第77話:未来の同僚との初邂逅
「ようやく着いた! 急いでステラさんを探さなきゃ!」
転移の指輪を発動してからすぐに俺はカルシュ村の前へ到着した。俺は急いでカルシュ村の中に入って行った。
するとカルシュ村の中は瓦解した建物や大きな血だまりなどが散乱して惨い様相を呈していた。これは地獄と言っても過言ではないかもしれない。
だけど俺はそんな周りの惨い様相など一切気にもせずどんどんと村の奥へと入って行った。
そしてそれから程なくして。
「はぁ、はぁ……あっ! あれは……ステラさんだ!」
村の中心部の地面に倒れ込んでいる女性を見つける事が出来た。その女性はギルド職員の制服を着ている。この村でギルド職員の服を着てる人なんてステラしかいないはずだ。
だから俺は全力で走って、その倒れているステラの元にまで向かった。しかし……。
「……うっ……こ、これは……」
ステラの身体はあまりにも惨い状態になっていた。
ステラの衣服はズタボロになっているし身体の至る所から大量の血を流している。しかも身体全体を思いっきり締め付けられていたような痕跡も見えた。
手足もボロボロになっているし、首元には非常に強い力で締めあげられた跡もくっきりと見て取れた。おそらく魔術の詠唱をさせないようにするために敵はステラの喉を完全に潰したようだ。
「……こんなの……酷すぎるだろ……」
こんな拷問に近い攻撃をずっと受け続けていただなんて……こんなのあまりにも惨過ぎる……。
それにこんなボロボロな状態ではステラの命はもう……。
「……ぅ……ぁ……っ……」
「っ!? す、ステラさん!?」
俺はステラの命はもう失われてしまったのだと諦めそうになったその瞬間……ステラの口から小さな声が聞こえ漏れてきた。
しかしステラは俺に気づいた様子は一切なかった。ただ虚ろの状態でうめき声を上げているだけだった。それでも……。
「あぁ、良かった……生きていてくれて……」
俺は泣きたくなる気持ちをグッと堪えてそう呟いていった。今ならまだ助けられる。俺はこんな時のために調合レベルを最大にまで伸ばしたんだ。
だから俺は急いで“アレ”を飲ませるために腰を屈めてステラに顔を近づいていこうとした。しかしその時……。
「あらあら? もしかしてまた新しい餌が来たのかなぁ?」
「っ!?」
しかしその時、俺の背後から艶めかしい女性の声が聞こえてきた。俺は瞬時に後ろを振り返ってみた。
するとそこには派手な赤い髪と禍々しい両角に赤い鱗の尻尾、そしてニヤっと邪悪そうな笑みを浮かべている魔族の女がいた。それは間違いなく……。
「アンネリーゼ……」
それは間違いなく、ゲーム本編に登場する魔王軍幹部のボスであるアンネリーゼだった。
「へぇ、君も私の事を知ってるんだ? あ、もしかして私って人間界で有名なのかな? あはは、それだと嬉しいなー!」
「まぁそれなりに有名さ。だってアンタは先代の勇者パーティと戦った事のある数少ない魔族だろ?」
「えー! そんな事まで知ってるんだ! 昔の戦争の事を知ってるだなんて君は凄い勉強熱心だね! いやぁ、あの時の戦争はすっごく白熱したなー! あはは、まぁどうでもいいや。それで? 君はどうしてこの村に来たの? 観光? 旅行? あぁ、それとも……そこで無様に倒れ込んでる餌が呼んでた援軍かな? ぷはは!」
アンネリーゼは倒れているステラの事を指差しながら大きく笑ってきた。
「……俺の家族を笑ってんじゃねぇよ」
「ぷはは……って、えぇっ!? あそこでくたばってる餌って君のお姉ちゃんなの? あはは、それじゃあ君も大した強さなんて持って無さそうだねぇ! だってあのお姉ちゃんクソ雑魚だったしさー……って、あぁ、ごめんごめん! 君のお姉ちゃんをボロカスに悪口言っちゃって本当にごめんね! それじゃあせっかくだしお姉ちゃんの武勇伝を弟君に聞かせてあげるよ!」
