起きるのもいいね。キッチンで朝食作ってる姿とか見たら今より好きになるかもよ?」

(布団から出ようとする)

「あー待って。まだ添い寝しといて」

「朝ごはん? んー……どっちでもいいかも。だってほら……ラーメン食べたし」

「それに食欲よりも眠気の方が強い」

「いやだ。布団から出たくない。布団から出ると現実と戦わないといけないから」

「毎週この曜日だけは憂鬱なんだよね。講義1限しかないのに、そのためだけに早起きして大学行くの辛い」

「高校生の頃はもっと早起きできてたんだけどね。今思うと朝練で六時台に起きる中高生って異常だよね。今となっては絶対無理」

「大学生になった途端弱体化するデバフとかあるんだよ。入学したときは毎日自炊するぞって張りきってたのが我ながら信じられない……」

「え、そろそろ出ないと間に合わない? ……はあ」

「あーあ。1限が必修科目じゃなかったら絶対履修なんてしないのに。必修科目を1限にするの。法律で禁止してくれないかな」

(テーブルのスマホを手に取る彼女)

「あれ、一時間前に大学からメール来てる。なんだろ……」

「え、嘘!? 教授の体調不良で休講だってー!」

(彼女が布団から勢いよく出る)

「やったー! 突然降って湧いた休日! 嬉しい、嬉しすぎる……! 棚から牡丹餅! 瓢箪から駒! あぁ今なら何でもできる気がする……!」

「んんーなんか眠気覚めてきたかも」

「あ、友達からも今日休講ってメッセ来てる。みんな休講嬉しいんだね」

「ね、今日一日フリーなんだし一緒に朝ごはん食べに行かない?」

「牛丼屋の朝定食とか喫茶店のモーニングセットとかあるじゃん。そういうの」

「普段よりもマシな朝食食べて一日の始まりを良いものにしたい、的な」

「でたマジレス。厳密には深夜に食べたラーメンだったが一日の始まりだけどさ。気持ち的には一日の始まりは今じゃん?」

「だから行こ? なんか気持ちお腹空いてきたし」

「この近くだと牛丼屋と喫茶店があるけどどっちがいい?」

「私? 私は牛丼屋がいいかな。和食が食べたい気分」

「茶碗に盛ったほっかほかの白米にわかめとネギと油揚げの味噌汁。ちょっと身が白くなった紅鮭に新鮮な黄身が濃い生卵。パリッとした味付け海苔に選べる小鉢。自炊だと用意するの面倒だけど、お店なら理想の朝ごはんが食べられる……!」

「お、その気になった? なら行こっか! ではでは理想の朝ごはんを食べに行こう!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る