第3話 幼馴染彼女と過ごすある日の深夜③
(開錠しドアを開ける)
「ただいまー、ってあたしの家じゃなかった。おじゃましまーす」
(彼女が冷蔵庫を開ける)
「エナドリこっちの冷蔵庫に入れていいよね?」
「だってどうせ飲むでしょ? それに私がこっちの部屋に来る口実が増えるしね」
「あとはアイスを閉まってっと。お菓子はこのままで」
「そんじゃ、ラーメン温めるね。二個あるから一個は私の部屋で温めてくる!」
「うん。それじゃ七分後!」
――七分後――
「いや~こういうときに部屋が隣同士って便利だね」
「それじゃ、いっただきまーす!」
「うはぁ~このニンニクの香り久しぶり」
「さっき買ったもの? えっとね、生卵でしょ? あとはスライスチーズと太らないために黒烏龍茶。それと私の部屋から粉チーズとニンニクチューブ持ってきた」
「知らないの? 黒烏龍茶はラーメンのカロリーを無効化する能力があるんだよ」
「本当はカレー粉とかうずらの卵とかも欲しかったんだけどね。実際の店舗だと置いているところも結構あるみたい。あんまり行ったことないけど」
「ほら、友達と一緒だとこういうの食べれないじゃん? 友達とごはん食べるときは周りに合わせてるからカロリーの高い食べ物ってあんまり食べられないんだよね」
「土日も街に今流行りのスイーツとか友達と一緒に食べに行くけど、この値段なら焼肉ランチ食べれるな~とか思っちゃうし」
「でも最近思いついたの。例えば大学の食堂で美味しそうなものがあるときは『ごめ~ん彼氏に呼ばれてて~』って言ってこっそり二人で食べればいいのよ」
「てなわけでそのときは協力してね。約束だから」
「って、麵が伸びちゃう。食べなきゃ」
「まずは麵の上に乗ったヤサイを箸でひっくり返す! ちなみにこれを天地返しという。野菜食べてる内に麺が伸びちゃうし、こうすれば野菜にスープの味が染み込んで旨い」
(二人でズルズルと麺を啜る)
「んまいっ! 深夜にこのジャンキー感、たまらん! 罪悪感がスパイスとなって昼に食べるより倍美味しい!」
「でねでね、別容器に溶き卵を入れてすき焼きみたいに麺と具材をディップして食べるの。やってみて?」
(ズルズルと啜る)
「どう? 美味しいでしょ」
「あとはやっぱりチーズだね。こんな感じに……粉チーズをスープに溶かしたり、スライスチーズをこうして、ヤサイと一緒に食べたりするとグッド」
「やっぱり卵とチーズってどんな料理にも合う万能食材だと思わない? この2つの入ってる料理でまずい料理存在しない説を提唱するレベル」
(再び麺を啜る)
「ところでこの一枚のチャーシューはどのタイミングで食べるべきだと思う?」
「お店だと何枚も乗ってるから気にしなくていいんだけどさ、この場合はショートケーキの苺並みに食べるタイミングが難しい」
「へえ、そのタイミングなんだ。ちなみに私はいつも食べるタイミングを変えてみるけどしっくりこないタイプ」
「……ちなみにそのチャーシュー。私がもらってもいいよ?」
「……はい嘘です。ごめんなさい」
―数分後―
「んっ……ぐっ……ぐっ。あー美味しかった」
「いやあ、スープ全部飲まないと損した気するし。そういう自分だって全部飲んでるじゃん」
「いいもん、黒烏龍茶で中和したし」
「……なんか満腹になったからめっちゃ眠いかも」
「ベッド借りていいの? ありがとう。そして部屋をニンニク臭くして申し訳ない」
(ベッドが軋む音)
「おっ、隣来てくれた。それじゃあ一緒に寝よっか」
「……ニンニク臭いから一緒に寝るの恥ずかしいかも」
「彼氏と彼女ってそんなもん? 私は別に気にしないけど、嫌じゃないの? 彼女の口がニンニクの匂いするの」
「言ったな~。それじゃあニンニク臭くてもキス、できる?」
「まじで? できるんだ……そっか。できるんだ」
「い、いや。言っただけでしたいわけじゃ……んむっ!?」
(唇が触れる)
「……あはは。なんかいつもより恥ずかしいかも」
「まさか本当にするなんて……ばか」
「……うん。おやすみ」
(耳元に囁く)
「次はもっとタイミングを選んでしてよ。ね」
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