第47話:ステラと一緒にこの家に住んでいく事に

 俺がそう言うとステラはキョトンとした表情を浮かべ始めていった。


 でもステラはすぐ正気に戻ってこう言ってきた。


「えっと、いや私はちゃんと住む場所があるから大丈夫だよ? 私はギルド職員だからちゃんと住める宿舎もあるからね」

「まぁ確かにそうですけど、でもステラさんも本当はここに住みたいって思ったでしょ?」

「え……って、えぇっ!? な、何でわかったの!?」

「あはは、だって凄く気持ちよさそうにしながらふかふかなベッドに寝転んだり、大浴場を見て目を輝かせてる所を見てたら流石にわかりますよ」

「えっ? そ、そんなに顔に出ちゃってたかな?」

「はい、すっごく良い顔をしてましたよ」

「そ、そんなに!? うぅ、それはちょっと恥ずかしいな……」


 ステラはちょっとだけ恥ずかしそうしながらそう呟いていった。俺はそんなステラの様子を見ながら笑みを浮かべて続けてこう言っていった。


「それでどうですか? 寝室も沢山あるようだし、良かったら一緒にこの家に住みませんか? これだけ大きな家ならお互いにプライベートとかも守られると思いますしね」

「う、うーん、でもあれだよ? いくら大きな家だからお互いのプライベートが守られるだろうと思っても……もしかしたらお互いに恥ずかしい姿とか見せちゃうかもしれないよ? セラス君だって年頃の男の子だから私に見られたくない姿とかもあるでしょ?」

「え? ステラさんに見られたくない姿って……あはは、今更そんなの何もないですよ。だってステラさんと一緒に冒険に出た時に怪我をしたら手当をして貰うために素肌を見せた事なんて何度もあるし、野宿する時には一緒に抱き合って寝たりした事も何度だってあるでしょ?」

「えっ? あぁ、うん、確かにそうだったね?」

「ですよね? ステラさんと出会ってこの六年の間に苦楽を共にしてきて恥ずかしい所なんて沢山見せてきたんだから、もうこれ以上恥ずかしい所なんて見せようがないですよ。というかそもそもステラさんに見られたくないような所があるんだったら、ステラさんとこうやって新しい領地に二人だけで来ようなんて思いませんしね!」

「せ、セラス君……」


 俺がそう言うとステラさんはちょっとだけビックリとした表情を浮かべながら俺の事を見てきた。


 でもステラはすぐにちょっと微妙そうな顔をしながらこう言ってきた。


「えっと、そう言ってくれるのは嬉しいけど、でもセラス君はもう少し他人を疑う行動をした方が良いと思うよ? ほら、幾ら私がセラス君と仲が良いといっても、もしかしたら隙を付いてセラス君の大事な物を奪い去っちゃう悪い泥棒になっちゃうかもしれないんだよ? だからやっぱり家に住むのは一人で住んだ方が良いんじゃないかな? セキュリティ的な意味でさ」

「いや、俺は奪われて困るような物なんて何一つありませんよ。それに俺にとってステラさんは俺が誰よりも信頼してるお姉さんだから絶対に大丈夫です。だって俺のお姉さんがそんな悪い事をするわけないですからね! はは、だよね? お姉ちゃん?」

「セラス君……」


 俺は遥か昔に呼称していたその呼び方でステラの事を呼んでいった。


―― 良い? 今日からアタシがアンタのお姉ちゃんになってあげる。だから何かあったらお姉ちゃんのアタシを頼りなさいよ? わかった、セラス?


 それは今からだいぶ昔……まだステラが冒険者をやっていた時に新人冒険者だった俺に向かって言ってくれた言葉だった。


 そしてそれからしばらくの間、俺はステラの事をお姉ちゃんと呼びながら冒険者の指導をして貰ってきた日々があった。


 そんな昔から今日に至るまでステラとは苦楽を共にしてきた仲だ。だからこそ俺はそんな優しいステラの事を信頼しているんだ。


「……ふふ、わかったよ。それじゃあ改めて私から言わせて欲しいんだけど……うんっ! それじゃあ良かったら私もこの家に一緒に住まわせて欲しいな! というかセラス君もこんな大きな家に一人で住むのは寂しいでしょ? だからほら! セラス君の頼りになる先輩かつお姉ちゃんである私が一緒に住んであげるよ!」

「はは、それは嬉しいですね。それじゃあこれからもよろしくお願いしますね、ステラさん」

「うん、こちらこそだよ! それじゃあよろしくねセラス君!」


―― ぎゅっ


 そう言って俺達はアルフォンス領から出て行く時に交わしたように、今日も固い握手を交わしていった。


 そしてそんな俺とステラのやり取りを見ていた村長は笑みを浮かべながらこう言ってきた。


「ふふ、ダグラス君から聞いた通り君達二人はとても信頼し合っているようだね。冒険者にとって信頼できる仲間が一番の宝物となるからね。だからその縁を大事にしていくと良い。元冒険者の私からのアドバイスだよ」

「はい、ありがとうございます。グラッセさん」


 俺はそう言ってくれた村長にしっかりと頭を下げて感謝を伝えていった。


「よし、それじゃあこの家には君達二人が住むという事に決まったようで……あ、そうだ。そういえばこの家を引き渡すための書類一式は冒険者ギルドに保管してあるんだった。だから申し訳ないけど一旦冒険者ギルドまで来てくれないかい?」

「あぁ、はい。それはもちろん大丈夫です」

「うん、ありがとう。それと実は冒険者のセラス君に頼みたい依頼が一つあるんだけど……冒険者ギルドに到着したらその話もさせて貰えないかい?」

「え? 私に頼みたい依頼ですか? はい、もちろん。困りごとがあるようなら何でも引き受けますよ」

「ありがとう。そう言ってくれると凄く助かるよ。よし、それじゃあ早速冒険者ギルドに向かって行こうか」

「はい、わかりました」


 という事で俺達は村長の案内で冒険者ギルドへと向かって行った。それにしても……俺に頼みたい依頼事って一体何なんだろう?


―――――――――

・あとがき


セラス×ステラの新人冒険者時代の過去話はいつか番外編でちゃんと書きます。

お姉ちゃん属性のヒロインは個人的にかなり大好きなので、この二人が出会って仲良くなるまでの話をしっかりと番外編で書けたら良いなと思っています。


そして次回(明日投稿)は久々に父親視点です。

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