第38話:ゴミ息子をようやく家から追い出せた!(父親視点)
「ふ、ふふ……ふははは! ようやくあの無能なゴミ息子を追放してやったぞ!!」
私は執務室の中で興奮気味にそんな事を言っていった。
本日をもってようやくあの役立たずを我がアルフィード家から追放する事が出来たんだ。こんなにも喜ばしい事はない!
そもそもアイツは生まれながらにして魔力適正が一切ないという本当にどうしようもないゴミクズだった。
由緒ある魔術一家のアルフィード家に生まれたからにはこの家の発展を臨まなければならない使命があるというのに、一つも魔術が使えないゴミクズではこの家を発展させられる力なんて一切無いので非常に腹立たしく思った。
だから最初は妻の不倫と托卵を疑った。あのような無能なゴミクズが私の息子だなんて信じられなかったからだ。
でも正確な調査を行ってみた結果セラスと私は血が繋がった親子だと断定されてしまった。私はそれを聞いて絶望した。あんな役立たずと血が繋がっているなんて到底許せなかった。
だから私はいつかあのゴミクズをアルフィード家から追放する予定だった。でもその前に……。
「ふふ、だが最後の最後にシュバルツの名声のために役立ってくれたな!」
でもその前にシュバルツの入学試験のためにあのゴミクズが役立ってくれて本当に良かった。
兄の無能な所をたっぷりと見せつけた後に弟の優秀さを披露するという作戦が無事に上手くいったようで何よりだ。早速王都に住む貴族達からシュバルツと話がしたいという連絡がチラホラと届くようになっているからな。
という事で今回の件でシュバルツに一目置く貴族も大量に増えたはずだ。そしてこれをきっかけにして良い家系の令嬢とも交流が沢山持てるだろう。
でもそうなるとセラスはもう邪魔な存在になる。さっきも言ったがあんな無能なゴミクズと義理の兄になりたい由緒ある貴族令嬢などいるわけないからだ。
だから今日をもってセラスをこの家から追放してやったというわけだ。もうアイツは何の利用価値も無いしな。これで二度とあんな無能なゴミクズを見なくて済むなんてせいせいする。
そしてあのゴミクズがアルフィード家からいなくなったことで、これからは沢山の貴族の御令嬢からシュバルツへの縁談が沢山舞い込んでくるだろうな。
そしたら私の方で優良な家系の御令嬢を何人か見繕ってシュバルツと婚約を結ばせるとしよう。そうすればこのアルフィード家はより一層繁栄していく事に違いないだろうな。
「ふふ……って、あぁ、そうだ。そういえば近い内に国王陛下の生誕祭があるはずだな」
ふと私はそんな事を思い出した。
実はつい先日まで我がレティシア王国の国王陛下であるジルク王は病気に伏せていたんだ。
そしてもうそろそろ危ないかもしれないという話が貴族の間で噂として広まっていたのだが……しかし何と奇跡的にも“万物の秘薬”と呼ばれているエリクサーを手に入れる事が出来たそうで、ジルク王はその不治の病から無事に生還したらしい。
そしてそれを記念して来月には貴族と王族達を招待してジルク王の生誕祭が開かれる事になったそうだ。まだ詳細は判明していないが、そろそろ全国の貴族家にも招待状が届くとの噂だ。
せっかくの機会だしその生誕祭には息子のシュバルツも連れて行く事にしよう。きっとシュバルツと話したがっている貴族も多いはずだしな。
「ふふ、それにその生誕祭には今代の聖女であるアーシャ嬢も出席されるんだよな」
アーシャ嬢とは先代の勇者パーティだった勇者と聖女の間に生まれた子供のさらに子供……つまりは先代の勇者と聖女の孫娘だ。
しかしそんなアーシャ嬢のご家族は今から十年以上も前に全員事故で亡くなっている。そしてそんな身寄りのなくなったアーシャ嬢を引き取ったのがジルク王だった。
ジルク王は先代の勇者パーティに凄腕の剣士として参加していたので、その時の縁でアーシャ嬢の事を引き取ったと聞いている。アーシャ嬢も世界を救った英雄達の血縁者という事で特例としてジルク王に引き取られる事が認められたんだ。
そしてそんな王族の関係者かつ今代の聖女であるアーシャ嬢がこういう貴族の社交場に現われるというのはかなり珍しい事だった。
普段のアーシャ嬢は学生として勉学に励みながらも、聖女の仕事として色々な領地に赴いて聖女の祈りを捧げているんだ。だからそんな多忙な日々を送っているアーシャ嬢は貴族の社交界には滅多に顔を出さない事で有名だった。
もちろん私もアーシャ嬢に会った事は一度も無い。
「でも今回はそんな多忙なアーシャ嬢と生まれて初めてお目通りが叶うかもしれないな」
現在の国王陛下であるジルク王との深い繋がりを持っているアーシャ嬢とお近づきになる事が出来れば、必然的に我々アルフィード家も王族との繋がりが出来るという事だ。
そして我々貴族にとっては王族との繋がりを持てる事は最高峰の栄誉だと言える。だから何としても今回の生誕祭ではアーシャ嬢とお近づきになっていこう。
「そういえば確かアーシャ嬢の年齢は十六歳だったはずだ。それなら年齢の近いシュバルツが声をかけてアーシャ嬢と仲良くなって貰うというのも良さそうだな」
シュバルツとアーシャ嬢が仲良くなっていってくれれば必然的にジルク王との繋がりも手に入るからな。そうなれば我がアルフィード家もこの先100年は安泰となるだろう。
「ふふ、それじゃあ早く生誕祭の招待状が届いて欲しいモノだな……!」
という事で私は今後のジルク王の生誕祭についての事を考えて思わず笑みが溢れていってしまった。
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