第46話:ステラと一緒に訳アリ物件を見ていく

 という事で俺達は村長に連れられてその訳アリ物件に案内して貰ったんだけど……。


「ここがさっき言った空家になっている一軒家だよ」

「はい、ありがとうござ……なっ!?」


 村長が案内してくれたのは俺達が村の中に入ってすぐに見つけたあの大きな家だった。


 きっとそれは富裕層が住んでる家なんだろうなって思ってたんだけど……まさか村長が言ってた訳アリ物件だとは思わなかった。


「おぉ、かなり大きい家ですねー! きっとこれは家の中も凄い事になってそうですね!」


 そして俺の隣に立っていたステラも感嘆の声を漏らしながらその家の外観をジッと眺めていっていた。


「そうだね。とても羽振りの良い貴族様で家を建てるために高額な建設費用を事前に支払ってくれたからね。だから家の中も物凄く凝った作りになっているよ」

「へぇ、そうなんですね。それは何だか凄く楽しみですね!」

「はは、そう言ってくれると嬉しいよ。それじゃあ早速中に入って行こうか?」

「はい、よろしくお願い致します!」


 という事で俺達は村長と一緒に家の中に入って行った。家の中は当然新築の香りがした。それにしても新築の香りって凄くワクワクとするよな。


「よし、それじゃあまずは寝室から見ていこうか。この部屋の中が寝室になってるよ」

「はい、わかりました。それじゃあ失礼します!」

「私も失礼します!」


―― ガチャッ


 部屋の扉を開けて中に入っていくと、そこはかなり大きな寝室になっていた。


 しかもベッドや机にタンスなどの家具も一通り備え付けられていた。それはまるでホテルの一室のような高級感のある雰囲気も感じた。


「おぉ、凄く大きな部屋ですね! しかもベッドや机などの家具もしっかりと完備されてるんですね」

「あ、本当だね。それじゃあ早速……って、わわっ!? こ、このベッド凄くふかふかだよセラス君! これってもしかしてかなりの高級品なんじゃないですか?」


 ステラは早速そのベッドに乗っかってみると凄くふかふかだったようでビックリとした表情を浮かべながら村長にそう尋ねていった。


「あぁ、さっきも言ったようにこの家を建てる時に貴族様から事前に多額の建設費用を貰ってたからね。だからこの家の備え付けられている家具は全て良質な品で揃えられているんだよ」

「なるほど、流石は貴族様が建てられた別荘ですね! でもこんなふかふかなベッドで寝た事なんて生まれて一度も無いからこれは羨ましいなぁ……」


 ステラはそう呟きながらベッドに横たわりながら目を閉じていった。どうやら本当に凄く寝心地の良いベッドのようだ。


「ふふ、凄く気持ちよさそうな表情だね。ちなみだけどこれと同じ寝室がこの家には合計で六室あるからね」

「え……って、えっ? そんなに寝室があるんですか?」

「あぁ、そうなんだ。どうやらその貴族様は友人が非常に多い方だったらしくてね。だから大人数の友人を連れて来てこの別荘に泊めるつもりだったんだと思うよ」

「あ、なるほど。たしかに高級ホテルの一室みたいな作りですもんね。という事は自分のためというよりも友人を泊めるためのコンセプトにしたって事かな」


 でもこれだけ豪華な別荘に俺が一人だけで住むのって……うーん、何だかそれはかなり寂しい気もするなぁ……。


「まぁ寝室についての説明はこれくらいかな。よし、それじゃあ他の部屋も見て回ろうか」

「はい、お願いします。ほら、ステラさんも行きますよ!」

「えっ? あ、う、うん! ちょっと待ってセラス君ー!」


 俺はベッドでうたた寝をしそうになっているステラを起こしていき、村長にリビングやダイニングキッチンなど色々な場所を紹介していって貰った。


 そして最後に紹介して貰ったのは……。


「そしてここがこの別荘で一番の目玉となる……大浴場スペースだ!」

「お、おぉ! これはかなり凄いですね!」

「う、うん! こ、こんな大浴場が家の中にあるなんて……本当に凄すぎるね!」


 大浴場スペースという名の通り普通の家にあるこじんまりとした浴室なんかではなく、まるで銭湯のようなスケールの大きなお風呂場になっていた。


(こんな大きなお風呂に入れたら最高に気持ち良いだろうなー!)


 俺はテンションを思いっきり上げていきながらこの大浴場をグルっと見渡していった。


 実は俺はお風呂に入るのが物凄く大好きだったんだ。転生する前は仕事休みに日帰りで温泉や銭湯に頻繁に行ってたくらいだしさ。


 でも俺が転生してから今までずっと住んでたボロボロの掘っ立て小屋にはお風呂場なんて無かった。滅茶苦茶小さなシャワールームが備え付けられていただけだった。


 だからこの別荘に住めるようになったら俺はこれからこの大浴場で毎日大好きなお風呂に入れるって事だよな? そんなの滅茶苦茶テンションが上がるに決まってるよな!


 そしてこの大浴場を見てテンションを上げていたのは実は俺だけではなく……。


「うわぁ、本当に凄い大きな浴場だなぁ……。いいなぁ、こんな大きなお風呂に入れたら凄く気持ちよさそうだなぁ……」


 そしてテンションを上げていたのは実は俺だけでなくステラもだった。


 この大浴場を見ながらステラは羨ましそうに目を輝かせながらそう呟いていっていた。その様子からしてステラもお風呂が凄く大好きなようだ。


(はは、ステラさんが目を輝かせる気持ちは物凄くわかるなぁ)


 だってお風呂好きからしたらこんな大きな浴室が自分の家にあるなんて絶対に最高だもんな。


「という事でこれで家の中は全部見て回った事になるよ。セラス君はこの家は気にいってくれかい?」

「はい、そうですね! とても素晴らしい一軒家だと思いました。でもこんな素晴らしい一軒家を無料で貰ってしまって本当に良いですか?」

「もちろん。さっきも言ったけどこの家を建てるための費用はもう既に全て支払って貰っていたからね。それにこの村に住んでる住人は既に全員自分の住んでる家があるから、こんな大きな家があっても誰も住む事はないんだよ。やっぱり自分達が今住んでる家にそれぞれ愛着を持ってるわけだしね」

「あぁ、なるほど。確かにそうですよね」


 という事でこの訳アリ物件はとても素晴らしい家だという事を理解する事が出来た。そしてこの家に誰も住む人がいなくて困っているというのも理解出来た。


 それとさっきからずっと目を輝かし続けている尊敬すべき冒険者の大先輩かつお姉さんの様子も凄く気になっていた。まぁその様子はどう考えても……。


「それでどうかな? もしセラス君が気に入ってくれたのであれば、是非ともこの家をセラス君に使って貰いたいんだ。そうすれば我々としても解体せずに済むから解体費用が無くなって凄く助かるしね」

「うんうん、是非ともそうしなよセラス君! こんなにも素晴らしい一軒家が手に入るなんて凄くラッキーな事なんだしさ! ふふ、でも本当に羨ましいなぁ……」

「はい、そうですね。それじゃあ是非ともこの家を使わせて頂きたいです! あ、でもその前に……」

「うん? その前に?」

「はい、ちょっとその前にステラさんに一つ提案があるんですけど……良かったらステラさんもこの大きな家に一緒に住みませんか?」

「え……って、えっ?」


 という事で俺はそんな提案を目を輝かせまくっているステラにしていってみた。


 だってその目をキラキラと輝かせている表情はどう見ても……ステラもこの大きな家に住みたいっていう表情だったんだもん。

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