「……何だよ?」
「いや君のお姉ちゃんさぁ、クソザコのクセに粋がっちゃってさぁ、無謀にも私の使役する魔物にタイマンをしかけたんだよ! あ、ちなみに使役した魔物ってのはニーズヘッグっていう大きな蛇ちゃんだよー。知ってるかな? 一応ゲロカスな人間共はニーズヘッグの事を厄災級の魔物だって言ってるらしいんだけどね。ふふ、でもそんな厄災級の魔物に戦いを挑むなんてさぁ……君のお姉ちゃんは本当にクソバカだよねー!」
「……」
アンネリーゼは楽しそうに笑いながら俺にステラの雄姿を語りかけてきた。
「いや今考えてみても本当にクソバカなお姉ちゃんだったなー! 素直にカー君に食べられちゃえば一瞬で楽に死ねたのにさ。それなのに君のお姉ちゃんは中々にしぶとくてねぇ……カー君の猛攻を何度もしのぎ切っちゃってさ、しかも最後の最後に特大の暴風魔術をカー君にぶつけてきたんだよ! いやもう本当に凄かったよ! これが最後の悪あがきってやつかーって思って私感動しちゃったもん!」
「……」
「それでその暴風魔術をモロに食らっちゃったカー君は顔半分に怪我を負っちゃったんだけどね……ふふ、そしたらもうカー君ブチギレよ! 完全にブチギレちゃったカー君は魔力切れで動けなくなったお姉ちゃんの身体に巻き付いていってね……それでこう……ゆっくりと優しくじっくりと締め付けていったんだぁ。ふふ、凄く可愛かったなぁ……君のお姉ちゃんの悲鳴。ミチミチぃって全身の骨が折れていく音も最高だったし、それに色んな穴から綺麗な赤色の液体がごぽごぽって溢れるのも綺麗だったよぉ! あはは、弟君にも見してあげたかったなー!」
「……」
俺はアンネリーゼの喋る話を遮らずに最後まで聞いていった。でも内心では完全にブチギレている。
そしてアンネリーゼはそんなブチギレている俺の顔を見ながら笑ってこう言ってきた。
「って、ぷはは、ごめんごめんー! そんな怖い顔しないでよー! 君のお姉ちゃんをズタボロのにしちゃって本当にごめんねー? あ、そうだ! ふふ、それじゃあ謝罪の意を込めてさ……ほら、一発くらいなら弟君に殴られてあげても良いよー?」
そう言ってアンネリーゼは下卑た笑みを浮かべながら俺に近づいてきた。どうやら俺の攻撃が届く距離にまで近づいてきてくれたようだ。
「……へぇ。一発殴っても良いのか? はは、それは嬉しいなぁ……あぁ、もちろん全力で殴っても文句は一切ねぇよな?」
「あはは、そんなのもちろん良いに決まってるじゃん! 君みたいなゲロカスな人間のへなちょこパンチなんて痛くも痒くもないに決まってるんだからさー! だから遠慮せずに全力で殴ってグガハァッ!?」
―― ドゴォン!
俺は速攻でアンネリーゼの顔を目掛けて全力でぶん殴った。
するとアンネリーゼの顔面に俺の拳が思いっきりめり込んでいき、そのまま遠くまでぶっ飛んで行った。
そしてアンネリーゼは奥にあった建物の残骸に叩き付けられて地面へとド派手に倒れ込んでいった。
「ぐ……がっ……! な、なんで……ぐはっ……?」
俺の全力の一撃を受けたアンネリーゼは痛みに悶えながらも信じられないといった表情でこちらを睨みつけてきた。
なので俺はそんな苦痛の表情を浮かべているアンネリーゼを嘲笑うかの如く下卑た笑みを浮かべながらこう言い放っていった。
「……ぷはは、ようゲロカス蛇女。テメェさぁ……これからゲロカスな人間様に殺される事になるんだけどよぉ……はは、今どんな気持ちだよ?」
「ぐ……が……は……お、お前……ふ、ふざけんなよ……!」
そう言いながらアンネリーゼはヨロヨロと立ち上がっていき、そして俺の事を本気でギロっと睨みつけてきた。
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